Mojo 2:最強の通勤時オーディオ環境の完成なるか?

以前から気になっていたポータブル・アンプの「Mojo」。

カラフルなボタンがかわいいし、性能もすごい評判みたい。そうかMade in U.K. なのか。

その最新バージョン「Mojo 2」が出たというので、ついに購入しちゃいました。せっかくイギリスに住んでるんだし、やっぱりと・・・。

そして、その素晴らしさにほとんどあきれ返っております!こんなにイイんだったら、最初のバージョンから愛用してりゃ良かった!!

筆者は長らく、「最強の通勤時オーディオ環境の構築」をライフワーク(?)としております。その想いは、在宅勤務の続く現在も変わりません。ひたすら新たな機材を追求し、運動不足解消の散歩時に、入念にチェックしています。ヘッドホンやイヤホンはもとより、ポータブル・アンプ(ポタアン)など、今まで一体何台購入したでしょうか。正直、もう分からん・・・。

最近では、やはり「ワイヤレス」そして「ノイズ・キャンセリング」ということを考慮せざるを得ず、「ノイキャン・イヤホンをブルートゥースで」という形が中心となっていました。具体的には、「Bose QietComfort Earbuds」など。

それで全然、問題はないんです。便利だし、快適だし、さすがBoseの優れたノイキャン性能で、バランスの取れた音楽が楽しめます。

でも常に、「ブルートゥースのワイヤレスなんて、音質的には話にならない」とは感じており、「最強の音楽環境」という点からは後ろめたい思いもしておりました。

そこで、このたび発売されたMojo 2。

初代からの変更点は、イコライザーが加えられたり、バッテリーが改善したりということ。おなじみのカラフルなボタンは3つから4つに増えましたが、動作によってどんどん色が変わっていくという楽しい個性はそのまま。サイズや重さに変化はなく、非常にコンパクトです。

さて、しかし、これは当然に有線接続とせざるを得ません。具体的には、筆者の場合、写真のような接続となってしまいます。

まず、iPhoneではそのままでは接続できないので、Apple純正の「Lighting-USB カメラアダプタ」というのが別途必要となり、それでUSB Cケーブルを使って接続する必要があります。

そして有線イヤホン。

今どき、こんなにケーブルをつなげてる人なんておるんじゃろうか・・・?

ちなみに、筆者の大前提は「iPhoneを使う」ということです。15万曲を超えるMacに蓄積された膨大な音源をiTuneで管理しながら聴く、という基本的な形はなにしろ譲れません。他の「ポータブル・プレイヤー」は(もちろん多数試してみましたが)、残念ながら、一切使用に耐えないというのが結論であります。

尚、音源ファイルはApple Losslessに統一しており、可逆圧縮のCD音質で聴いています(ハイレゾについても当然に意見が多々ございますが、それについては後ほど)。

ところで、Mojo 2のイヤホン端子ですが、なぜかアンバランス型のみ2系統ということで、今どき定番のバランス型は使えないのです。これも「音質が良すぎてバランス型など導入する必要なし」という恐ろしい説明に納得することになるのですが・・・。。

筆者はそこで、これまた長らく愛用するSHUREイヤホンの最高峰 SE846をリケーブルの上アンバラ接続という形にしました。

ちなみにSE 846は、当然に「ノイズ・キャンセリング」ではないのですが、これまた長らく愛用するComplyコンプライ)社のイヤー・チップ、特に最新の「Pシリーズ」を使えば全然問題ありません。

写真のように、同「Pシリーズ」は、従来のチップよりも挿入部が長く、耳の奥深くまで刺さるので、外部ノイズは全く問題ないレベルまで遮断できます。ノイキャン機能で不自然に防音するよりはるかにナチュラルです。

さて、前置きが異様に長くなりましたが、Mojo 2の音はどうなんでしょう?

結論的には、「その差は一聴して歴然。あまりに良くって、ひたすら幸せな気持ちなってしまう」ということであります!

