『ゼロ・トゥ・ワン』イーロン・マスクが絶賛するんだから、やっぱり今、読まないと

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』は、イーロン・マスクらと共に「ペイパル」を立ち上げた起業家ピーター・ティールが2014年に出した本で、スタートアップ企業のバイブルともなった大ベストセラーです。

これがまた最近、『天才読書』という新刊で、イーロン・マスクの愛読書として紹介され、「“異常”な才能を持つ起業家たちとその価値観、彼らがどのような思考でイノベーションを産んでいるのかを理解する上で欠かせない必読の書」と高く評価されました。

確かに、ピーター・ティールはテスラのことを、当時から「傑出した起業の成功例」として褒めたたえたのだから、そりゃイーロン・マスクも推薦するでしょう。

ただ、それをはるかに超える普遍的な魅力が、この本にはあるんです。

シリコンバレーを中心とするIT系ベンチャー・ビジネスは、確かに不透明な未来に向かって大きなリスクを取るけれど、だからと言って、それを「運」に任せたり、具体的なゴールを欠いたりしては、決して成功は望めないと。

スティーヴ・ジョブズの天才は、その芸術的な「プロダクト」にあると言われがちですが、本当は、アップルという会社を作り上げたこと自体が天才的なのだと。そこには、考え抜かれた計画と、それを実行する人材チームと、揺るぎないリーダーシップがあった、と述べています。

そして、ジョブズにしても、イーロン・マスクにしても、ピーター・トゥール本人にしても、みんな「オタク」。世間との交流を閉ざしても、何かに一心不乱に没入する「“異常”な才能を持つ起業家たち」がその主人公なのだと。逆に、「スーツを着たCEOのいる企業には絶対投資しない」とピーターが言うのも分かります。

さらに、当時から騒がれていた「クリーン・エネルギー」にかかわる起業も、すべてうまくいかないと断言。なぜなら「地球環境」という課題自体は正しいものの、どの企業も、それを成功に導く7つの質問に答えられないからだと。その質問とは(1)エンジニアリング(2)タイミング(3)独占(4)人材(5)販売(6)永続性(7)隠れた真実と、ひとつひとつ解説します。

これは決してITにとどまらない、どのような産業、企業においても当てはまる普遍的な設問だと思います。

ちなみにテスラについては、「その7つの質問にすべて答えた数少ない企業のひとつ」と、ピーター・トゥールは、これまた当時から見抜いておりました。

これらの論考が、ピーター自らのユニークな経験に加え、古今東西の哲学者や科学者のエピソード、あるいは歴史・文学への深い造詣を織り交ぜつつ語られるのだから、読み物としても超一流。わたしも大いに触発され、アリストテレスロバート・ノージック、そしてニール・スティーヴンスンのSFなど、また多くの書物を読んでみたくなりました。

ということで、発刊からほぼ10年経つ今でも、あるいはむしろ、ITバブルがまた弾け混迷の時代に向かいつつある今こそ、ピーター・トゥールのこの名著を読むべきではないかと思われます。

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