Focus - Hamburger Concerto - Frontフォーカスはオランダ出身の四人組。

1970年代の初頭、クラシック色/プログレ色の濃いインストゥルメンタルで突然登場し、あっという間に英語圏のミュージック・シーンを席巻してしまったんです。

とにかく当時、オランダのロック・バンドなんて、誰も知りませんでした。

ヴォーカルらしいヴォーカルも存在しないインストゥルメンタルな演奏なのに、なぜかコンサート会場は興奮と熱狂のるつぼと化してしまう。

その原動力となったのは、ギタリストのヤン・アッカーマンと、キーボードのテイス・ヴァン・レールの二人でした。

ヤン・アッカーマンは史上最強のギタリストの一人と言っていいでしょう。

ジャズをベースに、古楽器リュートを使用したクラシカルな世界から、アバンギャルドなロックまで、とにかく恐ろしいまでの超絶テクニックで弾きまくります。フォーカスが、国境を超えて多くのリスナーを魅了したのも、彼のギター・パフォーマンスによるところ大と言えるでしょう。あのエドワード・ヴァン・ヘイレンが自分のアイドルに挙げていたことからも、その実力が知れます。

一方、テイス・ヴァン・レール(昔は『タイス・ヴァン・レアー』と言ってました。オランダ人の名前は難しい・・・)はキーボードとフルート担当。クラッシック寄りのバック・グラウンドを持つミュージシャンで、フォーカスの作曲面での鍵をにぎっていたのは彼です。突然飛び出す「ヨーデル・ヴォーカル」で、聴衆をあおりまくるのも彼の役目でした。

いくつかの野外フェスティバル等で大評判を確立していったフォーカスは、1972年のセカンド・アルバム「ムーヴィング・ウェイヴス」でついに大ブレークします。全英2位、全米8位。ゴールド・アルバム獲得。シングル・カットされた「ホーカス・ポーカス/Hocus Pocus」は、全米9位まで上ったんだからすごいです。23分を超える組曲「イラプション」など、聴き応え充分。これを、フォーカスの最高傑作と言う人も多いです。

さて、『ハンバーガー・コンチェルト』は、1974年発表のフォーカス第5作。円熟したフォーカスの魅力が詰め込まれた後期の傑作です。

一曲目、「リュートとリコーダーの為の小品(音楽の歓び)」は、17世紀、オランダの作曲家ヨアヒム・ヴァン・デン・フーヴによるリュートの小品で、ヤン・アッカーマンがアレンジしたもの。静謐に、あくまでクラシカルに奏でられます。

すると突然、2曲目の「ハーレム・スカーレム」では、フォーカスのロック魂が炸裂します。テイス・ヴァン・レールはピアノとオルガンでドライヴしまくり、「イエイエ!」のヴォーカルで悪魔的に迫ります。ヤンのギター・ソロも絶好調。

一方、「ストラスブルグの聖堂」は、テイスの音楽性が全て開花したクラシカルな作品で、さながらゴシック建築のよう。後半は4ビート・ジャズ的展開も見せ、ひたすら夢幻的。ロックの世界でこれ以上品格ある作品を、わたくしは知りません。

そして、アナログのB面全部を占めるアルバム表題曲の『ハンバーガー・コンチェルト』は、イエスの「危機」と並ぶプログレシブ・ロックの超大作のひとつと言って良いでしょう。

まず、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」をモチーフに、堂々と幕が開きます。ステーキの焼き方(「レア」、「ミディアム」など)を曲名にするという、とぼけたユーモアですが、なんせほとんどインストゥルメンタルなのに(時たま、多少のヴォーカルが入ります)、長尺の楽曲を最後まで飽きずに聞かせる技はさすがとしか言いようがありません。

ヤン・アッカーマンのギターは、ヴォーカリストの表現力を超えて、多彩に迫ります。そして、フィナーレの「ウエル・ダン」までくると、テイス・ヴァン・レールのオルガン、メロトロン、ピアノ、シンセ、ヴォーカルがフル出動し、全楽器が怒涛のように鳴り響く中を、圧倒的なクライマックスがその姿を現します。ひたすら感動のエクスタシーであります!

 

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フォーカスは、その後ヤン・アッカーマンとテイス・ヴァン・レールが仲違いすることで解散してします。何度かリユニオンやメンバー・チェンジを経て、今も66歳のテイスが若いメンバーを引き連れながら、新アルバムを出したりライブ・パフォーマンスを披露したりしながら活動を続けています。

筆者としては、やっぱりフォーカスの「あのケミストリー」は、ヤン・アッカーマンとテイス・ヴァン・レールの二人のコンビネーションからしか生まれ得ないと思っておりますので、いつの日か二人が和解して、またもう一度あの「マジック」を聞かせてくれないものかなと切望しているところです。

Focus - Hamburger Concerto - Booklet

 

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