ワールド・カップで盛り上がるブラジルですが、その音楽の奥深さは尋常でないものがあります。
一般的には、ボサノバとかサンバとかで、ブラジル音楽をご存知の方も多いでしょう。
ここでご紹介するイヴァン・リンスは、もちろんそういったブラジルの伝統的音楽を踏まえつつ、極限まで洗練を極めて行った存在として、とても重要です。
イヴァン・リンスは1945年、ブラジルのリオ・デジャネイロに生まれました。
1971年のソロ・デビュー作「Agora」で、早くも音楽界の注目を集め、80年代に入ると、クインシー・ジョーンズの紹介で、欧米ミュージシャンの間にもイヴァン・リンスの名前は急速に広がって行きました。
パティ・オースティン、デイブ・グルーシン、サラ・ヴォーン、バーバラ・ストレイサンド、マンハッタン・トランスファー、ジョージ・ベンソン、エラ・フィッツジェラルドなどなど、多数の大物アーティストが彼の曲を採り上げました。
例えば、パット・メセニーは、自分の好きなブラジルのアーティストとして、アントニオ・カルロス・ジョビンと並びイヴァン・リンスの名前を挙げています。
また、マイルス・デイヴィスは晩年、イヴァン・リンスを大いに気に入り、全面的に彼の曲をフィーチャーしたアルバムの構想を持っていました。結局、マイルスの死により、それは実現しませんでしたけれど・・・。
それでは、そんなイヴァン・リンスを聞いて下さい。1995年に発表された楽曲『Anjo de Mim』です:
とこまでもロマンチックに・・・。生まれ故郷のリオへの想いを込めて、イヴァン・リンスがブラジル人としての自分のルーツをしっかり見つめ直した傑作です。
イヴァン・リンスの魅力は、まさにその曲造りにあります。
その鍵は、彼の生み出す「コード進行」。非常に親しみやすいメロディーとポップな感覚にあふれているものの、その裏側で流れるコード進行は、普通ではありません。複雑な分数コードなどは当たり前として、さらにどんどんジャズ的、不協和音的に展開していきます。
時間の経過と共にどんどん転調していく感覚と言いましょうか。曲が夢幻的に姿を変化させて行くイメージ。それが、たまらなく現代的であり、またロマンチックなんです。
さて1989年、イヴァン・リンスはついにブラジルの国境を越え国際的なデビューを飾ります。
アルバム「ラヴ・ダンス/Love Dance」。アレンジを手掛けたののはフュージョン界の巧者ラリー・ウィリアムス。
シングル・カットされた『You Moved Me To This』は、ブレンダ・ラッセルとのデュオによるポップなナンバーで大好評を博しました。
ぜひ聞いてください:
イヴァン・リンスの世界的知名度は、アントニオ・カルロス・ジョビンに劣るかもしれません。しかし、その個性は、世界中のポピュラー・ミュージックに大きな影響を及ぼしています。
ブラジル音楽の無限の奥深さ。イヴァン・リンスの音楽に触れるたびに、それを垣間見ることができる気がするんです。
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