歴史書で「何か一冊オススメは?」と言われたら、まちがいなくこの本を推します。
岡田英弘の『歴史とはなにか』(文春新書)。
初版は2001年ですが、版をかさね、今年で20刷という、かくれたベストセラーと言える名著。
岡田英弘先生は、東洋史学者で外語大学名誉教授。残念ながら、昨年5月に亡くなわれてしまいました。享年86歳。
岡田先生を知るきっかけになったのは、これまた久我の信奉する副島隆彦先生が、とてつもなくリスペクトしていたから。
例えば(長い引用ですが):
「岡田英弘はなんでも知っている。だから日本の学者たちがものすごく怖がるのだ。岡田先生は、「アルタイック・スタディーズ(Altyic Studies)」、アルタイ語族学会という全世界横断的な学会の日本の代表であり正式メンバーだ。この国際学会は、ユーラシア大陸の広大な草原の民を学問的にひとまとめにした壮大な学会。人間(人類)についての大きな事業を掘り当てようとする、世界各国の本物の学者たちの集まりである。私が、自分の先生、と呼ぶ人がどれぐらいの人物かを、私が測定していないはずがない。偉い先生だ。しかし現実の政治についてあれこれ言う人じゃない。世界基準で勉強しているから偉いんだ。(副島隆彦『人生道場』)」
大変な絶賛ぶりです。
学問の道に厳しい副島先生は、他の学者のことをほとんど褒めませんが、恩師「小室直樹」と、この「岡田英弘」だけは別格の扱いなんです。
これは、勉強する価値があるでしょう。
ということで、岡田英弘先生の壮大な著書の中から、一番とっつきやすそうなのが、この書『歴史とはなにか』。
例えば、こんな刺激的なテーマが盛りだくさんです:
- インド文明は「歴史のない文明」である
- 「中世」なんて時代区分は不要。あるのは「古代」と「現代」だけ
- 資本主義はモンゴル帝国が広めた
- 『古事記』は日本最古の歴史書ではない(最初の歴史は『日本書紀』)
- 神武天皇から応神天皇までの天皇は創作であり実在しない
- 歴史には「良い歴史」と「悪い歴史」がある
先生のご専門である中国史、満州史、モンゴル史、日本古代史を中心に、これでもかというほどの「史実」や「論拠」をふまえ、我々が頭から信じ込んでいる「常識」に、真っ向から挑戦してくれます。「この一冊で歴史の見方が変わる!」という宣伝文句が決してオーバーじゃない、まさに「目からウロコの歴史論」と言えるでしょう。
200ページ足らずの新書とは言え、当代の一流学者が手を抜かずにしたためた本格的内容ですので、読み通すにはそれなりに努力が必要ですが、ここで得られる壮大な歴史の見方・考え方は、必ず読者にとって長く役立つ物差しを提供してくれるものと思います。
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岡田先生にハマったら、さらに日本史に踏み込んだ名著『日本史の誕生』もおすすめです。
これまた刺激的な内容で、「邪馬台国が今の日本になったわけではない」といった大変興味深い観点にあふれており、まさに、「目からウロコ」まちがいなしです!(▶︎こちらからお求めいただけます)。
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