ヴォルテール、本当におもしろいです

すっかりハマってしまったヴォルテール

今度は、あのホルヘ・ルイス・ボルヘスが編纂した「バベルの図書館」の一冊、『ミクロメガス』です。

「バベルの図書館」は、古今東西の書籍を渉猟しつくしたボルヘスが、30人の作家を選んだ、全30巻の「小宇宙」。日本でも、80年代終わりに巻刊されました。

ヴォルテールの一巻には、表題作以外に5作の短編が収められ、序文もボルヘスが寄せています。「ヴォルテールの明快な物語は、読者が喜んで参加したくなるような、純然たる、高級な遊戯である」「ヴォルテールはフランス語における、そしておそらくは世界でも、最も優れた散文を書いたのである」と大絶賛。

本巻におけるヴォルテールの作品は、彼の代表作である『カンディード』のように、壮大なドタバタ喜劇というか、時間も国境も越えて、主人公(たち)が空前絶後の運命に翻弄され、皮肉と風刺に満ちた世界の現実を噛みしめる、といったテーマなのですが、なにしろとてつもなく明るく、楽しくストーリーが進んで行くので、決して「辛い」読後感にはなりません。

表題作の『ミクロメガス』は、遠くシリウスの宇宙に住む、身長40キロ、寿命1万5000年(!)という巨人がなぜか地球を訪れ、あまりにも小さい地球人と交流するという空想科学もの(?)。「こんなに小さい連中が、ほとんど無限大とも言うべき傲慢さを有していることに、心から怒りを覚える」などと巨人に言わせたり、デカルトライプニッツホメロスだと人類の英知も飛び交い、「ガリバー旅行記よりはるかに野心的で壮大」とボルヘスに言わしめた物語。「これこそSFの紀元では?」とも思わせる奇作であります。

さらに、本短編集で最大のページ数を占める『バビロンの王女』は、主人公の王女が、一目惚れした若者と再び出会うために、あらゆる困難を乗り越え、欧州から中国、ロシアを巡ってまた戻ってという、これまた地球的広がりをもった壮大な冒険譚です。ここでも、訪れる国々の宗教や政治動向を皮肉たっぷりに論述したり、最後は「これが事物の起源について、我々が知りうることのすべてなのである」と宣言してしまっています!

「博覧強記の権化」であるボルヘスが、時代を超えた大先輩とも言えるヴォルテールを心から愛したのも当然と言えるでしょう。

とにかくヴォルテールのほとばしる才気とスケールには、ただひたすら圧倒されるばかり。今読んでも、なんら古さを感じさせないそのスピード感とユーモアは、多くの人に味わってもらえればと思います。

➡️ボルヘスの「バベルの図書館」で、ヴォルテールをお楽しみください!

 

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