91OZN9lmo4L._SL1500_自分の中では、いわゆる「5大プログレ」のランキングは次のようになります:

1:ジェネシス(ピーター・ガブリエル期限定)
2:イエス
3:EL&P
4:キング・クリムゾン
5:ピンク・フロイド

ピンク・フロイドが最下位なのは、その圧倒的な「存在感」は大いに評価するものの、やっぱり「演奏技術」の面で(デイヴ・ギルモアを除くと)どうしても満足できないのと、音楽的には「結局ただのブルース?」という想いが強く、もうひとつです。

そして、キング・クリムゾン。

クリムゾンといえばロバート・フリップなわけですが、そのフリップにずっと「違和感」を感じ続けてきたと言えましょうか・・・(コアなクリムゾン・ファンの方々には怒られちゃいますけど・・・)。

その「違和感」の原点は、やはり、あの衝撃の1969年のデビュー・アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」にあります。

「宮殿」のロック史における重要度は今さら繰り返すまでもありません(もっとも、ビートルズの「アビイ・ロード」をトップから引きずり下ろしたというエピソードは事実じゃないらしいですけど・・・)。

さて、既に定着した見方ですが、「宮殿」を音楽的に主導したのはロバート・フリップではなく、イアン・マクドナルドです。

例えば、アルバムのラストを飾る、言わずと知れたタイトル・ソング『クリムゾン・キングの宮殿 The Court of the Crimson King』。

グレッグ・レイクのヴォーカルも素晴らしい。マイケル・ジェイルスのドラムもとてつもない。

しかし、この曲で決定的に重要な役割を果たしているのは、イアン・マクドナルドの奏でる「メロトロン」です。

メロトロンはプログレシブ・ロックの「シンボル」として、多くのバンドに採用されましたが、ここまで大胆に、ここまで壮大に導入されたのは、他にあまりないでしょう(ジェネシスのトニー・バンクスらの例もあり)。まさに、キング・クリムゾンをクリムゾンたらしめた決定的インストゥルメント「メロトロン」を導入したのはイアン・マクドナルドです。

そして、何よりも素晴らしいのはこのドラマティックな楽曲そのもの。歌詞を担ったピート・シンフィールドと共に、作曲の任に単独で当たったのもイアン・マクドナルドです。

マクドナルドは、アルバム唯一のバラード『風に語りて I Talk To The Wind』でも、作曲し、歌い、鍵を握るフルートを吹いています。

まさにアルバム全編において、イアン・マクドナルドはキーボードから管楽器、作曲からボーカルまで、八面六臂の活躍しており、その貢献度は明らかなんです。

そして、ここにおけるロバート・フリップの存在感は、それほど大きくないと言わざるを得ません。

71AG2MOn-WL._SL1417_そして、同アルバムをもってイアン・マクドナルドが脱退して以降、ロバート・フリップは急激にリーダーの地位を占めます。

その辺の事情には詳しくないのですが、どうもフリップによるバンドの「乗っ取り(クーデター)」に思えてなりません。

そして、自らの独占体制を一気に確立したフリップが、心機一転、新しいクリムゾンを主導していくのですが、その道のりは、決して簡単なものではありませんでした。

1970年のセカンド・アルバム「ポセイドンのめざめ In the Wake of Poseidon」は、「宮殿」の焼き直し。続く「リザード」はなかなか意欲的なものの、破れかぶれのフリップが色々な要素をぶちまけた「実験作品」としか思えない面も。さらに、1971年の「アイランズ」は、端正な佇まいを好むファンも多いですが、そこにはフリップの「行き詰まり」と「諦念」すら感じられると言ったら穿ちすぎでしょうか?

しかし、ここからのロバート・フリップはすごい!

1972年7月、フリップはキング・クリムゾンの解散を一旦宣言し、「新生キング・クリムゾン」を創造しなおしたのです。

新メンバーは、ビル・ブラッフォード(「ブルーフォード」とは呼ばない)、ジョン・ウェットン、デヴィッド・クロス、ジェイミー・ミューア、そしてロバート・フリップ(これを「第3期クリムゾン」という見方も)。

1973年3月に発表された新アルバム「太陽と戦慄 Larks’ Tongues in Aspic」は、即興演奏の要素を全面に押し出しながら、静と動が緩急自在に繰り出されるという、圧倒的に素晴らしい新境地を切り開きました。

パーカッションでバンドのエネルギーの原動力となった異能の天才ジェイミー・ミューアはその後脱退しますが、新生クリムゾンは、ライブにおいても圧倒的な存在感を示し、世界中で大絶賛のステージを繰り広げます。

1974年に次作、「暗黒の世界 Starless and Bible Black」を発表。

そしてたどり着いたのが、1974年の「レッド」です。

その時点で、バンドのメンバーはフリップ、ブラッフォード、ウェットンの3人へ。

緊張感の高いバンド活動がいよいよ沸点に達し、もうこれ以上の継続は崩壊への道しかないということで、まさに「第3期」の最終アルバムとなってしまいました。

これは、とてつもないアルバムです。

ロバート・フリップのひたすらディストートするギター、ビル・ブラッフォードのパワーと技術が炸裂するドラム、そしてジョン・ウエットンの大地を縫うベースと哀愁のヴォーカル。変拍子のうねりの中で、情念の塊のようにひずんだ音像が「雄たけび」を上げながら、すべてをなぎ倒しつつのし歩いていく。これは、まさに三人でできることの限界でしょう。すなわち「レッド・ゾーン」。

ここにフリップの志向する、「プログ・メタルの世界」の到達点が存在します。

さて、自らの音源の「管理」に余念のないローバート・フリップは、YouTubeなどへの音源の流出にも神経を尖らせているようで、なかなか妥当なクリップが見つからないのですが、「レッド」の最後を飾る楽曲『スターレス』を発見。そのひたすら荒涼たる世界観を体感ください:

さて、レッドをもって再度崩壊したフリップのクリムゾンは、1981年に、ビル・ブラッフォードを残し、トニー・レヴィン、エイドリアン・ブリューを入れて、再々結成されます。新アルバムのタイトル「ディシプリン」が示すように、今度のクリムゾンは、まさに「鍛錬」を具現化した様相で、技巧的かつパワフル。そこにエイドリアン・ブリューのややユーモラスなボーカルが乗っかるという新しいスタイルでした。

そして、その後もフリップのクリムゾンは、いくたびかのメンバーチェンジや解散・再結成を繰り返しながら、現在まで続いております。

フリップのフリップによるフリップのためのバンドと化したキング・クリムゾン。

その経緯に、やや屈折した思いを感じざるを得ませんが、その偉大さについては疑問の余地なしといたしましょう!

 

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