リー・リトナーのデビュー・アルバム『ファースト・コース』は1976年に発売され、当時のジャズ/フュージョン・ブームに乗って、日本でも多くのファンを獲得しました。
新進気鋭のギタリスト リトナーが、デイヴ・グルーシンやハーヴェイ・メイソンらの「クインシー・ジョーンズ・ファミリー」に支えられ、思いのほか成熟した完成度の高いアルバムを披露し、一気に注目をあびることになったんです。
ところで、CD化は1989年だったのですが、久我の知る限り、なぜかこれが一度もリマスターされることなく今日に至っておりました(1993年の日本再発盤が中古市場で高値で取引されています)。
そんな『ファースト・コース』が、このたび英国のBGOレコードというところからリマスター再発されたので、早速入手してみました。
一聴して、違いは明らかです。
リマスター盤は、過度なイコライジング等を排した上品な処理で、非常に豊かな音像となっているのに対し、旧盤は、CD黎明期の特徴でもあるイコライザー処理で薄っぺらいサウンドだったと今さらながら気づかされます。
それでは同アルバムから、冒頭を飾るナンバーをお聞きください。『Little Bit of This & A Little Bit of That』。「これも少し、あれも少し」といった意味でしょうか:
アルバムの最後は、ブラジルの巨星アントニオ・カルロス・ジョビンの楽曲『オーラ・マリア』。リトナーのアコースティック・ギターにデイヴ・グルーシンのシンセサイザーが美しく絡みあい、どこまでも繊細な世界を紡ぎ出しています:
リー・リトナーはこのデビューアルバムを皮切りに出世街道を歩んでいくことになるのですが、久我としては後にも先にもこのデビュー作がサイコーだったと思わずにいられません。
リー・リトナーの資質は、クルセイダーズにも通じるファンクといいますか、どこかレイド・バックした「いなたい」フィーリングにこそ魅力があったのに、フュージョンの王道を歩もうと、セカンド・アルバムの『キャプテン・フィンガーズ』以降、無理してムキムキのサウンドに変質していったと思わずにいられないんです。
結果的に、彼のジャズ・フュージョン界における位置付けは、今ではそれほど高いところにないんじゃないかと思えて残念なんです。
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