ジェントル・ジャイアントは、一般には、あまり知られておりませんが、いわゆる「英国5大プログレ」に次ぐ存在と言って良いでしょう。
(ちなみに、プログレッシブ・ロックの私的ランキングは次のようになります〜1位:ジェネシス<但しピーター・ガブリエル期限定>、2位:イエス、3位:EL&P、4位:キング・クリムゾン、5位:ピンク・フロイド、6位:フォーカス、7位:PFM、8位:ジェントル・ジャイアント、9位:U.K.、10位:???)
しかし、イエスやジェネシスが、コマーシャルな面でも大成功を収めたのに対して、ジェントル・ジャイアントはそのような成功とは無縁で、最後まで「知る人ぞ知る」という存在のまま消えて行ったのでした。
しかも、バンドの歴史の後期においては、なんとか「人並みの成功」を収めようともがき苦しみ、売れ線狙いの路線に転向までして頑張ったのに、無駄な努力に終わりました。そういった、悲哀を伴うと言いますか、「残念」な存在としても、記憶に強く残るバンドです。
ジェントル・ジャイアントは、とてつもなく個性的な音楽性を持って登場しました。
1970年、バンド名を冠したデビュー・アルバムを発表。
彼らの個性は、その時、既に確立していました。
ひとことで言えば、「なんだか良く分からないけど、とにかくものすごい・・・。」
具体的には:
- 中世ヨーロッパの宗教音楽をベースにしたような独特な世界感。ほかのプログレが、いわゆる王道のクラシックなどを下敷きにしたのと決定的に異なる。
- メンバー全員のものすごい演奏力。管楽器、弦楽器、打楽器、コーラスを巧みにこなし、ライブでメンバーがとっかえひっかえ合奏するさまは、まるで曲芸のよう。「音のスーパー・サーカス」とも言われる。
- メロトロンが壮大にコードを奏でるといった、プログレのお決まりパターンにはまらず、細かいパーツを組み上げて行くような独特な曲構成。ジャズやファンクにも通じるリズミカルな乗りから、複雑な変拍子まで多芸そのもの。
ということで、ある種「変態的」とも言える強烈な個性を発しておりました。
彼らの仰天ステージを、少しのぞいてみましょう:
1972年に発表された彼らの代表作「オクトパス」をフィーチャーした、1975年アメリカでのステージ模様です。
どうでしょう?やっぱり、キツいっすか??
ルックス的には、ぜんぜんイケてないし(ほとんど、中世の旅芸人)、ヴォーカルは気持ち悪いの一歩手前。拒絶反応が出ちゃうと、ちょっと苦しいかもしれませんね・・・。
しかし、一度ハマると、とことん行ってしまうんですよ、これがまた・・・。
それでは、1975年のアルバム「フリー・ハンド」はどうでしょう。冒頭を飾る楽曲『ジャスト・ザ・セイム』です:
全米アルバム・チャート48位と、ジェントル・ジャイアントとしては史上最高位を記録。名実共に、彼らの最高傑作と言えるでしょう。
この「フリー・ハンド」に、彼らの強烈な個性はすべて出そろっています。パズルを組み立てたような、複雑怪奇な曲構成。人間技を超えた楽器の演奏力とコーラス・ワーク。中世クラシック風味とファンキーな変拍子。そして、ちょっと不気味にポップ・・・。
中世風味といえばこの曲、『オン・リフレクション』。これまた、驚くべきステージ模様を、ご覧ください:
どうでしょう?やっぱり、キツいっすか???
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さて、このジェントル・ジャイアントも、70年代の後半に入ると苦難の道に遭遇してしまいます。
ほかのプログレ・バンドが、ポップで聴きやすい方向に路線変更しつつ、なんとか成功を維持していった中で、ジェントル・ジャイアントは、うまく変身できなかったんです。
アメリカのレーベル「クリサリス」に移籍して以降、アルバムとしては76年の「インタヴュー」ぐらいから、どうもおかしくなっちゃいます。
それでは、1978年の『ワーズ・フロム・ザ・ワイズ Words From The Wise』を聞いてください:
やっぱり、コレはキツいっしょ?
えっ?それほど悪くない?そうですか・・・。筆者としては、あまりにも痛々しくって、聞いていられません・・・。
慣れないポップをやらされて、のたうち回り苦しむジェントル・ジャイアント。
もともとが「中世の旅芸人」です。ポップ・スターになれるはずがありません。急激に失速し、解散を余儀なくされてしまいました。
いったい、何がいけなかったのでしょう?
やはり、生き残りのためとはいえ、魂を完全に売り渡してしまっては、アーティストの存在意義はなくなってしまうということでしょうか・・・。
「芸能」の道の奥深さを、あらためて思い知ります・・・。
こんなにも強烈な個性にあふれ、栄光と失意の歴史を経ていったジェントル・ジャイアント。これからも語り継いでいく、大いなる価値のある存在だと思っています。
皆さんも、彼らの孤高の世界に、ぜひハマってみて下さい!
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