<更新:2013年3月30日>
この4月には生誕85周年を飾る来日コンサートも予定され、まだまだお元気なバート・バカラック。
1971年の初来日の時、日本武道館まで観に行った筆者としては、まさに感無量であります。
「おしゃれですてきなバカラック」と一般には良く言われます。そして古今東西、バカラック・サウンドの、その雰囲気だけをかすめ盗ろうとする連中もたくさん現れました。
でも、バート・バカラックの本質は、そのサウンド・スタイルにあるのではありません。
その本質は、彼の『ハート』にこそあるんです。その、奥深い胸の内にこそ。
それは、『狂おしいまでにあふれ出るロマンチシズム』とでも言いましょうか。
そう、「究極の胸キュン・サウンド」とも・・・。
聴く者のロマンチックな心の琴線を鷲づかみにして離さない。それこそが、バート・バカラックの音楽の魅力の神髄と言えるでしょう。
バカラックの曲造りは親しみやすく聞こえますが、非常に複雑かつ独特で、ほかの凡庸なイージー・リスニングとは完全に一線を画しています。
予測のつかないメロディー展開にあわせ、コード進行も分数コードから転調、さらに複雑・高度な和声まで自由自在。突然、曲の途中で何度も拍子が変わるのも良くあること。これらはすべて、バート・バカラックが「頭の中で必然的に鳴っている音楽を忠実に表現しよう」とするから。古い形式にとらわれない、彼の革新的な精神のあらわれそのものだと思います。
だから、バート・バカラックの真似なんて、簡単にできっこないんです。
例えば、大名曲の「アルフィー」。
1966年、マイケル・ケイン主演による映画「アルフィー」の主題歌。
バート・バカラックが「自ら最も好きな曲」と言うだけあって、ここに彼の曲づくりのエッセンスが凝縮されています。
それでは、バカラック自身による紹介からはじまる弾き語りバージョンで。
ここでは、長年のパートナーシップを組み、残念ながら昨年亡くなってしまった作詞家ハル・デイヴィッドへの想いも伝えられます。
しっとりとしたバラードですが、とてつもなく難しいメロディー展開。小刻みに転調を繰り返し、ディミニッシュ・コードも巧みに使う洗練の極みともいえる和声。
そしてそこに、ハル・デヴィッドの情感たっぷりな歌詞が乗っかるんだからたまりません。
『あふれ出るロマンチシズム』
今もなお多くのシンガーに愛され、歌い継がれる普遍性がそこにあるんです。
さて、そんなバート・バカラックのヒット曲は膨大です。
まずは、やっぱり「雨にぬれても/Raindrops Keep Fallin’ On My Head」でしょう。
名匠ジョージ・ロイヒル監督の「明日に向かって撃て!」の挿入歌。おしゃれな映画と楽曲の魅力がぴったりフィットし、4週連続全米1位のメガ・ヒットに。サントラともども、グラミー賞・アカデミー賞の音楽部門を総なめにしました。
もちろん、B.J.トーマスのヴォーカルでどうぞ:
バカラック/デイヴィッドの強力な作曲コンビに、歌で加わったのがディオンヌ・ワーウィックでした。この「トリオ」は強力で、数え切れないほどのヒット曲を放ち、共に成功への階段を駆け上って行ったんです。
そんなディオンヌの歌うたくさんのバカラック・ナンバーから、一曲だけ選ぶのは至難の技ですが、やはりこの曲かな。カトリーヌ・ドヌーブ主演のロマンチック・コメディ「幸せはパリで」の主題歌、「エイプリル・フールズ」。
ひたすらこみ上げるバート・バカラックのロマンチシズムと、それを、ありったけの情感を込めて、しかもクールに忠実に歌い上げるディオンヌ・ワーウィック。その卓越した歌唱に、ただただ身を委ねて下さい。ちなみにこの映画もとっても素敵・・・。:
バート・バカラックはオーケストラの使い方や楽器編成も独特です。スリムなストリングスや、小粋なホーンの扱い、パーカッションの効果的な活用や、印象的な電子オルガンなどなど、どの曲にも、まさに「バカラック印」の意匠が満ちあふれていますね。
さて、さらにもう一曲といえば、ダスティ・スプリングフィールドの「恋のおもかげ/The Look Of Love」。
007/ジェームス・ボンドの番外編映画「カジノ・ロワイヤル」の主題歌。全米22位。これまたアカデミー「ベスト歌曲賞」受賞。バカラック/デイヴィッドの不滅の金字塔です。
なんとクールで洗練されていて、美しいのでしょう・・・。その魅力は、21世紀の現在においても一切、色あせることはありません。
さあ、皆さん一緒にご唱和願います。「バート・バカラックよ永遠なれ!」
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