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サイモン・シンの最新作「代替医療のトリック」読みましたけど・・・。

2010 年 4 月 24 日 コメントはありません

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フェルマーの最終定理」や「宇宙創成」など一連のサイエンスもので抜群の切れ味を見せてくれたサイモン・シン

彼の最新作は、通常の正規の医療ではない「代替医療」、例えば、鍼治療とかカイロプラクティックハーブ療法といった、非常に普及しているけれどもよく実態のわからない医療分野にメスを入れたものです。

で、正直、今回はイマイチでした。。。

まず、そういった様々な医療行為の抱える問題点やまやかしなど、目から鱗といった感じで一刀両断にされて行くのですが、結論はみな同じ、しかも冒頭からそれが丸見えということで、読書のスリルという意味ではややイマイチなんです。

サイモン・シンの他の著作、例えば「宇宙創成」では、「ビッグ・バン」という誰でも耳にしたことのある宇宙の原理を題材にしながら、その歴史を丁寧にたどりつつ、対立する学派の人間模様などを具体的なエピソードとともに生き生きと描き出します。難しい科学のテーマを、そういった素養のない素人にもとても分かりやすく、知的で手に汗にぎる一級のドラマ、一級のエンタテインメントに仕立て上げてくれるところに彼の本領があるんだと思います。

今回の「代替医療」も、一つ一つのテーマを丁寧に掘り下げるという点では評価でき、例えば鍼治療のように「効き目はあるんだろう」と思い込んでいた医療行為の実態がまざまざと浮き彫りになって行きます。ただ、やや説明調が目につくのと、色々な医療を次から次に採り上げるので、なんとなく「医療百科事典」のような参考書にしか思えないようなところが残念です。知識としては大変ためになるのですが、エンタテインメントとしてはどうかということです。

そういう意味では、冒頭部分のビタミンCと壊血病の関係や、大昔に広く行われていた「瀉血療法(血を抜いてしまう医療)」の驚くべきエピソードなど、歴史的事実をひもとくところに、サイモン・シン本来の筆力が生かされているのが興味深いです。誰もが知ってるナイチンゲールの秘話も、とても面白かったです。

彼にとっては初の共著(エツァート・エルンストという大学の先生)ということもあって、本来の個性がちょっと薄まってしまったのかなという気もします。

とにかく、代替医療という分野そのものに関心をお持ちの方には必読の書だと思いますが、でんど〜のように、優れたサイエンス系の書物がもたらしてくれる知的興奮というのを求める方々には、今回はあまりお勧めできません。


→それでも読んでみようかという方はこちらからどうぞ

サイモン・シンの「宇宙創成」

2010 年 1 月 31 日 コメントはありません

simon-singh最新作「代替医療のトリック」が出たばかりのサイモン・シン。その腕前は、「フェルマーの最終定理」で証明済みです。

で、その新作が届く前に、まだ読んでなかった「宇宙創成」を読みました。

すでに読まれた方も多いと思いますが、これは2006年、「ビッグバン宇宙論」という書名で出版された単行本の文庫化で、原題もずばり「BIG BANG」。つまり、宇宙創成そのものである「ビッグバン」について真正面から取り組んだ本です。

訳者もコメントしていますが、「ビッグバンもの」はもう世の中にあふれているのに、「何で今ごろ?」というのが第一印象。古くはホーキング博士からたくさんあって、一般の間でも「宇宙って、大昔に爆発してできたんだ」ってことだけは、だいたい浸透しています。

そういう感覚でこの「宇宙創成」を読み進めると、最初は確かに戸惑います。大昔にさかのぼり、名前を聞いたこともないような科学者たちの「宇宙の謎」への奮闘の歴史が続きます。

でも、それぞれのエピソードがものすごく興味深いんです。

例えば、異なる学説どおしの「血みどろ」の戦い。宇宙は「大昔から常にあったのか」、あるいは「ある時点からスタートしたのか」。その根本的な問い掛けは、以前は五分五分。というか「常にあった派」が優勢だったこともあったと。まるで「天動説」と「地動説」の対立のようです。

それぞれの学派の「証拠集めへの格闘」がまたすごい。その証拠で、「ビッグバン説」がはっきり証明されたという事実にも正直驚きました。でんど~は、ビッグバンと言っても、それはSFのようなもので、「宇宙の始まりは恐らくそういうもんだろう」程度の概念と思い込んでいたのですが、ここまで厳密な実証の過程を経たものであったとは・・・。

