クラシックにのめり込んでおります。(4)

focusかつて、ロックに「芸術」の夢を見たこともありました。

それが、筆者にとっての「プログレッシヴ・ロック(プログレ)」です。

クラシックが成し遂げたように、ロックだって「妥協のない芸術」を生み出せる。100年たっても200年たっても語り継がれる文化遺産・・・。

ジェネシスイエスキング・クリムゾンといった70年代のプログレのムーブメント。そこには、確かにそういった雰囲気と可能性がありました。

ポップスの常識を超えて、曲がどんどん長くなって行く。10分、20分、30分。LP(なつかしい!)の片面全部で一曲なんてのが出てきました。

先駆的なのはイエス。1972年の記念碑「危機」は、正に片面一曲。続く「海洋地形学の物語」は、LP2枚組みで片面一曲づつ。計4曲。マーラーの交響曲にも匹敵する堂々たる「ロック・シンフォニー」です。

長いだけでなく、曲造りも独創的になって行きます。それまでのロックン・ロールに、クラシックやジャズなどさまざまな要素が加わる。バンド・メンバーが、さまざまな楽器をとっかえひっかえ演奏する。エレクトリック・ギターから生ギター、シタールまで。シンセサイザーの本格的導入もここから。分厚いコーラスも加わる。

曲の構成もひじょうに「構築的」になって行きます。主題があって、変奏曲的に展開して、間奏曲があって、大団円を迎える。一分の隙もない構成。それを表現できる各メンバーの高い演奏力。

イエスの「危機」については、「音楽の殿堂」もご覧下さい。


クラシックに足りないのは「リズム感」です。決定的に「ビート」が欠けています。

当たり前です。

ドラム・セットなんてありません。ティンパニーがド〜ン!シンバルがシャ〜ン!トライアングルがチ〜ン!

あくびが出ます。

黒人音楽がもたらしたリズム。シャズのスイング。ロックのアフタービート。近代ポピュラー音楽の核心は、そのリズムにあります。グルーヴこそすべて!

筆者が、ずっと願っていること。それは「クラシックの音楽性と、現代のリズムを合体できないか」ということ。「強烈なグルーヴの上に、クラシックの荘厳な音響が乗っかる」。それが、筆者の「理想」とする音楽なんですけれど・・・。


その片鱗が、プログレでした。

例えば、フォーカスの「ハンバーガー・コンチェルト」。

フォーカスは、オランダが生んだ唯一の「世界的に成功した」ロック・バンドです。ヴォーカルなしのインストゥルメンタルですが、超絶技巧のギターと、クラシックをルーツにした革新的な曲造りで、熱狂的ファンを獲得しました。

彼らが74年に発表したのが「ハンバーガー・コンチェルト」。LPの片面を埋め尽くしたのが、表題曲です。

クラシックとの融合をめざしたロックは多いですが、これほど有機的に合体し、昇華させた例は他にありません。

なんせ、まず冒頭が、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」から始まるんです。リズムが胎動し始めると、ぐぐっと「ロック的」に盛り上がります。どこか中世・バロック時代にも通じる格調を秘めつつ、フィナーレは「カンツォーネ」的に炸裂。何度聴いても、感動また感動です。

これこそ、「クラシックの音楽性と現代性との合体」。ひとつの極地がここにあります。

さわりをライヴ映像で見てみましょう。



クラシックとの融合という意味では、エマーソン・レイク&パーマーも、その筆頭です。

彼らは、わりと「そのまんま」クラシックの名曲を取り込みました。何といっても有名なのは「展覧会の絵」。ムソルグスキーの組曲を3人編成で丸ごと実演。世界中で大ヒットさせます。

彼らが下敷きにしたクラッシックは多々あって:

