パット・メセニーは言いました。「どんな音楽でも、ハービー・ハンコックがプレイするものは全て最高だ。」
ハンコックのプレイは、徹底的にクール。「アウト」しまくるピアノ・インプロビゼーションで、原曲のイメージが豊かに複雑に広がって行きます。まさに知性と洗練さの極み。しかも、それを支える鉄壁のリズム感。
これに、商売の才能も加わっているんだから、さらにすごい。
今年70歳になるハービー・ハンコックは、代表作「カメレオン」のように、まさにそのスタイルを大胆に変身させながら、時代を乗り切り、ジャズ界の第一線に立ち続けてきました。マイルス・デイビスとの王道ジャズから、ギラギラのファンク路線へ、さらにラップからワールド・ミュージックまで。常に、時代を見定めるその眼力。誰も真似できないものがあります。
そのハンコックが近年大成功を収めているのが、「世界中のミュージシャンとのコラボ路線」。1998年の「ガーシュウィン・ワールド 」、2005年の「ポシビリティーズ」、2007年の「リヴァー」など、どれも大ヒット。お金儲けの新たなビジネス・モデルを構築してしまったハンコックは、まさに、新たな音楽的ピークを迎えたと言えます。
そして本作でも、ハービー・ハンコックは完璧な「商品」を作りあげています。
世界中の著名ミュージシャンと、コラボしまくるハンコック。今回も、ものすごいです。シール、ピンク、ジェフ・ベック、デイヴ・マシューズ、チャカ・カーン、ウェイン・ショーター、マーカス・ミラーなどなど。
どの曲も、アコースティック・ピアノでハンコックが知的に加わってくるだけで、5割増の高級感が全体を包み込みます。今回も、大ヒット間違いなしでしょう。
しかし、大昔からのハンコックの大ファンとしては、どうも複雑な気持ちです。
でんど〜は、1976年の「シークレッツ」前後のハービー・ハンコックをベストと考えています。その想いは、「音楽の殿堂」でご覧いただきたいのですが、要するに「むせ返るような熱いファンク」。これこそハンコック。何度聞いても胸が高鳴ります。
そういう意味で、本作でも、ティナリウェン、ケイナーン、ロス・ロボスをフィーチャーした「ここに死が/エクソダス」に、往年の「熱気」を多少感じることができ、うれしい気持ちがした次第です。
歳とったハンコックに当時の熱気を期待するのも酷だと思いますが、あまりにも行儀の良い「商品」を生み出すことに長けてしまった老練さに、やや物足りなさを感じてしまっている今日この頃です。
→ハービー・ハンコックの「Imagine Project」をAmazonで!
がーしゅうぃんわーるどは1998年の作品でででっす
JKさん:ご指摘ありがとうございます。まさに1998年でした!もろに10年間違えてます。早速、修正致します。今後とも、どうかよろしくお願いします!