イアン・アンダーソン率いるジェスロ・タルの数あるアルバムの中でも、最高傑作の呼び声が高いのが、この『パッション・プレイ/A Passion Play』です。
1972年にリリースされたジェスロ・タルの第5作『ジェラルドの汚れなき世界/Thick as a Brick』は、アルバム全体で1曲というプログレシブ・ロックの大作で、全米1位を獲得する大ヒットとなりました。
この『パッション・プレイ』はその翌年リリース。同じくアルバム全体で1曲で、さらにプログレッシブ色を強めた意欲作。これも全米第1位を獲得しました。
架空の劇場で架空の役者が演じる架空の受難劇という、二重に架空の世界を創造した巨大なコンセプト・アルバム。ジャケットの中には、その架空劇のパンフレットまで作ってしまうというこり方でした。
あまりにも複雑な内容だったため「難解」といわれることも多く、前作『ジェラルドの汚れなき世界』に比べると苦手というリスナーも多いようです(筆者も・・・)。
今回、あのスティーヴ・ウィルソンによりこの問題作『パッション・プレイ』が全面的リミックスされ、5.1マルチ・チャンネルのバージョンやハイレゾ・バージョン、さらに大量のボーナス・トラックを伴う4枚組み(CD2枚、DVD2枚)になって甦りました。
特に注目なのは、当初フランスで録音され、スタジオの不備やメンバーの食中毒といった散々な結果となったプロジェクト『The Château d’Hérouville Sessions』が丸ごと復刻されたこと。これは結局すべて不採用となり、新たに急遽『パッション・プレイ』が作成された経緯があります。
さて、この難関な受難劇のちょうどまん中で、幕間劇として映像まで造られたのが「眼鏡を失くした野ウサギの物語」。このボックス・セットにも当然に納められています。摩訶不思議なこの映像をぜひご覧ください:
今回も、「プログレ・リミックス界の独占企業体:スティーヴ・ウィルソン」により手掛けられましたが、全体のサウンドは大幅に磨き上げられ改善しており、なかなか立派な仕事と評価できます。
特に、これまでのCDは、アルバムを前半後半たった2曲に収められているためなかなか聞きやすいとは言い難かったのですが、曲単位で15曲に分割して聞けるのが、とても有り難いところです。
歴史的大作の決定盤と言える内容と言えましょう。
ボックス・セットの内容は下記のとおりです:
<ディスク 1>
『パッション・プレイ』(新ステレオリミックス)
<ディスク 2>
『The Château d’Hérouville Sessions』(新ステレオリミックス)
<ディスク 3>
1. 5.1チャンネル DTSとAC3ドルビー・サラウンド・サウンド(PCM 96/24)
2. オリジナル・マスターテープからのフラット・トランスファー(PCM 96/24 ステレオ)
3. 「眼鏡を失くした野ウサギの物語」ビデオ
<ディスク 4>
1. 「The Château d’Hérouville Sessions」 5.1チャンネルDTSとAC3サラウンド・サウンド
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