クラシックの音楽家に、これまで聞いたことのないロック・ミュージックを初めて聞いてもらうというYouTube、その名も「Virgin Rock(バージン・ロック)」。とてもおもしろいです。
聞き手は、エイミー・シェイファーという、アメリカのプロのハープ奏者でピアニスト。長らく教壇にも立っているという、本格的なクラシック音楽家だそう。
今回は、ジェネシスのあの名曲『ファース・オブ・フィフス』を聞くっていうんだから興味深いです。
なにしろこの曲は、ジェネシス1973年の大傑作アルバム『月影の騎士』のコアとなる重要な作品。そのクラシカルな曲調に、多くのプログレッシブ・ロック・ファンが魅了され、筆者も、もちろんその一人であります。(▶️ 『月影の騎士』についてはこちら)
さて、ヘッドホンをしたエイミーさんが、聞き始めます。彼女は、この曲を聴くのが本当に初めてらしく、そのリアクションを見るだけでも楽しいです。
まずあの有名な、トニー・バンクスの弾くアコースティック・ピアノによるクラシカルなイントロ。エイミーは心地よさそうな表情を浮かべ「なんと素晴らしい!」と絶賛。「パワフルであると同時に和製も複雑。リズム進行も有機的で優れている」と的確な論評。「なにより、ピアノ以外一切の楽器が入らず、ここまで奏でるのが素晴らしい」と、そのとおり!
すると突然、ジェネシスのバンド演奏が一丸となってスタートし、びっくりするエイミー。「なんとパワフル」。「ベース・ラインが好きだわ」とも。
静に動に、曲調がどんどん変わるたびに、表情を変えるエイミーがとっても愛らしい。
ピーター・ガブリエルのフルートが出てくると、「アイリッシュなフォークソングの香りがする。歌詞も素晴らしく、ひとつの物語のよう」とこれまた高評価。
さらに聴き進み、トニー・バンクスのシンセによる中間部に「オルガンかしら、それともシンセ??」と興味津々。そしていよいよスティーヴ・ハケットによるギターソロに到達すると、「最初はサクソフォンかクラリネットかと思った」と。やがて広がる哀愁のクライマックスに、とても感動した様子。
そして、まさに大河が入江に流れ込むような大団円を、満足げに噛み締めるエイミーなのでした。
この曲をとても気に入った彼女は、もう一本YouTubeを作り、さらに深掘りを進めます:
ここでさらに素晴らしいのは、トニー・バンクスのクラシカルな音楽性について、深く分析を進めるところ。
影響を受けた作曲家として、ラフマニノフやラヴェル、サティなどを挙げたのは予想どおり。ただ、シベリウスやボーン・ウィリアムズ、さらに意外だったのは、スメタナやバルトークなども。要するに、フランス印象派からロシア、フィンランドのロマン派、さらにチェコ、ハンガリーなど近代の民族派まで、実に多様な音楽性が絡み合って、トニー・バンクスの音楽が成り立っているのだという、納得の説明です。
そして何よりも、我が愛するジェネシスが、このようなクラシック界のプロにもきちんとした評価を得られる音楽集団であったことを、あらためてうれしく思いました。
エイミーは、既にたくさんのロックを聞かされたようで、多くのYouTubeがアップされています。レッド・ツェッペリン、ビートルズ、クイーンからU2、ピンク・フロイドなどなど。 (▶️「Virgin Rock」はこちら)
特におもしろかったのは、イエスの『危機』。エイミーは、どうもそれほど気に入らなかったらしく、「このリード・ボーカルは好きになれないわ」ですって!
コメントを残す