ピーター・ガブリエル8年ぶりの新作「スクラッチ・マイ・バック」。
初のカバー集ということで、デビッド・ボウイの「ヒーローズ」やポール・サイモンの「ボーイズ・イン・ザ・バブル」、レディオヘッドの「ストリート・スピリット」などをオーケストラをバックに歌います。
でんど〜としては、正直、ガッカリをとおり越してウンザリです。
その理由は:
- 基本的にどの曲も、ピーター・ガブリエルが至近距離でつぶやくような「独唱」に近く、オーケストラのアレンジ自体にも特別の工夫なし。はっきり言って、余りにも単調で、退屈で眠くなる。
- どの曲も、まさにピーター・ガブリエルの好みそうな曲ばかりで、アレンジも彼の雰囲気丸出しなので、そもそもカバーする必然性が感じられない。そこには、意外な組み合わせの妙も、斬新な切り口もない。
今回のカバー曲の作者に、ピーター・ガブリエルの曲を逆にカバーすることを持ちかけ、「相互カバー集」とする計画も進めているそうです。アイデア自体悪くはないんですが、なんだかその方法論自体にピーターの興味が集中しているようで、どうなんでしょうか?そもそも逆カバーを持ち掛けられたアーティストもちょっと困ってるんじゃないかなあ。デヴィッド・ボウイは断ったって言うし・・・。
でんど〜にとって、ピーター・ガブリエルはアイドル中のアイドルであります。
彼の在籍していた時代のジェネシスは、プログレという狭いジャンルを超え、あらゆるロック界の頂点に立つ存在だったとすら思います。
ソロになってからも、ピーター・ガブリエルは野心的実験的な作品を次々に生み出し、ロックの地平線を確実に拡大して行きました。
1983年の「プレイズ・ライブ」は、それまでのソロ・キャリアを集大成した傑作です。そのエネルギーと実験性。アフリカの密林の中で未来と過去が交錯し、人間と超人が死闘を繰り広げるような、誰も描いたことのないポリ・リズムにあふれた世界がそこに立ち現れています。
そして、1986年の「So」。全米2位。売り上げ500万枚以上の大ヒットとなりました。彼の努力は大きく報われたんです。
しかし、「So」をピークに、ピーター・ガブリエルの表現者としての個性は大きく変質して行きます。
1992年の「Us」、2002年の「Up」と極端に寡作となり、合間合間に映画のサウンド・トラックを発表する程度。
その間、しだいに鼻について行ったのは、「襟を正して聴け」とばかりの権威を全面に押し出した自意識。芸術家然としてふんぞり返った自己満足とナルシズムです。どの作品も、もったいぶって、大げさで、偉そうで、権威ぶって、どうもいただけません。
でんど〜は、ミュージシャンが音楽そのもの以外に力を入れるのを忌み嫌います。功成り名を遂げたミュージシャンが、急に芸術家気取りになったり、政治や社会的活動に走ったりするのを嫌悪します。
例えば、U2のボノやスティング。
そして、人権運動に熱心なピーター・ガブリエルも、今やそういったにおいがプンプンします。
ピーター・ガブリエルは、英国パブリック・スクール出の上流階級のボンボンです。もともと、ロック界には希有な知性も教養も育ちも兼ねそなえたエリートです。
そんな彼だって、昔はこんなカッコして歌ってたんだから。
ミュージシャンの原点は「河原乞食」ではないか?ひとさまに自分の芸を喜んでもらい、お代をいただいてなんぼだと。
ミュージシャンは音楽で勝負しろ。金持ちになってから恩返しみたいに慈善事業やったり、地球温暖化や人権問題なんか語るな。大御所面して偉そうにするな。表現の方法論に逃げるな。音楽そのものでリスナーを感動させられなくなったら去れ!
特に、ピーターの「権威」が鼻につきはじめたのは、彼の脱退後、ジェネシスがフィル・コリンズをヴォーカルにして猛烈に売れはじめた時期と重なるよう思われます。自分がリーダーだと思っていたバンドが、自分が辞めても何事もなかったように大成功しちゃってる。これは衝撃的だったはずです。自我の崩壊をまねくでしょう。すると彼は、「単に売れる」というのとちがうところに目標を置く。置かざるを得ない。そうしないと自己実現が図れなかったのではないか?ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズなんかも同じような感じがします。
どうしちゃったのピーター?本当はもうすっかり枯れちゃったんじゃないの??
ジェネシスの再結成の噂もずっとありますが、ピーター・ガブリエルが了承しないので実現していません。そこに、自らが状況をコントロールし悦に入っている彼の自己満足をみると言ったら嫌味すぎるでしょうか?
でんど〜としては、ピーターに早くそんな世界から目覚めて、一度でいいからジェネシスのリユニオン・コンサートをやってもらいたいものです。昔のように仮面かぶって、踊り踊って、「眩惑のブロードウェイ」の大パフォーマンスを。
もしやってくれるなら、地球上どこでも飛んで行くのに・・・。
さて、それでもコレを聴いてみようという方は:
→「スクラッチ・マイ・バック」
ピーター・ガブリエルの最盛期のパフォーマンスに興味がある方は:
→「プレイズ・ライヴ」
キャリアのピークを極めたのが:
→「So」
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