冨田恵一氏のソロ・プロジェクト「冨田ラボ」の新作「Joyous」を聞きました。
キリンジ、MISIA、中島美嘉など多くのトップ・アーティストをプロデュース/アレンジし、楽曲を提供してきた冨田恵一。
MISIAの「Everything」に代表されるように、その分厚く徹底的に作り込まれたゴージャスなサウンドは、まさに氏のシグネチャーと言えるものです。
ただ、彼の手掛ける楽曲があまりにも「創造的」で「自己主張」するところから、時に「彼ってアレンジャーって言うよりも、むしろアーティストさんでしょ?」と言われるところです。
彼の過去の仕事を振り返ると、キリンジをのぞいて、長い関係の続くアーティストは少ないです。どんなアーティストも、彼を起用するのはアルバムの中で一曲だけとか、一度きりとか、そういう扱いが多いです。
それはつまり、あまりにも個性の強い冨田恵一氏は、手掛けるアーティストの個性を殺しかねないってことなんでしょうか。アレンジャー/プロデューサーとしてはなかなか難しいところに来ていると思われます。
そんな彼にとって、死活的に重要なのが、このソロ・プロジェクト「冨田ラボ」です。
本当に「真のソロ・アーティスト」として自分だけでオーディエンスを作っていくことができるかどうか、正に正念場だと思います。
そして、取り敢えず聞いたところでは、残念ながら「それは難しそうだ」としか言いようがあり得ません・・・。
あらゆる楽器を一人で演奏し、ボーカルをのぞいてすべて単独で創りあげる、まさに「ソロ」。その意欲は多いに買えるものの、その限界とマイナスが、本作「Joyous」には色濃く出てしまっています。
要するに煮詰まってるんです・・・。
特に彼のウィーク・ポイントは作曲そのもので、アレンジや楽器演奏のレベルの高さに比べ、それぞれの楽曲そのものの印象が薄く魅力に乏しいです。時として、アマチュアの自己満足のデモ・テープのような感じを受けてしまうと言ったら言い過ぎでしょうか?なんで、彼はここまで全部自分でやりたがっちゃうんだろうか・・・?
この曲「この世は不思議」も、 原由子や横山剣、椎名林檎らを招いて、なかなか意欲的なプロジェクトに仕立てようとしていますが、楽曲そのものの魅力不足もあって、プロデュースが決定的に不充分だと思います。
冨田恵一氏が、大きく次のステージに変身して行かれることを切に祈るものです。
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