サイモン・フィリップスのドラミングがメチャメチャ好きです。
ビル・ブラッフォードを別格とすると、テリー・ボジオ、ヴィニー・カリウタ、スティーヴ・ガッド、デイブ・ウェックル、フィル・コリンズなどと並び、まさに史上最高峰のドラマーだと思います(こう並べると、自分はつくづく「テクニカル」なドラマーが好きなんだなー)。
最新のソロ・プロジェクト『プロトコルII』が日本でも発売され、6月には自身のバンドで来日も果たし、ますます絶好調なサイモン・フィリップス。上原ひろみとの共演でも凄まじいプレイを披露してくれました。
イギリス出身の57歳。サイモン・フィリップスはこれまで数多くのレコーディング・セッションに参加して来ました。
ちょっと列挙するだけでも、フィル・マンザネラ、ジェフ・ベック、ジューダス・プリースト、マイケル・シェンカー・グループ、ザ・フーなどの一流どころと共演。1992年以降は、亡くなったジェフ・ポーカロの後任としてTOTOの正ドラマーとなっています。
ジャズをルーツにしてあらゆる奏法をマスターしたサイモン・フィリップスですが、そのドラム・プレイの特徴は「タイトでシャープ」ということにつきます。
「スイング」とか「レイド・バック」といった感覚とは対局にある「切れ味鋭いスリル満点な奏法」がその信条。絶妙なタイミングで刻み込まれるハイハットとスネア。強烈なタム・ロールから速射砲のようなツー・バスが加わると、もう誰にも真似できないサイモン・フィリップスの恐るべきドラミングがあらわれます。
数ある名演の中から、その「シャープさ」で選ぶとすると、やっぱりこの曲でしょうか。ジェフ・ベックの1980年の傑作『ゼア・アンド・バック』より『スペース・ブギー』。サイモン・フィリップスは作曲者としてもクレジットされ、まさに速射砲のような変則ドラム・ビートを叩き出しています:
右手でスネア・ドラムを叩き、左手でハイハットやシンバルを叩く、オープン・スタイルという奏法。利き手を固定しないからこそ、自由でカラフルなフレージングが可能になるんです。
今年5月にオランダで行なった「ドラム・クリニック」の映像で、サイモン・フィリップスのその「秘密」に触れてみて下さい:
サイモン・フィリップスは1988年、キャリア初のソロ・アルバム『プロトコル』を発表します。
ドラムはもとより、作曲からすべての楽器演奏、プロデュースからエンジニアリングまでサイモン・フィリップスが一人で手掛けるという文字どおりのソロ・プロジェクト。アルバムのトータルな仕上がりに、聞いたものは誰しもサイモン・フィリップスの「総合アーティスト」としての才能を再認識しました。
それでは、同アルバムよりタイトル曲『プロトコル』をお聴きください。この映像では、ベースにアンソニー・ジャクソン、ギターにレイ・ラッセルを加えてのパフォーマンスです:
そのサイモン・フィリップスが、久方ぶりに発表したソロアルバムのタイトルが、奇しくも『プロトコル II』。
ソロ・デビューから多様な道のりを経て、ふたたび原点にたどり着いた、そんな彼の想いがこのプロジェクト名に刻印されています。
サイモンの発言によれば、「僕の最後のソロ・プロジェクト『ヴァンテージ・ポイント』から14年が経って、ついに新たなものを録音するタイミングが来たんじゃないかと思った。ファースト・ソロから25年経ったけど、今回は『プロトコル』の名を付けるには完璧だと思ったんだ」ということで、これはまさにデビュー・アルバムの続編であったのでした。
サイモン以外は、今回はギターにアンディ・ティモンズ、キーボードにスティーヴ・ウェインガート、ベースにアーネスト・ティブスという気心の知れたメンバーを配し、あくまで「バンド編成」にこだわりました。「今回はマシンで作るんじゃなくて、もっとオーガニックなフィールを加えて、もっと良いアクシデントを起こしたかったんだ」とのこと。全体のフィーリングは、まさにデビュー盤ゆずりのロック・サウンドに満ちあふれています。
それでは、同アルバムの冒頭を飾る『ワイルドファイアー』をお聴きください:
さて、最後に忘れちゃいけないのが、TOTOでのパフォーマンスですね。2013年のTOTO結成35周年ワールドツアー、ポーランド公演の映像です。
曲はあの『ロザーナ』。ジェフ・ポーカロのシグネチャー・サウンドだった「ハーフ・タイム・シャッフル」のハネまくるビートとはずいぶん異なる、サイモン・フィリップスのクールな個性あふれるシャッフル・ビートをお聴きください:
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