フェルメール:これがそのどうしても見られない一枚

ついにフェルメール全踏破!』の記事をたくさんの方に見ていただき、本当にありがとうございます(▶️こちら)。

そこでも言及しましたが、フェルメールの現存する作品が37とされる中で、この一作だけが現在、どうしても見ることができません。

1665年ごろの作品、『合奏』です。

ボストンの「イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館」にあるはずなのですが、1990年に盗まれてしまい、以降、30年以上たつ現在においても、見つからないんです。

アメリカはボストンの郊外にあるその美術館。その名のとおり、富豪ガードナー夫人が私財を投じて建設した美術館で、実は以前から、警備が甘いと言われておりました。

そしてその事件は、1990年3月18日、日付も変わった深夜に起こったんです。

二人の強盗が警官になりすまし堂々と侵入。警備員を地下に縛り上げ、ゆっくりと盗みをはたらきます。フェルメールをはじめ、レンブラントの「ガリラヤの海の嵐」、マネの「トルトニ亭にて」など、何と合計13点もの絵画・美術品を盗み出してしまったのです。

これらは、その後一切消息不明。ただの一枚も出て参りません。

盗まれた絵画は通常、現金化するために裏の市場で売買されることが多いのですが、これらの作品には一切、そのような形跡もないんです。

捜査はFBIが主導する大掛かりなものとなりました。

2013年には「盗難犯の身元を突き止めた」との発表がなされ、関与が疑われるギャングが逮捕されたりもしたのですが、結局作品の所在は不明なまま。そうこうするうちに時が経ち、限られた関係者や容疑者の多くが亡くなってしまうという事態で、新たな情報も途絶えているようです。

今では時効も成立しまったことから、捜査の目的はその絵を取り戻すことに重点が置かれ、情報提供者への500万ドル(約7億円)の賞金まで申し出ているのですが、いまだに有力な情報は一切あらわれないそう。

これがそのFBIによる賞金広告です:

美術品の場合、30年以上たってから見つかるケースもあり、まだ可能性がすべて消えてしまったわけではないのですが、どうも見通しは暗いですね。

同美術館の近影はこちらです。ガードナー夫人の遺言で、盗まれた絵を掛けていたスペースには、今も空の額縁がそのまま展示され、その帰還が待たれています。

わたしのように、フェルメール全踏破を目指す人々は世界中にいるのですが、どうしてもこの『合奏』だけがネックとなって、大変残念な状況です(そういう意味では、1990年に盗難に遭う前にこの絵をご覧になれた方は、本当にラッキーですね)

ちなみに、この絵を題材にした映画まで作られました。その名も『消えたフェルメールを探して』!

尚、フェルメールの絵は、これ以外にも4回盗難にあっているのですが、すべて見つかっています。それらは:

  • アイルランド、ラス・ボロー・ハウス「手紙を書く女と召使い」(二回盗難)
  • イギリス、ケンウッド・ハウス「ギターを弾く女
  • ブリュッセル、パレ・デ・ボザール展「恋文

わたしが死ぬまでに(あと何年?)、なんとか『合奏』には戻ってきて欲しいです。そうしたら、真の「フェルメール全作品踏破」という夢を果たすために、世界中のどこであっても、すぐ飛んで見に行くことでしょう。

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