さらに、「世界には始まりがあった」という説は、当然にキリスト教の「創世記」を思い起こすということで、猛烈な宗教論争も避けられません。このへん、客観的学問の極地であるはずの「科学」と、スピリチュアルそのものの「宗教」とが正面から対峙している。日本では考えられない議論のあり方にも想い至りました。

ということで、この本はビッグバンそのものというより、それを題材にして「人類の英知への道のり」を解き明かすことに重点を置いたものなんだ、ということが良く分かります。「科学史」をうんと分かりやすく、万人に提供すると同時に、ニュートンアインシュタインといった誰でも知ってる科学者の光り輝く業績の影に、何十、何百という名も知れぬ科学者たちの「地と汗と涙」が眠っているんだと。

そういう意味で、著者サイモン・シンの力量は、「フェルマーの最終定理」に続き。今回も充分証明されました。

さらに評判の高い「暗号解読」も読まないといけません。「代替医療のトリック」も早く届かないかな。


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「フェルマーの最終定理」ぜひ読んで下さい。

2009 年 10 月 13 日 コメントはありません

fermatおもしろ「理数系シリーズ」。今回は、サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」です(青木薫訳、新潮文庫)。

丸っきり「文科系」の筆者も、「数学の世界にこれほどのドラマがあるのか!」と、思わず手に汗にぎり大興奮して一気に読み進めてしまいました。とにかく面白い。

フェルマーの最終定理は、17世紀にフランスの数学者フェルマーが示したもので、なんと20世紀末まで誰も解けなかったという超難問のことです。なにしろ、世界中の名だたる数学者がこの問題の証明に挑んだのに、みなことごとく敗れ去って行きました。本書は、この超難問に対する挑戦の歴史と、一人の若き数学者にスポットを当てた、人生を掛けた格闘のドラマなんです。

2000年の出版で、知る人ぞ知るベストセラーだったようですが、私はある雑誌で、宇宙物理学者の池内了先生が勧めているので知りました。「人生がもっと楽しくなる傑作・名著(科学30冊)」の一冊ということで、先生曰く、「著者のサイモン・シンは、数学の専門家ではないのに、数学史の要点をわかりやすく押さえ、数学者たちの格闘を描いてしまう勉強ぶりは本当にすごい。一つ一つのシーンがドラマティックに描写され、本と対話しているような気持ちになってくる」とのこと。正に、そのとおりです。

数学に関して特に興味深いのは、ある証明を成し遂げると、その問題については正に「証明済み」ということで、以降一切挑戦にさらされることがない、ということです。この点、例えば物理学の発見などは、長い将来には全く観点の異なる新たな発見によって、その歴史的価値がひっくり返ってしまうようなことがあります。その点、ある数学の証明を成し遂げた者は、未来永劫その栄誉を手にするということで、だからこそ、その栄誉を求める数学者たちの努力は、尋常でないものになる。時には、政治的な判断も求められる、熾烈な競争の世界なんです。

数学というと尻込みしてしまいますが、この本は、可能な限り数式を排除し、むしろストーリーに焦点を当てていますので、ぜったい大丈夫です。とにかくお勧めいたします。

尚、サイモン・シンは、このほか「暗号解読」や「宇宙創造」といったベストセラーを矢継ぎ早に出していますので、これらもぜひ読んで行こうと思っています。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)はアマゾンで!

「ホーキング、宇宙を語る」読み直しました。

2009 年 9 月 12 日 コメントはありません

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「超ひも理論」とか、「ループ量子重力理論」とか、物理学の色々な考え方があるようですが、根っこはこれだろうということで、また読み直しました。

「ホーキング、宇宙を語る」は1988年刊。全世界で1000万部以上、日本でも100万部を突破した大ベストセラーで、この手の本としては、まさに異例のヒットとなりました。

筋萎縮性側索硬化症という難病のせいで、車椅子の生活を余儀されながらも、スティーヴン・ホーキング博士は、理論物理学の分野で数々の貢献をなしとげ、67歳の現在もご健在な様子です。

で、これが「難しい」・・・。

こんなに難しかったかな??

なんで、こんなに難しい本が、ベストセラーになったんだろう???

