ティアーズ・フォー・フィアーズ

91UiuNnnVaL._SL1500_復活ライブを披露したり、ボックス・セットを発売したり、最近ふたたび、ティアーズ・フォー・フィアーズの周辺が活気づいているようです。

ティアーズ・フォー・フィアーズ(以下、TFF)は、1981年にデビューし、80年代を通じ大きなヒットを生み出したイギリスのロック・グループです。

ギターとボーカル担当のローランド・オーザバルと、ベースとボーカル担当のカート・スミスの二人が核になって結成。

ややアクの強いローランドがバンド全体を引っ張り、ちょっと控えめなカートが「天使のようなハイトーン」でボーカルを掛け合わせると、独自のTFFワールドが出来上がります。

バンド名は、心理学者アーサー・ヤノフの著書から取り上げられたもので、「傷ついた心の痛み」といったナイーブな感性が結成当時のTFFの個性となっていました。

彼らが世に打って出たのがこの曲『シャウト』。1984年、全米1位、全英4位。ここにも、ヤノフが提唱し、ジョン・レノンらも受けたと伝えられる「心の痛みをしまわないで、声に出して叫べ(Shout)」という心理療法のメッセージが色濃く出ています:

TFFは、次第にその音楽的な領域を拡張し、広大な音空間を表現できる大きな存在へと成長して行きます。

これまた全米1位を獲得し、TFFの実力を世界に知らしめた強力なナンバー『ルール・ザ・ワールド(Everybody Wants to Rule the World)』。なんと堂々たる、気品にあふれた音響空間なのでしょう!。TFFが、当初の「シンセを多用したエレポップ」といった分類から、正統派の本格的ブリティッシュ・ロックへと格上げされたのもの、正にこの曲あたりから。ぜひ、お聞きください:

さらに続くこの曲『ヘッド・オーバー・ヒールズ(Head over Heels)』も全米3位のヒットとなり、TFFはもはや押しも押されもしない存在になりました:

ということで、これらの曲をフィーチャーしたTFFのセカンドアルバム『Songs From The Big Chair』は、全米1位(5週連続)、全英2位。アメリカだけで売り上げ300万枚突破(トリプル・プラチナム)というとてつもない成功を収めます。

今回発売された同アルバムのボックセットは、CD5枚、DVD付きという超豪華盤で、リマスター音源からリミックスやアウトテイク、ライブまで、TFFのこのアルバムに関するありとあらゆる音源が収められた決定版となっています。

 

さて、この世界的な成功を受けて、TFFが1989年に発表したサード・アルバムが『シーズ・オブ・ラブ』です。

前作から5年もかかったことからうかがい知れるように、その製作は難渋を極めたようです。制作途上でプロデューサーを交代させたり、それまで録音した音源をすべて廃棄し、ゼロから録り直したりと、苦労の背景には、前作の成功のプレッシャーも大いにあったことでしょう。

そして何より、TFFの二人が全力を振りしぼって、音楽を「造り込んで」行ったこと。妥協を許さず創造を極めること。ビートルズにしても、ほかのどのアーティストにしても、頂点を極めようかというには、その「徹底した造り込み」こそが不可欠の要素であり、TFFははっきりとそれを極めたということだと思います。

その努力の甲斐もあって、傑作が出来上がりました。全英アルバムチャート1位(全米は8位どまり)、米英共に売り上げ100万枚突破。

ファースト・シングルはアルバムのタイトル・ソング『シーズ・オブ・ラブ(Sowing the Seeds of Love)』。全米2位の大ヒットとなったこの曲は、TFFのビートルズへのオマージュを全面的に打ち出した大音楽パノラマとなっています:

そしてサード・シングルの『Advice For The Young At Heart』。しっとりとした陰影に富むフィーリングが、TFFの成長を物語る傑作です:

 

このアルバムを境に、ローランド・オーザバルとカート・スミスの関係は悪化し、1991年にカートは脱退。以降、TFFはローランドのワンマン・バンドとなって活動を維持して行きます。

二人が再度顔を揃えるのは2004年。以降、ライブ活動を初め、TFFは復活の過程にあるといったところでしょうか。

ということで、偉大なるTFFの全貌を把握するには、上記の2枚を抑えれば良いということになりますが、さらにコンパクトにという皆さまには、このベスト盤がうってつけだと思います。1000円少々で2枚組、TFFの全体像が手軽に入手できます。

 

ティアーズ・フォー・フィアーズよ永遠なれ!

 

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