エマーソン・レイク & パーマー(EL&P)は、ロックとクラッシックの融合という意味では最も直接的、かつラディカルなバンドでした。
ムソルグスキーの「展覧会の絵」をそのまま全曲やってしまう、なんていうものすごいアイデアは、EL&Pのほかにはあり得ないでしょう。
「恐怖の頭脳改革」は、そんな彼らの最高傑作。全英2位。全米11位。ゴールド・アルバム。
次から次にシンセサイザーを駆使して繰り広げられる異次元の世界は、まさにトリオで作り上げる音楽の限界と言えます。
それまでのEL&Pのアルバムと同様、ここでも、英国のチャールズ・ヒューバート・パリーの「エルサレム」や、アルゼンチンのアルベルト・ジナステラのピアノ協奏曲から「トッカータ」など、クラシックの楽曲が採り上げられていますが、オリジナルとみごとに溶け合い、トータル・アルバムとしての均衡を保っています。
それでは、アルバム冒頭を飾りシングル・カットもされた「エルサレム」をお聴きください:
さらに「悪の教典#9」。第1から第3印象まで30分に達する一大組曲です:
EL&Pは、その芸術性の高さ、テクニックなどの割には、正当な評価を受けていないような気がします。それは、彼らのライブ・パフォーマンスの荒っぽさに原因があるのかもしれません。
特に、キース・エマーソンのプレイは『派手』。オルガンにまたがり、なぎ倒し、ナイフを刺したり・・・。1972年の来日時も、雨の後楽園球場のグラウンドを走り回って大サービスでした。さながらサーカスの見世物のような感じが、彼らに対する正当な評価を難しくしてきたように思えて、ちょっと残念・・・。まあ、彼のあの大活躍があったからこそ、3人編成のロック・バンドとしてあそこまで人気を博すことができたんだとも言えるんですけれど・・・。
一方ベースのグレッグ・レイクは、その透明感のあるヴォーカルが絶品で、バンドのロマンチシズムの源でもありました。ただ、自己主張が強い仕切り屋さんで、キース・エマーソンが実質的に音楽を主導しているのに「プロデューサー」の地位に固執し、いつもグループ内の不協和音をかもし出していたような気がします。
そしてドラムのカール・パーマー。EL&Pの登場時の彼のプレイは本当に鮮烈でしたけれど、基本的に「リズムが走ったりもたったり」、とにかく不安定なところがカールの最大の欠点なんです。その後、エイジアなどで「ビジネス」的には充分に成功し、今も活発に活動を続けているので、本人としては何の問題もないんだと思いますけれど・・・。
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EL&Pは、「頭脳改革」以前のアルバムなら全て傑作です(これ以降は下り坂と言わざるを得ません。例えば「ラブ・ビーチ」なんていう1978年の作品は、無理やり作らされたポップさが哀れをさそう内容でした・・・)。
特に「おすすめ」は:
エマーソン、レイク&パーマー Emerson Lake & Palmer
1970年、EL&Pの記念すべきファースト・アルバム。シンセサイザーの使用はまだ限られており、ピアノとオルガン主体の透明で鮮烈なイメージにあふれています。
タルカス Tarcus
71年発表のセカンド。突然生まれた怪物「タルカス」が、いろいろなモンスターと戦いながらひたすら進撃していくタイトル曲は、「どっからこんなアイデア浮かんでくるの?」と言いたくなるほどユニーク。エマーソンのシンセ炸裂。
展覧会の絵 Pictures At An Exhibition
クラッシックにロックの精神(エネルギー、ダイナミズム)を注入したという意味では、これ以上徹底的な作品を知りません。ムソルグスキーの原曲を、一大ライブ・ロック・エンターテインメントに仕立てました。
トリロジー Trilogy
72年発表。落ち着いたたたずまいのスタジオ・アルバム。3人のバラエティー富んだ音楽性が、洗練された形で結晶化しました。
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