アート・オブ・ノイズ

art-of-noise-50dfd27c82328大プロデューサーのトレヴァー・ホーンが創始した、イギリスのユニークな音楽家集団「アート・オブ・ノイズ」。

彼らの活動は長期にわたり変幻を遂げており、その実態はなかなかつかみにくいですが、大きく三つの路線でとらえることができます:

(1)1983年のデビュー以来の「冗談音楽路線
(2)1986年頃からの「芸術派路線
(3)1999年以降の「復活期

 

(1)冗談音楽路線
1983年に、トレヴァー・ホーンが立ち上げたZTTレコーズから、正体不明のユニットとしてデビューしたアート・オブ・ノイズ。後に、アン・ダドリー(キーボード担当)、J.J.ジェクザリック(サンプリング担当)、ゲーリー・ランガン(ミキシング担当)と発表されましたが、全体を取りまとめていたのは、明らかにトレヴァーでした。

鍵を握ったのが元祖サンプリング・マシーンの「フェアライトCMI」。当時何百万円もした高級機材をアート・オブ・ノイズは大胆に使いこなし、世間をアッと言わせることに成功しました。

1984年のシングル「クロース(トゥ・ディ・エディット)」は全英8位のヒットになり、アメリカのダンス・チャートにも登場。どこまで本気か分からないこの「オトボケ・サウンド」が、世界を席巻してしまったんです:

続くオトボケ路線が、巨匠ヘンリー・マンシーニのサウンドトラックを痛烈にパロった『ピーターガン』。これまた全英8位をはじめ世界的にヒットになりました。お耳にされた方も多いでしょう:

 

そして、この「冗談音楽路線」の頂点が、イギリスが生んだマッチョ・シンガー第一人者トム・ジョーンズを迎えて放った「KISS」!曲はもちろんあのプリンス殿下。これまた全英5位ほか世界中で大ヒットしました。

 

(2)芸術派路線
さて1986年頃から、グループの中で路線をめぐる対立も見られ、トレヴァー・ホーンのZTTレコーズから別のベーベル(チャイナ)へと移籍したアート・オブ・ノイズ。

このころの主導権を握ったのはアン・ダドリー女史でした。

アンは、後に映画のサウンドトラックの分野で大成功を収める才女で、彼女の「クラッシック」への造詣が、アート・オブ・ノイズの「冗談なんだけど、どこか高貴」という不思議な雰囲気を作り上げていたんですね。

そんな彼女がリーダーシップを握ると、サウンドの傾向も自ずから「芸術的」な方向に大きく舵が切られます。

例えば、この曲「フィナーレ」のなんと美しいことでしょう!:

 

そして、この路線の代表作と言えば、『ロビンソン・クルーソー』。とってもクールでトロピカルですね〜:

 

よく考えてみれば、このようなアンビエント路線は、実は彼らのデビュー当初から内包されていました。

例えば、1985年のこの曲『モーメンツ・イン・ラブ』の美しさはどうでしょう?後に何度も繰り返されるアート・オブ・ノイズのシグネチャー・ソングともなっています:

(3)復活期
さて、その後活動休止状態に陥ったアート・オブ・ノイズですが、1999年に入り、再びトレヴァー・ホーンのリーダーシップのもとに復活を遂げます。

10ccの才人ロル・クレームを迎え、もちろんアン・ダドリー嬢にも入ってもらって放った新作が、『ドビュッシーの誘惑』です。

あの、誰もが知ってる、フランスが生んだクラシックの大家ドビュッシーへの心からの愛を捧げて、さらに、ドラムン・ベースやラップなどの最先端なグルーブ要素も加味した壮大なトリビュートが出来上がりました。冒頭の『il Pleure(世紀の終わりに)』をお聞きください。クラシカルな美と超近代的な音像がマッチして、ひたすら素敵な世界に連れて行ってくれます:

 

アート・オブ・ノイズは、その後2013年にリユニオン・コンサートを実施し、新曲も披露してくれましたが、皆さんお忙しい方々ですので、パーマネントな活動はもうこれ以上ないのかもしれませんね。

さて、アート・オブ・ノイズは、オリジナルに手を加えたリミックスなど、今では当たり前のことですが、当時としては超過激にリリースしまくりました。よって、多数のバージョン違いや、コンピレーション盤などがリリースされ、一体どれを聞けば良いのか迷ってしまうところです。

それでも近年、決定盤と呼べるアルバムが次々にリリースされましたので、ご紹介しましょう:

  • Into The Battle」:1983年9月リリース。これが正真正銘のアート・オブ・ノイズのデビュー作です。EP仕様ということで、フル・アルバムとは呼べませんが、デビュー・シングルの「ビート・ボックス」や定番の「モーメンツ・イン・ラブ」などを含み、彼らの個性は全てここに詰まっていました。2011年、Salvoレーベルのリイシュー盤は、全曲リマスターに加え、なんと18曲ものボーナストラックを追加した拡張盤です。これからお求めになる方には是非こちらをお勧めしますこちらからお求めいただけます:
  • Who’s Afraid of the Art of Noise?」:1984年6月リリース。「Into The Battle」の楽曲も織り交ぜながら、ヒット曲「クロース(トゥ・ジ・エディット)」などもフィーチャーした、アートオブノイズ初のフル・アルバムです。これも、2011年に発売されたSalvoの2枚組拡張盤が決定的と言えます。オリジナルのリマスターに、BBCでのライブ・パフォーマンスを加え、DVDには当時のプロモ映像等も満載です(但し、このDVDはPAL方式なのでパソコンのみで再生可能)。こちらからご購入ください!
  • ドビュッシーの誘惑」:1999年の再生アート・オブ・ノイズによる意欲作。隙のない音作りからくっきりと浮かび上がるドビュッシーと最先端サウンドの融合!2008年の日本盤デラックス・エディションは、当時限定盤としてリリースされていたアウト・テイク集『Reduction』との2枚組特別復刻盤です。こちらでご覧いただけます:
  • Influence」:2010年にリリースされた2枚組コンピレーション・アルバム。アート・オブ・ノイズのデビューから再結成まで、レーベルを超えて彼らのキャリアの全体像を俯瞰した、お得なベスト盤です。「KISS」をはじめ全てのヒット・ソングに未発表音源まで全39曲。どれか一つ選ぶとしたら、このアルバムが最もお勧めです。こちらのAmazonでお求め下さい!

 

以上、アート・オブ・ノイズの知的でダークな音空間で、これからも遊んで行きたいですね!

 

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