ドレスデン国立古典絵画館所蔵の絵画を展示する「17世紀のオランダ絵画展」が、今年の初めより日本各地の美術館で開催されていますが、今週末、ようやく大阪市立美術館で見ることができました。
目玉は、なんと言ってもフェルメールの『窓辺で手紙を読む女』です。
同美術館以外でこの絵が公開されるのは世界初だそう。ドイツのドレスデンって、簡単に立ち寄れる街ではないので、本当に助かります。
なにしろ筆者は「フェルメール全点踏破」を目指し世界中の美術館を駆けずり回っており、37点あるとされる現存作品のうち、あと5点にまで迫っているのですが、この「手紙を読む女」は、かなりハードルが高い作品でした。今回、これが日本に来るというので、なにがなんでも見たわけです。
これは1658-1659年ごろ、フェルメールとしては比較的初期の作品なのですが、室内でさまざまな所作を見せる女性を、向かって左手の窓から入る日の光が捉えるという、フェルメール絵画の大定番スタイルの最初の一枚という意味で、重要な作品です。
特にこれは、2017年に本格的な修復作業がなされ、オリジナルの鮮やかな色彩が戻って来たのみならず、これまで塗りつぶされて見えなかった「キューピッド像」も、絵の具を注意深く除去することによりはっきりと復元された画期的な作品となっています(修復の前後での違いをご覧ください)。
なにやら真剣に手紙を読み込む女性。背景のキューピッドが「恋」の便りを暗示させますが、その表情からは、あまり良い便りではないような・・・。
カーテンを大胆に描いた構図により、見る者と女性との間に距離感が設けられ、独特の奥行きが生まれる手法。テーブルの上の果物の描写や、たくし上げられたタペストリーの質感など、フェルメールの天才を示す表現は、至る所に満ちあふれています。
フェルメールといえばまず『真珠の首飾りの少女』が有名なのですが、私は、この絵のような一連の「室内もの」の方が、フェルメールの個性と天才とをより直接的に感じ取ることができるので、好きな気がします。
さてこれで、全点踏破まではあと4作品ということになります。それは次の4つです;
- 聖女プラクセデス(国立西洋美術館)
- 二人の紳士と女(アントン・ウルリヒ公美術館 ドイツ、ブラウンシュヴァイク)
- ヴァージナルの前に座る女(レイデン・コレクション ニューヨーク)
- 合奏(イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館 ボストン)
このうち、西洋美術館のは常設だし、行けば見れるのですが、いつでも行けるという気持ちからここまで遅くなってしまいました。しかし、残る3点は難物です。『二人の紳士』は田舎町で行く機会がないし、『ヴァージル』は個人コレクションで一般公開されてないし、『合奏』に至っては盗まれて行方不明と来てるんですから・・・。(フェルメールの全作品リストはこちらです)
まあ、完全踏破は無理なんですよね、絶対に。それは分かっているんです。それでも、いつまでも夢を持ってフェルメールへの旅を続けて行きたいと思っております。
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