最近ますます著作が連発されつつある「インテリジェンス」の佐藤優。もはや、ただのギョロ目の怪しい太めのおっさんではありません。
確かに、国際政治や時事問題の分野で、今、わざわざ買ってまで読む気にさせるのは佐藤優ぐらいしかいないかもしれません。
ロシア外交官から投獄を経た氏の洞察力の原点にあるのは、その驚くべき博覧強記ぶりにあります。
この文庫『私のマルクス』は、そんな彼の同志社大学神学部での学生生活を回想した自伝で、彼のその後の数奇の運命を想起させる充分面白い内容になっています。
佐藤優がいかにキリスト教に目覚め、人生の主要研究テーマと定め、猛烈に勉強して行ったか。さらに、同志社周辺にやや遅れて拡散した学生運動の中で、彼がいかに「カリスマぶり」を発揮して行ったのか。面白いエピソードが次から次に出てきて飽きさせません。とにかく、彼のキリスト教への深い想いとその勉強ぶりは驚くべきものがあり、彼のその後の評論活動に信頼感が持てるのも、その度外れた読書欲と勉強ぶりにあるのが納得できます。佐藤優の本質を理解するにはぜひ一読をお勧めします。
なお一点、本書のタイトルは『私のマルクス』になっていますが、全体的なテーマとなっているのはあくまで「キリスト教」で、そのロシア/東欧における歴史的経緯との関係でマルクス/エンゲルスおよびマルクス主義について語られる部分もあるのですが、それはほとんどサイド・ストーリーです。この本で佐藤優のマルクス観を理解しようとすると、ちょっと肩すかしになりますので念のため。
最後に、佐藤優とは『盟友関係』にあると言ってもいい中村うさぎの解説が秀逸。彼女と佐藤優の対談『聖書を語る』も超面白いです!
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