・バルトークの「アレグロ・バルバロ」(ファースト・アルバム「未開人」)
・ヤナチェクの「シンフォニエッタ」(ファースト・アルバム「ナイフ・エッジ」)
・チャイコフスキーの「くるみ割り人形」(展覧会の絵「ナット・ロッカー」)
・コープランドの「ロデオ」(トリロジー「ホウダウン」)
・チャールズ・ヒューバート・パリーの「エルサレム」(恐怖の頭脳改革「聖地エルサレム」)
・アルベルト・ジナステラの「ピアノ協奏曲第1番」(恐怖の頭脳改革「トッカータ」)
・コープランドの「庶民のファンファーレ」(ワークス「庶民のファンファーレ」)
など、比較的近代の作品が多く採り上げられました。

エマーソン・レイク&パーマーについてはこちらもご覧下さい。

さらに、「クラシックの精神」「芸術性」という意味で、最も高見に登ったといえるのがジェネシスです。

彼らは、既存のクラシックを編曲するのではなく、全てオリジナルで勝負しましたが、その楽曲自体が真の意味でクラシックに匹敵する芸術性をそなえていました。頂点が「月影の騎士」。格調あふれる曲造り。複雑できめ細かい構成美。ダイナミックな変拍子のリズム陣の上を疾走するシンセサイザー。筆者の理想が実現した想いです。

「月影の騎士」については、さらにこちらから


ひとときの「夢」を見させてくれたプログレッシヴ・ロック。今は、見る影もありません。

イエスなど、歳とったメンバーが同窓会的に、創造性の枯れ果てた音楽を再生産しています。後継者も生まれません。プログレの「様式」だけをパクったメタル系バンドなど多数出てきましたが、パターン化した「タコ壷」は創造性とはほど遠いです。

いつかまた、真の芸術が生まれることを願いながら・・・。

さて、ご紹介してきた「プログレの名盤」を最後にまとめました。色々なバージョンが出回ってますけれど、でんど〜の推薦盤なら確かです!ロック・ファンはもちろん、クラシック・ファンの方々にこそ、ぜひ聴いていただければと思います。

2 件のコメント

  • こんにちは。いつも楽しく読んでいます。
    私はクラシック音楽については、有名所の曲がかろうじて作曲者が誰かわかるぐらいで、なんでもクラシック音楽との接点が小学校の時、放送部だったことと、運動会によくつかわれたことと、あとは妊娠中に妊婦がよくはまる「クラシック音楽を聴くとあかちゃんにいい」みたいな。。そのくらいですから。(笑)
    なので、そんな私が言うのもなんですが、クラシック音楽はロックに通じるものがありますよね。ワーグナーやハチャトリアンなどの(っていっても有名な曲しか知りません)攻撃的な旋律はロックですよね。
    昔の人は、ここのオーボエのソロの入り方がたまらん!とか、ここのチェンバロの音がたまらん!!とか言っていたのでしょうか?今のロックと同じノリで。

    ジェネシスについては、まさに同感です。ジェネシスはオペラの様に、その舞台様式まで受け継がれていくと私は信じています!!

    でんど~さんもフィル・コリンズ、苦手なのですね。実は私もなんです。でも、ドラムテクニックは素晴らしいですよね。ドラム時代のフィルちゃんは好きなんですケド。。。

    いつかまた、真の芸術は生まれてくるのでしょうか?ファッションにしても、音楽にしても、アートにしても、もう出尽くしたって感じがするのですが、それは単に私が世の中について行っていないのかもしれませんね。

  • Cheekyマミーさん:
    いつもありがとうございます!「ジェネシスはオペラの様に、その舞台様式まで受け継がれていくと私は信じています!!」なんと素晴らしいコメントでしょう。そう、ピーガブ(略して)は、本当にオペラチックですよね。イタリアでうけまくったというのも良く分かります。あの化粧とコスチュームも、普通のロッカーの「メイク」と違うモノを感じます。ルネサンスの絵画を見てたら、ピーガブそっくりの兵士の絵に出会いました。顔をふちどりしてるの。とにかく、アートとしか言いようないです。。。(最近のふとったピーガブは、見る影もないですけど・・・)
    また、ロンドンの情報などもぜひ教えて下さい!

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です