上野の国立西洋美術館で『聖プラクセディス』を見てきました。
フェルメールの初期作品とされる絵画ですが、真作かどうかについて異論があり、同美術館でも「フェルメール(に帰属)」という微妙な扱いになっています。
ということで、私としては、ずっと見ずに放っておりました。日本でいつでも見れるし。
ただ、さすがに「フェルメール全作品踏破」にあと4作品まで迫ってくると、このまま放っておくわけにもいかず、まあ一応見ておこうかと。
で、こりゃやっぱ「フェルメール作なわけないわ!」
まず構図、色使い、そしてなによりもその技量という点で、一体これのどこがフェルメールなんでしょう?って感じです。
そもそもこの作品は、17世紀のイタリア人画家フェリーチェ・フィチェレッリが描いた聖人プラクセディスの絵(左)の模写だそうですが、確かにそっくり。ちがいは十字架を持っているかどうかだけ。
だけどフェルメールが、わざわざこんな模写なんかしますか?いくら若い頃とはいえ?
聖プラクセディスとは、2世紀ローマでキリスト教の殉教者の遺体を清めた聖女ということですが、フェルメールは、ここまでモロにキリスト教を題材とした作品をほかにほとんど描いておりません(例外的に『マルタとマリアの家のキリスト』)。
画面左下に「Meer 1655」というサインがあるということで、それがフェルメール(Vermeer)作の根拠のひとつにもなっているのですが、そんな中途半端なサイン、あとでいくらでも描き足せるし、そもそもいくら目を凝らしても、そんなもの見つかりませんでした。
また、絵の具(特に袖口の白)が、当時フェルメールの活動していたオランダ産という説もあるのですが、どうなんでしょう?
さらに、この聖プラクセディスの表情が、フェルメールのこれも初期の『眠る女』(左)に似ているという説もあるのですが、全然そうは思えませんね。
どちらも、ただ下を向いてるだけやろ?
だいたい、このふたつの絵画の作者が、技量の点で同じ水準にあるなんて、到底思えません。フェルメールが、その活動の初期段階から、ぶっちぎりの天才だったのは、この『眠る女』でも明らか。
『聖プラクセディス』は2014年、ロンドンでクリスティーズのオークションにかけられ、約10億円で落札。その新たな所有者から寄託を受けた国立西洋美術館が、2015年3月より常設展示しています。
しかし、なんとその西洋美術館の全作品カタログの中に、『聖プラクセディス』のことは一切出てこないんです。画像も説明も。それからお土産屋さんにも、絵葉書のひとつすら置いてないし、それってどういうこと?天下のフェルメールでしょ?その「フェルメール(に帰属)」という表現とともに、この絵画に対する見方がはっきり出ているのかと、本日確認できた次第です。
ということで、今回は一応アリバイづくりということでした。
全踏破まで、あと3作品!
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