続々と各社から発売されるワイヤレス・ノイズキャンセリング・ヘッドホン。多くのレビューが飛び交っておりますが、筆者も、複数を入手し比較してみました。
アップルのAirPods Max,ソニーのWH-1000XM4、ゼンハイザーのMomentum 3、シュアのAONIC 50、ボーズの700などなど。
さて、取り敢えずその結論は?
少なくとも、世間で評判のソニーの WH-1000XM4が一等賞ではない、ということ。
それじゃ、どれが一番なの?
1 そもそも何を比較するのか?
ノイキャン・ヘッドホンに期待するものは、人それぞれでしょう。
何より音質という人も多いだろうし、やはり消音性能だということも。もちろんワイヤレス性能も重要ですし、色々な機能や使い勝手こそという見方もあるはずです。
ただ筆者としては、そもそも、「なんのために、わざわざアウトドアで、大きなオーバーイヤー・ヘッドホンを使用するのか?」という原点に戻ります。
ブルートゥースで軽快につなげて、雑音を遮断しつつ音楽を楽しみたいのなら、インイヤー・タイプで手軽なイヤホンがいくらでもあります。筆頭は、アップルのAirPods Proでしょうか。
ならば、重いヘッドホンを頭にかぶってまで楽しみたいものって、一体何なのでしょう?
それは、やっぱり「良い音」ということにつきるのではないでしょうか?
2 「良い音」とは何か?
ところが、そもそも難しいのが、「良い音とは一体なんなのか」というところです。
サウンドの好みも、人それぞれ。
迫力ある低音こそ重要という人は多いですし、切れ味のいい高音とか、グッとくるミッド・レンジとか?サウンド・ステージの豊かさ?いやいや、やっぱりバランスが重要とか?
日本人は「ドンシャリ系のサウンド」を好むと言われます。迫力あるベースとともに明瞭な高音で、キレの良い音像だと。その「日本人好み」を重視して、日本のメーカーのサウンドは「ドンシャリ傾向にある」と言えるでしょう。
一方、「モニター系サウンド」という考え方もあります。
これは要するに、可能な限り余計な着色を避け、フラットに、その音源が本来持っているサウンドを正確に再現する。つまりそれは、アーティストがスタジオのモニター・スピーカーを通じて作り上げる作品のサウンドにいかに近づけるか、という視点です。
筆者は自分自身で音楽制作したりするので、ヘッドホンに一番期待するのは、この「モニター特性」なんです。
そういったモニター系のヘッドホンのメーカーも多数存在しますが、その筆頭はシュアということになるでしょうか。
3 筆者のリスニング環境
筆者はiPhoneで音楽を聴きます。
Macで14万曲に及ぶロスレス・ファイルを管理し、これをApple Music(旧iTunes)のプレイリストで、適宜iPhoneにダウンロードして聴くというスタイル。
ただiPhoneは、「音質」という点では、良いところはひとつもないんです。
内蔵されてるデジアナ変換チップ(DAC)はチープで、ハイレゾ再生もできない。AACという、イマイチなブルートゥース方式しか使えないので、ハイレゾも飛ばせない(にもかかわらず、「アップル・ロスレス・ハイレゾ」で音楽配信って、一体どういうつもりなんでしょう?)。
そんな考え方のアップルという会社に不満を抱きつつ、筆者も、色々なハイレゾ・プレーヤーやソニーのWalkmanを試したりしたんですけれど、iTunesとiPhoneの連携による使い勝手を考えると、どうしても他の環境に移れないまま、本日に至っております・・・。
4 となると、解決策は?
以上を総合すると、筆者のノイキャン・ヘッドホンの選択は、必然的にこのような結論になってしまいます:
それは?
ワイヤレスは断念して、有線接続する!
なぬ? なんだと? そんな、反則やがな!
そんなこと言ったって、あくまで「音質重視」なんだから、AACのブルートゥース接続なんて絶対あり得ないです。
そもそも、どでかいヘッドホンを外でかぶること自体「重装備」なんだから、iPhoneとヘッドホンをケーブルでつなぐことぐらい別に気にならないし。
そうすると、素晴らしい解決策に一気に到達します:
- iPhoneから有線でデジタル出力する(Apple Lightning – USBカメラアダプタを使う)
- そのUSBデジタル出力(USB-C)をヘッドホンにつなぐ
- フル・デジタル・サウンドを思いっきり楽しむ
それに最適なヘッドホンは、この一択しかございません:
シュアのAONIC 50です!
AONIC 50がすごいのは、「USBデジタルの有線接続に対応」というところ、さらに「シュア純正のヘッドホン・アンプ(ハイレゾ対応)が内蔵」というところなんです!!!!
ほかのいかなるヘッドホンも、ここまでは行っておりません。
プロ用イヤホン・モニター(イヤモニ)の最高峰であるシュアの、あのスタジオ・モニター・サウンドが、脳髄を直撃。
そこで聴くことのできる、純粋にデジタルな澄み切ったサウンドは、皆さんのどのような想像をも超えるものと確信いたします!
これが聞けるなら、「ワイヤレス」である必要など全然ないのだ!(ちなみにAONIC 50は、あらゆるブルートゥースのコーデックにも対応してるんですけどね・・・)。
ぜひ、一度トライしてみてください!!
尚、一部で、「AONIC 50の低音は迫力不足」などという意見も聞きますが、なにをおっしゃっているのか。これこそ、シュア伝統のモニター・サウンド。AONIC 50のドライバー・サイズは50mmと、他のどの競合商品よりも大口径で、豊かな低音だって充分鳴らし切ってくれるんだから、問題になるはずありません。
ちなみに筆者は、さらにこのような変態的スタイルで聞いております。
青いのはiFi社の「Hip-Dac」というポータブル・アンプ。とても優秀です。そこからバランス型出力でAONIC 50に有線接続して聴く音は、さらに他の追従を許さない、フル・デジタルサウンド(AppleやAmazonのハイレゾ配信にも対応)。
いわゆる「至福」ってやつでしょうか・・・。
さて、ということで強引に結論が出てしまったところで、最後に、各社のヘッドホンいついてコメントさせていただきます:
ソニー、WH-1000XM4:
音質ということだけにフォーカスすると、ほとんど「お話にならない」というのが率直な感想です。「迫力のベース」と言われていますが、増幅する低域の周波数レンジが広すぎて、中低音域全体がブーミーでクリアさを犠牲にしています。つまり、典型的な「ドンシャリ」ですらないという、大変残念なチューニング。
アップル、AirPods Max:
狂信的なアップル派である筆者は、なにも考えずに購入。あきれるような高価格も、この「ワン・アンド・オンリー」なプロダクトを所有できる喜びで全然気になりません。サウンド的には、ブルートゥース接続の場合、思いのほかレベル高いです。フラットで、どの機種よりも広いサウンド・ステージなのが良いですねー。ただし、Lighting接続なのが致命的で、ハイレゾ対応も見込めません。ということで、今では「在宅勤務の、ビデオ会議用の高級ヘッドホン」と化しています・・・。
ゼンハイザー、Momentum 3:
これは本当に素晴らしいです。一点だけ惜しいのが、その異様にブーストされた低音。何しろ、サウンドを大幅に変質させてしまうほどの極端なチューニングが、ある特定の周波数帯域の重低音に施されてしまっており「無理」。ということで、残念ながら返品してしまいました。
ボーズ 700:
これは購入できていないのですが、店頭でのヒアリングやこれまでのボーズ体験から、そのノイズ・キャンセリング性能はやっぱり業界サイコーではないかと。近く、QuietComfort 35の後継が出るらしく、そちらにも期待しています。
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