まず、これは多くの方が既に報告しているところですが、「音場が非常に明瞭で、その空間表現は繊細かつ広大」という感じ。非常に滑らかで丁寧な肌触り、と言いますか、いわゆるデジタルくささは皆無。一方、単にアナログ的な不明瞭さがあるのかというと、これまたそういうことはありません。

また、出音のキレというか、俗に言う「トランジェント」が良いと申しましょうか。なんともシャープでクリアーな音像の立ち上がりも印象的であります。

その質感は、いわゆるハイレゾのビッドを上げたり高解像度にしたりというのとも異なります。まして、軽率なアップ・サンプリングのような不自然さは微塵もありません。まさに「明瞭かつ豊か」という表現が一番適していると思います。

製造メイカーであるChord社は、少人数で製造から販売まで、すべてをイギリスでこなしているマニア向けの高級オーディオ・メーカーです。同社が高級アンプで培う技術がMojoにも存分に生かされており、その独特の機能を活用しながら、超コンパクトなサイズにし、価格も抑えました(それでも当地で7万円、日本では20万円を超えてしまうようですが・・・)。

高音質の鍵は、心臓部のDACESS旭化成などの既存DACチップを使うのではなく、FPGA(Field Programmable Gate Array)と呼ばれるプログラムを書き込めるLSIを使い、自社で1から全てコーディングするというそのカスタム性にあります。

まさにそれは他社のDACとは全く違う構成になっており、桁外れのオーバー・サンプリング処理や膨大なデータ参照数タップ数)を伴うフィルタリングなど独自の技術をふんだんに盛り込み、通常はデジタル信号処理で避けられない「波形の崩れ」がほとんど出ないノイズフリーな設計になっているんです。

Mojoの技術的な革新についてはこちらの記事をご参照ください:

特に筆者がChord社のポリシーで気に入ったのは、「CDの可能性はもっと引き出せる」という同社の根本的な問題意識なんです。

開発責任者のロバート・ワッツ氏の発言をご覧ください:「CDは16bitのデータを持っていますが、従来の方法では16bit分の精度を引き出すことができていなかったのです。一般的なDACでは精度が低いため、CDが本来備える音楽情報とはほど遠い再生しかできませんでした。それが当社の技術によって、16bitデータを本来の精度で再生することが可能となり、非常に自然な音を再現できるようになったのです。これはひとつの目安ですが、一般的なDACではCDの16ビットのうち8ビット分程度の精度しか引き出すことができていませんでした。8bitの場合、タイミングの誤差は約0.1%の範囲です。これが当社製品では16bit相当の精度を引き出すことができ、その誤差は約0.00003%になります。誤差をここまでの範囲におさめて、はじめて本来のトランジェントが再現できるのです。つまり、44.1kHzのCD音源でも、きちんと波形処理すればハイレゾ音源に負けない良い音が出せるのです。」

なんと素晴らしい!これぞ筆者の求めていたものです。

ハイレゾ音源に感ずるぬぐいされない違和感。そして、アップ・サンプリングの邪道さ。これらに対する文字通りの正面からの回答。

同じく同社幹部のジョン・フランクス氏はこう語ります:「世界的にCDの売上が大きく減少しているのは確かなことです。とはいえ、オーディオファイルの手元には、今でも膨大な量のCDがあるのです。いま、アナログレコードが再び人気を取り戻していますが、時間が経つことで、同じことがCDでも起こるような気がしています。限られた世界のことかもしれないですが、何より当社製品でCDを聴けば、CDの魅力に改めて気付かされることでしょう。」

そう、まさに筆者の聞き慣れたCD音源の数々も、「こんなに繊細な陰影と美しさに満ちていたのか!」とあらためて認識しなおす毎日が続いているんです。

筆者の人生の大半を占めるCDでの音楽生活。そしてそこに残る膨大な音源たち。それらを、これからも生かしていくことができる。なんと素晴らしいことでしょう!

最強の通勤時オーディオ環境の構築」への旅は、おそらくMojo 2との出会いによって終着駅にたどり着きました。そんな気持ちにさせるMojo 2、皆さんもぜひ機会があれば聴いてみてください。

Chord社のロバート・ワッツ氏(左)とジョン・フランクス氏(右):

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