2017年4月15日、アラン・ホールズワースはこの世を去ってしまいました。
享年70歳。
最後の最後までステージ活動を続けて、孤高をつらぬいて・・・。
エディ・ヴァン・ヘイレンは言いました。「アラン・ホールズワースこそ最高だ」と。
フランク・ザッパも言い残しています。「アラン・ホールズワースは、この惑星で最も興味深いギタリストだ」と。
ジョン・マクラフリンは、「ステージでアラン・ホールズワースを見たとき、ぜったい全てを盗んでやろうと思った。でも、結局、彼がどうやって弾いているのか、最後まで分からなかったんだよ!」とまで言っています。
あまりにも個性的なため、「孤高」とか「変態」とか言われたアラン・ホールズワース。
そのギター・プレイは、実際、ほかの誰にも似ていません。
アタック感の希薄なギター・ソロは、「うねうねした感じ」としか言いようのない、とても独特なもの。
フレージングは、ジャズのような、ロックのような、クラシックのような、中近東のような・・・。
ホールズワース自身は「サックス奏者から学んだ」と発言していますが、ルーツのはっきりしない、ぜんぜんギター的じゃない、そのスケールは実に不思議。
それに加えて、目にも止まらぬ「速弾き」を炸裂させるんだから、もうたまりません。
さらに、プレイが強烈なだけでなく、その曲づくりも極めて個性的。
大きな左手の指を目一杯広げて、不協和音とは簡単に呼べないほどの複雑なボイシングを楽々と展開。ハーモナイザーやエコーをたっぷり効かせた空間処理で周囲を包み込み、これまた誰も聴いたことのないテクスチャーを自由自在に創り上げるんです。
「Synthaxe」というギター・シンセサイザーを使用していた時期もあります(左写真)。
この「発展途上」のギター・シンセを弾きこなせたのは、恐らく世界中でアラン・ホールズワースただ一人でしょう。管楽器とも弦楽器とも、なんともつかないシンセの音色が溶け合い、実にユニークな音世界を構築していました。
まさに「夢幻的」というか、「宇宙的」というか、「異次元的」。
そんなアラン・ホールズワースの代表的なプレイをお聞きください。
1984年、グラミー賞の「ベスト・ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス」にもノミネートされたアルバム『ロード・ゲームス』より、『トウキョウ・ドリーム』!
まさに、「夢幻的」でしょう?
そして、もうひとつ。
1993年のソロ・アルバム『Hard Hat Area 』より、超絶ハード・ナンバー『Rukukha』です:
アラン・ホールズワースは、自分のスタイルをジャンル分けされることを極端にいやがりました。
特に「ジャズ」と分類されることには抵抗があったようで、あくまで「ほかのナニモノでもないこと」に、こだわっていたのでしょう。
ということで、その活動領域は、ロック界・ジャズ界の垣根を越えて、まことに広大です。
コラボしたミュージシャンはビル・ブラッフォード、UK、ゴング、ジャン・リュック・ポンティ、スタンリー・クラーク、テンペスト、トニー・ウィリアムスなどなど数知れず、実に多彩な個性派ぞろいと言えましょう。
そんなアラン・ホールズワースが、世の中に大きく注目されるきっかけになったのが、コレ。
ジャズ・ロック界の雄、ソフトマシーンが1975年、初めてギタリストをまねいて作成したアルバム『収束(Bundles)』。
若きアラン・ホールズワースは、冒頭の『Hazzard Profile』からいきなり疾走します:
その後の「変態的」プレイからすると、ずいぶん普通のロック・ギターにも聞こえますが、とにかくその早弾きの技には、誰もが度肝を抜かれたものでした。
さらに、アラン・ホールズワースの多彩なコラボ歴の中から、ご紹介しましょう。
チック・コリアとの共演で有名なギタリスト、フランク・ギャンバレをフィーチャーした1990年のアルバム『Truth in Shredding 』。ゲスト出演したアラン・ホールズワースは、ここでも、ものすごいプレイを炸裂させてしまい・・・。
曲は、『Rocks』!:
さながら、二人のギタリストのギター合戦のようですが、4分過ぎからのアラン・ホールズワースのソロを聴いていただければ、どちらが勝者なのかは、あまりにも明白ですよね・・・?
フランク・ギャンバレの名誉のために言えば、彼も充分うまいんです。ただ、どうもフレージングが凡庸というか、手クセに引きづられてるというか、単に、速いだけのような?
それに比べて、アラン・ホールズワースはどうでしょう?
大海をただようような夢幻的な導入部から、ゆっくりと鎌首(かまくび)をもたげる。どこまでも奇妙な音階が、次第に熱を帯びてくると、やがて手のつけられない超絶スケールの奔流となってほとばしる。決して、ただの早弾きではない、論理的・合理的ではありながら、聞き手のイマジネーションを楽々と超えていく、その創造性。そして、そのプレイ全体を包み込む、荘厳さと気品・・・。
まさに、堂々たる勝者のパフォーマンスと言えましょう。
商業的な成功には一切無頓着に、いかなる妥協も許さず自らの音楽を創り上げる。
実際、彼はキャリアのすべてを通じて、ほとんど「売れた」という経験がありません。晩年に近づくと、離婚による経済的負担もあり、かなり生活は困窮していたとも聞きます。だから、ライブ・ハウス巡りもやめられなかった・・・?
しかし、そんな状況においても、自分の音楽に対する魂だけは、決して売り渡すことがなかったアラン・ホールズワース。
さながら「求道者」のような、その一生。
まさに「孤高」であるということ。
そんなアラン・ホールズワースこそ、「真にユニークな、史上最高のギタリストのひとり」と断言して良いでしょう。
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さて、そんなアラン・ホールズワースの広大な音世界を、コンパクトに理解するのに、うってつけなCDが出ました。
2017年にリリースされたベスト盤『EIDOLON』。日本国内でもキング・レコードから発売されました。
2枚組みCDに収められた28曲は、すべてアラン・ホールズワース自身が選んだもの。この監修作業が、彼にとっての生前最後の仕事とも言われています。
全ソロ・アルバムから、ほぼ均等に2〜3曲づつ。代表曲からこだわりの一曲まで。ハードなものからメローなものまで。ギターからSynthaxeまで。非常にバランス良く選ばれています。
最新リマスターをほどこし、日本語の解説も含むブックレット付き、ということで、まず、現時点における、アラン・ホールズワースの「この一枚」と断言できるでしょう。
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さらに、アラン・ホールズワースに本格的にハマってしまった方には、コレしかありません。
2017年4月、その死を悼み、緊急発売されたボックス・セット、『THE MAN WHO CHANGED GUITAR FOREVER!』。
全12作のソロ・アルバムに最新リマスターをほどこし、紙ジャケ仕様で箱に収めたもの。多数の写真入りブックレットつき。
本当のアラン・ホールズワース・ファンの永久保存版として、究極のチョイスと言えましょう:
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最後に、アラン・ホールズワースの忘れがたきライブ映像をお届けします。
2017年4月3日、場所はカリフォルニア。これから、わずか2週間足らずで亡くなってしまうなんて・・・(実際のラスト・ショウは4月10日)。
あまりにも悲しすぎます・・・。
心より、ご冥福をお祈りします。
アラン・ホールズワース!
その魂よ永遠なれ!
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<このサイン入り自伝は家宝です>
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