ジェフ・ベックの歴史的名盤『ギター殺人者の凱旋 / Blow By Blow』(それにしてもすごい邦題だなー・・・)。
来日記念盤として、日本初登場となる「SA-CDマルチ・ハイブリッド盤」が発売されました。
かつて英国で限定発売された「ハイブリッド盤」はその希少性により長年高額で取引されてきましたが、今回、日本独自の仕様でリリースされたものです。
SACD層は、70年代に登場した4ch盤(クアドラフォニック)をベースにSA-CD用5.1へとリミックスされたもの。CDを超える高音質に加え、マルチ・チャンネルでミックスされた音像がリスナーを取り囲むように鳴り響きます。
CD層の方は、SACD用のハイレゾリューション・マスターをCD用にコンバートしたもの。「コンプレッション感の少ないナチュラルな音像を実現」という説明です。
その他、アナログ・シングル・サイズ(7インチ)の紙ジャケットに、オリジナル広告ポスターや日本盤シングル・ジャケット(2タイプ)が復刻されるなど、盛りだくさんのおまけがついてきます。
さて、一聴した感想は:
- 『ブロウ・バイ・ブロウ』のSACDは2000年にもリリースされましたが、そのバージョンは「粗雑なマルチ・チャンネル」といった印象で聞くに堪えない内容でした。それと比べると、今回のSACDはマルチの音像も非常に落ち着いた印象です。但し、この作品にかかわらず、そもそも筆者は「マルチ・チャンネル」というものに大きな価値を見いだせないんです・・・。今回も、ドラムとキーボードがリスナーの前、ジェフのギターが右側の後方から、ソロになるとてっぺんの方から聞こえて来るということで、面白いんだけど「普通あり得ない音像に取り囲まれて、いったい何が面白いんだろう?」と思ってしまうんです・・・
- そもそもSACDというメディア自体既に破綻してるんですから、ここはすなおにハイレゾ・ダウンロードとしてくれれば良かったのに。それもマルチなんて不要なので、オリジナル・アナログ・マスターテープ(に少しでも近い世代のマスター)に立ち返って、24bit/192kHzでステレオ・デジタル・トランスファーしてくれればそれで良いんです。
- 一方、通常のCD層の方は2005年に発売された「DSDリマスタリング」とほとんど同じ音源、と言いますか、全く同じなんじゃないかと思われます。データ的に比較してもほぼ同一です。当時のデジタル・マスターからDSDでリマスターされたファイルを、今回もそのまま使ったのではないでしょうか。そういう意味では、全面的に刷新されたリマスターが聴けるかと期待していたのに、少々残念でした。
5,400円というお値段も高く、ちょっと迷ったのですが、ジェフの来日公演の記念という意味でも購入してしまった筆者でした。もちろん、それなりに充分満足しております!
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