ジノ・ヴァネリ

1644_foto1_product_grootジノ・ヴァネリは、当年とって62歳のベテラン・シンガー。

デビューは1973年。

全米4位の大ヒット『アイ・ジャスト・ワナ・ストップ』を1978年に生み出し、1981年には『リビング・インサイド・マイセルフ』を全米6位に叩き込みます。

一般には、それ以降、あまり音沙汰がなく、「一発屋」と思われているかもしれませんが、今日に至るまで精力的に活動を続ける現役アーティストなんであります。

それでは、まずジノ・ヴァネリの一世一代のヒット曲『アイ・ジャスト・ワナ・ストップ』をどうぞお聞きください。強烈なアフロ・ヘアが時代を感じさせます!:

デビュー当時のジノ・バネリの音楽的スタイルは、とてつもなくユニークでした。

バック・バンドは、ツイン・キーボード体制。それを、ドラムとパーカッションの強力なリズム隊が支えるという独特な編成。なんと、ギターもなければ、ベースもありませんでした。

久我がジノ・ヴァネリにハマってしまったのがこの曲、『バレー・オブ・バルハラ』です。

1977年当時、深夜放送でこの曲のイントロが流れてきた瞬間に、完全に心を持って行かれてしまいました。ぜひ、お聞きください:

楽曲のアレンジとプロデュースの全権を握っていたのが、ジノの実兄ジョー・バネリ。

ヴァネリ・ファミリーはイタリア系のカナダ人家系。その家族の絆は、とてつもなく強固で、さながら『ゴッド・ファーザー』のよう。

「ブラザーからブラザーへ」というタイトルのアルバムもあるぐらい、ジノとジョーの兄弟は実質一心同体で、ともに音楽を作り上げていきました。

ジョー・ヴァネリは、キーボードの達人です。

まだ世の中に、和音の出るポリフォニック・シンセサイザーが出回ってないころから、ジョーはすべてのパートを何度も重ねて録音し、鉄壁の音像を構築していました。

ベース・パートだって全部シンセサイザーです。

ジョー・ヴァネリの、このシンセに対するこだわりこそが、初期のジノ・ヴァネリの最大の個性だったんですね。

それでは、重厚なシンセ・サンドに満ちあふれた傑作、1975年のアルバム「ストーム・アット・サンアップ」より、『ラブ・ミー・ナウ』をお聞きください:

この曲、ものすごいタイトルですよね。『ラブ・ミー・ナウ』「私を今愛せ」ですからね。歌詞もすごいです。「私のような移り気な男は、今、お前の目の前にいるこの瞬間に愛するしかない。さあ、今愛せ!」というシロモノ。

これを、ナルシズムと呼ばずしてなんと呼びましょう!

ジノ・ヴァネリは、これを、イタリア・オペラやカンツオーネを彷彿させるような、パワフルなヴォーカルで朗々と歌い上げんるんだから、尋常ではありません。

イケメンで、胸毛もすごいし・・・。

ただ、ひれ伏し、身をまかすしかないでしょう・・・。

恐るべし、イタリアン・パワー!

さらに、ジノ・ヴァネリの曲は、コード進行が尋常じゃないんです。

分数和音や不協和音がビシバシ出まくって、好きモノにはたまらない魅力ですが、一般的なポピュラー・ミュージックからはかけ離れており、むしろプログレシブ・ロックとも言えるような世界を構築しておりました。70〜80年代の、日本のフュージョン・ミュージックなどでも大いにそのコード進行が盗まれたものでした。

プログレ/フュージョンっぽいジノ・ヴァネリということで、壮大なこの曲をお聞きください、『ホエア・アム・アイ・ゴーイング(1975年)』。ギター・ソロはあのジェイ・グレイドンです!:

ことほど左様に、ジノ・ヴァネリは、一切の妥協を排し、売れ筋なんてまったく考えず、ひたすら、自らの信ずる音楽を追求するということに全身全霊を捧げるのでした。

例えば、1977年のアルバム『パウパー・イン・パラダイス』。

これは個性的なジノの作品の中でも、さらに特殊なものです。なにしろ、当時のアルバムB面すべてがフル・オーケストラ仕立てで、さながらクラシックの交響曲。ジノのヴォーカル自体がほとんど入ってないという、とてつもなく個性的な作品です。

あるいは、1976年のアルバム「ジスト・オブ・ジェミニ。こちらも、アナログB面をおおい尽くすのが「戦争組曲」。あきらかにテーマは「戦争」なんですけれど、ジノはなんで戦争を歌いたかったんだろうなー。でも、とにかくドラマチックなのは間違いありません。

次にお届けしたいのが、1991年の「ライブ・イン・モントリオール」より、その『ブラザー・トゥ・ブラザー』。お兄さんのキーボード以外は、ドラムとギターだけという少人数で、恐るべきパフォーマンスを展開しています:

最後に、ジノ・ヴァネリの最近の作品をご紹介しましょう。2009年の「ベスト&ビヨンド」。

これは、ジノの名曲を再現するセルフ・カバー集に加えて、新曲もフィーチャーという意欲作。新録音の『ヴィーナス・エンヴィ』をお聞きください。ラテン風味にあふれて、なんとカッコいいんでありましょ〜か。現代にも雄々しく羽ばたくジノ・ヴァネリ!!:

さて、ジノ・ヴァネリの長いキャリアのどこから聞いたら良いのかという方に、ちょうどうってつけのベストアルバムがでました。

英国ユニバーサルから出たばかりの『コレクテッド/Collected』という3枚組。ジノのデビューから最新作まで、代表曲がレーベル横断的に取り上げられ、すべて最新リマスターが施されているのに加えて、正式デビュー前の幻のシングル盤(Van-Elli名義の『ネバー・クライ・アゲイン』)や、竹内まりやのカバー『真夜中のナイチンゲール』など、お宝のボーナス・トラックが目白押しなんであります。これは注目!

どこまでも自分の美学を貫いて、サバイバルしてしまうジノ・ヴァネリに、これからも声援を送り続けましょう!

 

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