老化と自らの身の処し方の問題。これは、どの世界でも難しいテーマです。
ロック界も例外ではありません。
バンドが売れなくなったらそれまで。メンバーが抜けて解散してしまえばおしまいです。
難しいのは、たとえ人気のピークを過ぎても、それなりに観客動員が見込め、アルバムもそこそこ売れるようなケースでしょう。
そこからの身の処し方には、それぞれのバンドやミュージシャン達の人生観がまちがいなく投影されます。
キー・ポイントは『潔さ』と『メンバー補充の考え方』ではないでしょうか:
「五大プログレ」という言い方があります。イエス、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、エマーソン、レイク&パーマーそしてジェネシス(順不同)。いずれもプログレッシブ・ロックの分野で頂点を極めるバンドですが、その「生き方」はそれぞれです:
・ピンク・フロイド:
ロジャー・ウォーターズの脱退後、デヴィッド・ギルモアのもとでバンドを存続させ成功を維持。メンバー補充なしに活動していたものの(ツアー・メンバーのみ)、リック・ライトの死亡を経て活動は自然消滅。
・ジェネシス:
1996年フィル・コリンズの脱退後、後任のヴォーカリストに無名のレイ・ウィルソンを採用するも不発に終わり活動休止。2006年以降、フィルの復帰により活動再開したが、彼の健康問題もあり、短期間で活動停止。
・エマーソン、レイク&パーマー:
一時期コージー・パウエルなど他のメンバーを補充したこともあったが、基本的には3人でダラダラと活動と休止を繰り返し、2010年に「一夜限りの再結成」を行なって以降事実上封印。
・キング・クリムゾン:
ロバート・フリップの思うままに活動と休止を繰り返し、今年新たなメンバー編成による「新生クリムゾン」を始動。
・イエス:
オリジナル・メンバーを中心に果てしなく再結成を繰り返し、2000年代後半に一端休止。2011年にジョン・アンダーソンにそっくりな声の持ち主ベノワ・ディヴィッドを加入させ、活動再開するも、さらにジョン・デイヴィソンにメンバー・チェンジし現在も活動中。ニュー・アルバムもリリース予定。
尚、例外的にメンバー・チェンジもなく、ただひたすら活動を続ける人達もおり、その筆頭はラッシュ。とにかく頭が下がります・・・。
さて、筆者はこの内、比較的潔いのはジェネシスとピンク・フロイドと思っております。メンバーが抜けても補充せず、残った人員で頑張る。いよいよ新メンバーを入れる時は、今までの再生産ではなく新しい試みに挑戦する。それがうまく行かなければ封印する(ジェネシスのレイ・ウィルソンのケース)。
番外編はロバート・フリップ。彼が続ける限りそれはキング・クリムゾンです。但しそこで重要なのは、フリップも決して「過去の再生産」を目指してはいないこと。
一方、一番往生際が悪いのはイエスでしょう。イエスは実質上クリス・スクワイアの所有物となっており、とにかくイエスを(ビジネスとして)存続させることのみに関心があるように思えます。特に許せないのは、ジョン・アンダーソンの声のそっくりさんを入れ替わり加入させ、過去の再生産にしか過ぎないことを繰り返していること(筆者の言う『自己トリビュート化』であります。プログレ以外ではジャーニー)。
ここで議論が分かれるのは、「ライブの機会も乏しくなっているんだし、たとえ『そっくりショー』でも拝めるだけで有り難い」という意見があることです。
筆者は、例えばイエスについては1973年の感動の初来日以降3回ライブを見ておりますが(AWBHも入れれば4回)、2000年以降のステージは見るに耐えないほどレベルが低く、こんなものを再生産されてはイエスの栄光に傷がつくと真剣に危惧しました。そんなライブを見るぐらいなら、過去のCDを聞き、DVDで過去の映像を見た方が何倍もマシと考える方です。「まともに演奏できなくなったら去れ」アーティストに求められるのは、自分の引き際を自ら判断する「潔さ」なのではないでしょうか。
また、スティーヴ・ハケットが「ジェネシス」の名前を中途半端に語り、ビジネスとして「利用」しているように見えるところもとても気に掛かります。需要があればやってしまって良いのか?彼の「商魂」に比べれば比べるほど、ピーター・ガブリエルの「過去(ジェネシス時代)を一切振り返らない」という潔さが光輝いて見えます。
もちろん、何よりもファンとメンバーに対するリスペクトという点がすべてにおいて重要なのは当然のこととして。
以上、筆者のように潔癖性になる必要もなく、「楽しめればそれでいいのに」という御意見に何ら反対する(できる)ものではありませんが、プログレと共に過去40年以上の人生を歩み、これからも宝物として将来の人々に何とか語り継いで行きたいと真剣に考えるものでした。ご意見、ご質問大歓迎です!
久我潔
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