6月に来日コンサートも決まったパット・メセニー。一足お先に、ここアメリカで観てきました。
物議をかもしている(?)最新作「オーケストリオン」を引っさげてのソロ・コンサートです。
アルバムについてはすでに、相当厳しくコメントしました(→こちら)。まあ、ひとことで言って、「パットよ、一体何を考えておるんじゃ?」ということです。
まずはオープニング。
生ギターのソロでさりげなく数曲、いつものパット節を聴かせてくれたと思ったら、突然、もう一枚幕が上がります。すると、あらあら。。。よくもまあ並べた並べた。太鼓。鉄琴、ギター、ベース、鈴、シンバル、トライアングル、ボンゴ・・・。たくさんの生楽器が、パイプで組んだ枠にひもでくくられたり、ぶら下げられたりしています。
白く濁った液体の入ったガラス瓶が、木の箱の中に並んだのもあります。
一体なんだ??
これらが「一斉の声!」で、パットと一緒に演奏を始めるんです。ガチャガチャ、なんだか動いてます。電気もついたり消えたりします。何がどうなっているのか良く分かりません。非常に複雑な曲を、いささかの乱れもなく、この楽器たちは次々に自動演奏して行くのです。そして、それらをスイッチであやつりながら、ギターを弾き倒しているパット・メセニー。
ほとんど「チンドン屋」状態です。。。
曲間のMCで、何でこんなことをやることになったのか説明してくれます。「お爺さんの持っていた昔の自動ピアノが忘れられなかった」ということなんですが、どうも良く分かりません。パットも、「結局皆さんも、最後まで何のこっちゃという気持ちだと思います」なんて、なんだか歯切れ悪いです。
ビデオでの説明は、こちらです:
それなりに仕組みは分かってきました。要するに、これはギターからMIDI信号のような電気的信号を発信し、磁石を使って動かすケーブルやスイッチを使って実際に楽器を叩いたり、弦を弾いたりする仕掛けを作ったようなんですね。彼のスタッフをしているギター技術者のアイデアだそうです。
演奏としては多重録音で、これらを少しづつ組み合わせながら曲を作って行くということのようなんです。
で、最大の謎は、これらの楽曲をコントロールしているのは何なのか?ということなんです。どう考えても昔のロール・ピアノのように穴をあけた紙を機械に通してるとかってことじゃなく、コンピューターを使ってるに決まっていると思います。でなければ、こんなに長くて複雑な曲が合奏できるはずがありません。
となると、やっぱり、なんだかちょっと????です。
全体的に「エコ」な感じのコンセプトなんですが、結局コンピューター使ってるの??アウト・プットのところだけ機械仕掛けを通してるの??それって・・・???
さて、肝心の演奏ですが、確かに、全部機械仕掛けにしてはすごいです。一糸乱れず演ります。ただ、曲自体は今までのパット・メセニーのまんま・・・。曲調といい、雰囲気といい。この仕掛けでなければできないようなユニークな面とか必然性とかっていうのは、かけらも感じられません。以前にも書きましたが、「パット・メセニーがいつもやっているような音楽を、わざわざ難しいやり方で苦労して再現している」だけのように思えてなりません。しかも、結局機械なので、実際の人間によるバンド演奏と比べると、ニュアンスに欠け、豊かな感じに乏しいんです。
これって、一体何だろう???
やっぱり、パットのただの自己満足か??
ちなみに、観客には大受けでありました。難しいことに真っ正面から挑戦しているチャレンジ精神を、アメリカの聴衆は高く評価するのでしょうか?いつまでも少年のような冒険心を失わないパット・メセニーを愛するのですね、きっと。。
でんど〜は、ミュージシャンたるもの「出て来る音」そのもので勝負して欲しい。その「過程」や「方法論」には関心ありません。どんなに熱心に難しいことをやっても、アウトプットとしての音楽が成立していなければ、意味はない。そういう風に思います。愛するパットに、ちょっと厳しすぎるでしょうか?
ということで、謎はますます深まるばかりの、パット・メセニーの最新作とコンサートでありました。
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