10ccの半分、5cc分として、ケヴィン・ゴドレイとロル・クレームの二人が脱退し、ゴドレイ&クレームを結成したのが、1976年。
そして翌年発表したのが、この問題作『ギズモ・ファンタジア(Consequences)』でありました。
なにしろ、新人グループのくせに、いきなりLP3枚組(当時)で、「怒れる自然に立ち向かい、最後の防衛戦に挑む一人の男の物語」という良く分からない壮大なコンセプト・アルバムを作ってしまったのでした。
そもそもこの二人、10ccを脱退した理由が、「自分たちで開発したギター用のアタッチメント『ギズモ』を、どうしても世の中に売り出したかった」ということだったそう。なので、このアルバムでは、そのギズモをふんだんに使いまくっているのです。ちなみに「ギズモ(正確にはギズモトロン)」とは、エレキ・ギターに取り付けて電気じかけの爪を回し、弦をひっかくとバイオリンのような音が出るというすごい装置なのです(詳しくはこちらをご覧下さい)。
さらにこのアルバムでは、プロの俳優や声優を招いて、ラジオ劇のような設定で、実際にドラマが語られ、ギズモを中心した音楽は、あるときは効果音のように、ある時は劇中歌のように、果てしなく展開するというものでした。まさに壮大なファンタジー・コンセプト・アルバム!
では、とにかく聞いてみましょう:
これぞプログレッシブ・ロックの極致とも言えるものすごい作風ですよね。
でもこれが、全然売れなかったんだねー。
ただ、ゴドレイ&クレームの二人も、「そりゃ売れるわきゃないわなー」と全然平気で、とにかく自分たちがやりたかった創作活動をやり切れたことに、大満足だったようなんです。
尚、本作は、これまで日本でしかCDリリースされたことがなく、今回、ゴドレイ&クレームの監修のもと、アンディ・ピアースによって新たにマスタリングが行われ、いよいよ初の世界リリースとなったものなんです。
オリジナル・アルバムに加えて、8曲を抜粋したシングル・アルバム『Musical Excerpts from Consequences』と、プロモーション用の編集アルバムも収録され、全部でCD5枚組という豪華版。
謎の大作も、ついに完全版として日の目を見ることになったのでした!
さて、もうひとつは、発売自体2年前(実はぜんぜん気づきませんでした)なんですが、ゴドレイ&クレームの全アルバム5作をすべてリマスターし、ボーナス・トラック集も一枚つけて、都合5枚というCDボックスセットが出ていたのですねー。『Body of Work』というの。
彼らのどのアルバムも、はっきり言って「変態」というか、ふつうの方々にはなかなか理解されにくい代物ばかりで、リマスターもこれまで、唯一、日本で出たのみでした。
このボックスは、ゴドレイ&クレームのご両人が制作にガッツリ関わり、「ギズモ・ファンタジア」と同じリマスター・エンジニアのアンディ・ピアースが手がけ、付属のブックレットには、二人が延々と自己満足気味に楽曲解説してくれるなど、完全に決定版なわけです。
久我はとにかく彼らが大好きなんであります。残りの5ccよりもはるかに好きと言っていいです。
で、なぜこれほどにも好きなんだろうと考えてみるに、結局、「売れるかどうか一切気にせず、ひたすら自分の志向する芸術を、一切妥協することなく追求する」というところなんでしょうねー。そう言えば、久我の大好きなミュージシャンはみんなそうです。アラン・ホールズワース、ジノ・ヴァネリ、スティーリー・ダン(彼等は超売れたけど、オタクであることは間違いない)。
これからも、そんな彼らをトコトン愛してまいりたいと思います・・・。
ということで、最後にもう一曲。となるとやっぱりコレですね。ゴドレイ&クレーム唯一の全米トップ40ヒット(16位)、『クライ(Cry)』。
それは1985年のことでありました。なんとも言えないウェスタン調のリラックスしたビートに、ケヴィン・ゴドレイの卓越したクルーナー・ヴォイスが輝きます(久我は、ケヴィンのことを「史上最も優れたヴォーカリストのトップ10」に入れております)。コレまた彼らが作ったモーフィング画像のビデオも秀逸(何しろ彼らはビデオ分野でも第一人者でしたから)。
ロル・クリームが当時のインタビューで「締め切りがあるからとか聴衆が待ってるからという理由でスタジオにいてはいけない。自分のためにやっているんだ。レコードを作るということは自己中心的であるべきだと思う」と豪語していて、気を呑まれました(笑)皆口々に10ccは4人のままでいてほしかったと言いますが、そんな考えの人がずっと同じバンドに留まる訳がない(^_^;)
私もこの2人の方が好き、というのも10ccより先にG&Cを聴いて夢中になってしまった口なので、ちょっと大多数のファンとは齟齬があるように感じてしまいます。
トマリカさん:素敵なコメントをありがとうございます。変わり者の彼らを好きになるって、なかなか微妙、でもとっても楽しいですよね!