ジミー・ウェッブは、数多くの名曲とヒット・ソングを生んだアメリカのコンポーザーとして、歴史に名を残すべき存在です。
1946年8月15日生まれの69歳。
ジミー・ウェッブは、1960年代の中ごろからプロの作曲家として頭角をあらわし、以降、まさに数え切れないほどのアーティストに楽曲を提供してきました。
主なところだけでも:
フィフス・ディメンション、グレン・キャンベル、シュープリームス、フランク・シナトラ、テンプテーションズ、バーブラ・ストライサンド、アート・ガーファンクル、ジョー・コッカー、ジュディ・コリンズ、ドナ・サマー、リンダ・ロンシュタット、アメリカ、ジョン・デンバー、カーリー・サイモンなどなど、超一流アーティストばかりです。
1986年には、「ソングライターの殿堂」入り。グラミー賞の作曲・作詞・オーケストレーションの三つの部門を受賞した唯一の人物でもあります。
ジミー・ウェッブの作曲家としてのキャリアがブレイクしたのは、1967年、フィフス・ディメンションの『ビートでジャンプ/Up, Up and Away』でした。
全米7位のヒットを記録し、グラミー賞最優秀レコード賞等4部門を受賞した同曲を、どうぞ、あらためてお聞きください:
今聞いても、その洗練された感覚に脱帽の名曲。おしゃれな躍動感あふれるイントロを聴くたびに、ワクワクしちゃいますね(この曲には、筆者も個人的にたくさんの思い入れがあり、生涯ベストの一曲だとも思っております)。
ジミー・ウェッブの造り上げる楽曲の特徴は、非常に洗練されているとともに、どこか素朴な味わいが同居しており、思わず胸にギュッと来る感じといいましょうか、遠いアメリカの風景をイメージさせるような、なつかしい気持ちにさせてくれるものなんです。
同じ「おしゃれで洗練系」の作曲家として、バート・バカラックと比較されることも多いジミー・ウェッブですが、彼の場合、例えて言えば、「土の香りのするバカラック」とでも言いましょうか・・・。
そんなジミー・ウェッブは、カントリー・ソングの大御所グレンキャンベルとも数多くのヒット曲を飛ばしました。
グレンが1967年に放った『恋はフェニックス/By the Time I Get to Phoenix』は、『ビートでジャンプ』とあわせて計8つのグラミー賞を受賞。まさにジミー・ウェッブにとって出世作となりました。
それでは、グレン・キャンベルの『恋はフェニックス』を、お聞き下さい:
歌詞がまた良いんですねー。もちろん、ジミー・ウェッブの作詞です。
訳してみましょう(邦題が誤解を招きますが、これは別れの歌なんです):
『恋はフェニックス/By the Time I Get to Phoenix』
僕がフェニックスに着くころには、彼女は起きているだろう
そして、ドアにつるしたメモに気づくはず
彼女は笑うに決まってる
だって、僕は今までなんども、彼女に別れを口にしてきたから
僕がアルバカーキに着くころには、彼女は仕事をしてるかな
お昼どきに、僕に電話をくれるかもしれない
でも、その電話にはだれも出ないんだ
オクラホマに着くころには、彼女はたぶんベッドの中だろう
寝返りをうって、僕の名前を呼ぶんだ
そして、彼女はきっと泣くだろう。僕がほんとに去ってしまったと知って
僕はなんども別れを伝えようとしたんだけれど、
彼女はいつも本気にしなかったんだ
僕は伝えようとしたんだけれど・・・
グレン・キャンベルとのコラボレーションで、『恋はフェニックス』と双璧をなすのがこの曲『ウィチタ・ラインマン』です。
1969年、全米3位となった大ヒット曲ですが、ここではジミー・ウェッブ自身による弾き語りバージョンをお聞きください:
この曲の主人公は、なんと、アメリカのド田舎、荒涼たるカンザス州ウィチタで働く電話の架線工事人という設定なんです。毎日休まず、電話線の修繕工事をしながら、遠く離れた恋人への想いを電話線にのせる、といった歌なんです。目のつけどころが独特ですよね?
ジミー・ウェッブは、ソロ・シンガーとしても、これまで10枚以上のアルバムを出しています。そのヴォーカルの腕前は、決して上手とは言えませんが、張りのあるテノールで、聴く人の心をやさしく満たしてくれるんです。
中でも、特にお勧めなのが、1996年にリリースされた、この「テン・イージー・ピーシズ」。ウェッブ自身の作品を集めたベスト・アルバム的内容で、上記のほか、次のようなヒット・ソングが入っています:
- ガルベストン/Galveston (グレン・キャンベル):69年 全米4位
- 恋のハプニング/Worst That Could Happen(ブルックリン・ブリッジ):69年 3位
- 友に捧げる賛歌/All I Know (アート・ガーファンクル):73年 9位
- 月はいじわる/The Moon’s A Harsh Mistress (リンダ・ロンシュタット):82年
など
ほとんどすべて、ジミー・ウエッブによるピアノの弾き語り。ギターやアコーディオンなど、ほんの少しだけ彩をそえるというシンプルなアレンジでが、それだからこそ、一層、ひとつひとつの楽曲の魅力がくっきりと浮かび上がり、味わい深く、特別な作品に仕上がりました。
さて、それでは、ジミー・ウェッブの生んだ最大のヒット曲といえば、言わずと知れたこの曲『マッカーサー・パーク』です。
1978年、ドナ・サマーによって3週間全米チャート首位を獲得。ここでは、17分を超えるロング・バージョンで、ドラマチックなディスコ・シンフォニーをお楽しみください。ギター・ソロはジェイ・グレイドン!
この曲はもともと、1968年、アイルランド系の俳優リチャード・ハリスがウェッブ作品だけを歌ったアルバムで取り上げたもので、複数の楽章からなり、ハリスのバージョンも、7分21秒を要すという大作でした。
これをディスコ組曲に変貌させた、プロデューサーのジョルジオ・モロダーのなんと優れた手腕!
90年代以降になっても、ジミー・ウエッブは何度かリバイバルで注目を浴び、その、おしゃれなスタイルだけを真似しようとする作品もたくさんみられましたが、ホンモノは、そんなものとはいささかも関係なく、大いなる深みをたたえ、今も燦然と輝いているんです。
まだまだ現役で、ライブなども精力的にこなすジミー・ウェッブ。これからも、良い作品をたくさん発表して、私たちを楽しませてもらいたいものですね。
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