やりました、ついにフェルメールの絵画をすべて見たんです!そうです、全部!(正確には盗品の一枚を除く36作品)
アムステルダム国立美術館で「あと1作」まで迫ったわたくしは、一気に、もうひと踏ん張りしてみることにしました。(▶️「史上最大のフェルメール展」についてはこちら)
その絵が展示されているのは、ブラウンシュワイクの「アントン・ウルリヒ公爵美術館」。
どこだそりゃ?
地図をご覧ください。
ドイツ北部の小さな街ブラウンシュワイク。
フェルメールの作品がある街の中では最も小さく、人口30万人ほど。どのガイドブックにも載っておりません。
なにしろ、不便で遠い。ベルリンから汽車でひたすら西に向かうルートしかなさそうです。
ということで早朝から、勇んでベルリンを出発したわたしを、ひとつの不幸が襲います。
ドイツ鉄道のストライキです・・・。
列車は一部動いているのですが、大幅な間引き運転で、時刻表も当てになりません。どうなることやら。
やっと乗り込んだこの列車も、動かないし、第一ほとんど乗客が乗ってません。
ということで、ようやくおずおずと出発。やがて見渡す限り田舎の風景へ、汽車はノロノロ進みます・・・。
途中で何度も止まったり、乗り換えさせられたりして、結局、3時間半も経ってなんとかたどり着いたのがこの駅、ブラウンシュワイク。
誰もおらん・・・。
でも、街並みはなかなか素敵ですね。
そして、これがその「アントン・ウルリヒ公爵美術館」。
なかなか立派じゃないですか!
18世紀、学術と芸術の庇護者として知られていた神聖ローマ帝国のアントン・ウルリッヒ公爵により設立されたのが、この美術館。フェルメールのほか、ホルバイン、ルーベンス、レンブラントなどを所蔵し、彫刻や陶器のコレクションも豊富だそう(⇒ウェブサイトはこちら)。
受付のお姉さまも大変にこやかでしたが、なにしろ英語がほとんど通じない・・・。パンフレットや説明書もすべてドイツ語のみ・・・。
なになに、絵画のフロアは「オランダ絵画」「イタリア絵画」「北方ルネサンス絵画」に三分割されてる?。
目指すは当然にオランダ絵画。迷わず、フェルメールをと、まず階段を駆け上がる。
ん、どこじゃ?一体、どこにフェルメールはあるんじゃ????
扉を開けて、他の作品には目もくれず、駆け足で進むと、「あっ、あった!」
それはそこにありました。
とても上品で美しいディスプレイの中に、それは、わたしを待っていてくれたのです。
これがその『二人の紳士と女』であります。
1660年ごろ、フェルメールがまだ30歳前のころの作品。
この前後から、フェルメールの絵画技術の洗練度が急速に増したということで重要な作品です。
例えば、女性のドレスやテーブルクロスの繊細な質感。テーブルの上のワイン差しやレモンの光沢あふれる表現。そしてなによりも、左手の精密なステンドグラスを通してほのかに室内を照らす、フェルメール意匠の太陽光。実に見事です。
遠くから見ても近寄っても、大胆さと繊細さが同居する、フェルメールのまさに天才的な筆使いと色彩のマジックに惚れ惚れします。
しかし、それにしても、このおっさん好色そうやなー。下心丸見えでっせ。この女性も、薄ら笑いを浮かべてなんだか下品だし。うしろのおっさんは、うまく行かなくてふて腐れてるのかな。
それにしても、なんでこういうテーマで絵を描くんでしょう。
実はフェルメールには、これとよく似た題材の作品がいくつかあって、例えばこの『紳士とワインを飲む娘(ベルリン国立絵画館)』:
やっぱりおっさんが若い娘にワインを飲ませてます。ステンド・グラスも同じだし、これって同じ室内じゃないですか!
当時はこういう題材の絵に対するニーズがあったってことなんでしょうか。
ちなみに、我らがアントン・ウルリヒのはベルリンのより数年後の作品なので、フェルメールの絵画技術は明らかに向上していますね。
ということで写真を撮りまくり(海外はフラッシュさえ使わなければ撮影OKなところが多くてイイですね)。30分以上はその場にいたでしょうか?
なにしろ他にほとんど誰もいないので、このフェルメールはわたしが独り占め。守衛のおじさんに絵と並んだ記念写真(秘蔵)も撮ってもらい、「日本からわざわざ見に来たんや」と伝えると、「ほんまでっか」と半ば呆れたような顔でポカンとされました。
残りの時間は、一応館内を見て回りましたが、なかなか立派な美術館です。ウルリヒ公爵さんは本当に金持ちの道楽ものだったんですねー。
ショップで「フェルメール筆箱、フェルメール・ノート、フェルメール磁石、絵はがき」などを購入(なんと美術館の画集はなかった!)。
カフェで一休みしてから美術館を後に。
ああ、ありがとう、アントン・ウルリヒ公爵美術館。
さて、実はそこからがまた大変で、ダイヤの乱れまくった汽車でベルリンに帰り着くまで、さらに4時間近くかかってしまい、なんとかホテルに戻れたのは夜8時すぎ。
結局、往復に8時間以上かかったことになります。ふー。
しかしその全身を襲う疲労もなんのその、フェルメールの全踏破を成し遂げた満足感と幸福感でいっぱいなわたしは、空港ホテルのレストランで一人、祝杯のビールとハンバーガーで自らの労をねぎらったのでした。
さあ、明日は、日本に帰国だ・・・。
この絵なら、この絵を見るために飛行機で飛んで行けますね。
鈴木さん:ありがとうございます!実はこの絵の構図的には、フェルメールの中でそれほど好きな方ではなかったのですが、いざ本物を前にすると本当に感動できました。
フェルメールの絵は、その場に立ち会っている様なリアル感がありますね。
H.FUJISHIROさま:コメントをありがとうございます。はい、やはりフェルメールは比較的絵のサイズが小さいこともあって(これはむしろ大きい方ですけれど)、特に近寄って見るとリアルな感動が増したような気がします。久我
28作品ほど見ている自分すごいと思っていたら、やはり上には上がいますね…
写真で筆のタッチまではよくわからなかったのですが、『二人の紳士と女』の女性の手のタッチが荒く未完の印象を受けました。『紳士とワインを飲む娘(ベルリン国立絵画館)』は保存状態か撮影の状態なのか?古く見えますね。写真の前身を下絵にしている説があるのも納得の表現(特に女性のスカートのひだ)だと思いました。
Chie69さん:コメントをありがとうございます。ダリがフェルメールのことを「史上最強」と言っていたのですが、以前はピンと来なかったものの、今では本当にそう思います。フェルメールこそ史上最強の画家なのだと・・・。