当時、「ビッグ・バン」や「ブラック・ホール」という概念自体が珍しく、それを、とっつきやすい語り口で紹介してくれたということで、読者はみんな「なんとなく分かった」ような気分になったんでしょう。私も、そんな一人です。


さて、博士は、この中で、「相対性理論と量子力学との根本的矛盾が、近い将来解消され、大統合理論が生まれる気配」と述べていました。

そこで、最近の状況をちょっとおさらいしてみたんですが、そんな「大理論」は生まれていないどころか、「裸の特異点」や「量子もつれ」といった、さらに矛盾に満ちた現象が色々出て来ているようです。


ってことは、結局、まだ何も分かってないんだ・・・。


ホーキングやアインシュタインといった度はずれた天才が、一生を費やし、研究を重ねても、まだまだ、宇宙の神秘の本質に迫れない。というか、迫れば迫るほど謎が深まる。

DNA研究でも同じです。

宇宙誕生の秘密は分からないし、生命の起源も分からない。

その分からなさというのは、恐らく、我々の想像をはるかに超えて「分からない」んでしょう。


「神」と何度も書きながら、徹底した無神論者のホーキング。

「分からない」ということを、全部丸めて「神」で説明することだけはしない。

知の巨人たちの奮闘のひとつの証として、本書は今でも大きな価値を持っていると思います。

ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)

ファインマンさん

2009 年 3 月 22 日 コメントはありません

spaceman1最近、サイエンス関連の本にはまってるもんで、また読みました。

ご冗談でしょうファインマンさん」と「困りますファインマンさん」。

ファインマン博士は1965年にノーベル物理学賞を受賞。「量子電磁力学のくりこみ理論」を完成させたとのことで、何のこっちゃさっぱり分かりませんが、ものすごい科学者であるのは間違いありません。

かなり前にベストセラーになったので、ご存知の方も多いと思いますが、何ともいえずイイ味出してるんです。

なんせ、大科学者なのに偉そうなところはひとつもなく、政府などの権威は大嫌い。どこかのんびりした語り口と奇妙きてれつな行動パターンは、「ひょっとして、このおっさんアホちゃうか?」と思わせるほど。ところが、どんなことにも強烈な興味と疑問を持ち、ひたすら探求して行く。中途半端なことでは絶対納得せず。スペースシャトル墜落事故の原因究明のエピソードなど、やはり常人の世界ではありません。

初めは、あまりに淡々としてるので、「このおっさん無感情動物とちゃうか?」などと思ったりします。広島の原爆開発に深く関わって行くくだりがあるのですが、どうも「科学者として仕事を遂行する喜び」の方が感じられて、少々不快にすら感じます。また、奥さんを病気で亡くしたエピソードも、えらくさっぱりしてて、冷たい感じすらするんです。

しかし、読み進めて行くうちに、本当に飾らないまっすぐな博士のパーソナリティに魅せられて行きます。心の奥では、大きな問題意識を秘め悩んでおられたんだということも良く分かります。

こういう想像を絶する知力の持ち主の日常とものの考え方というものは本当に興味深いものがあります。

「科学の価値はおのれの無知を知ること。そこから一歩でも前進し、次の世代に渡して行くこと」。ファインマン博士の心は、あくまでまっすぐ無限に続いていました。

DNA

2009 年 1 月 2 日 コメントはありません

dnaDNAの二重らせんを解明し、ノーベル賞を受賞したジェームス・ワトソンの「DNA すべてはここから始まった」を読んだ。

2003年のベストセラーを、何を今さらという感じだが、日本に戻ったとき何気なく買ってたモノ。ようやく手に取ったら、あまりの面白さに引きづられ一気、といったところである。

ライターがいるので、厳密にはワトソン博士のみの著作物とはいえないし、全体的には、不自然なほど広範にDNAに関する領域を網羅している。まるで、「ガイドブック」みたい。でも、だからこそ、DNA解析の秘話から、当時の人道的観点の論争、ヒトゲノム解明から遺伝病の課題まで、実に総合的に書かれており、これ一冊読めば、DNAにかかわる一通りの知識が身に付くのがすごい。現時点でも、充分通用する基本テキストでしょう。

今は常識だけど、ヒトの遺伝子構造とほかの生物のそれは驚くほど似通っており、「生命とは、つまるところ、膨大な化学反応の体系にほかならない」という究極の真理にいたる論説は、あらためてスリリング。

チンパンジーから見ると、進化的にはヒトの方がゴリラよりも近いといったような部分。また、人種の系統をDNA的にたどって行くと、みなアフリカにたどり着き、白人も黒人も黄色人種も、根っこは皆一緒というのも、やはりパワフル。

一方、遺伝病の原因解明が進んでも、その治療自体には大きな困難が伴うという現実も理解。

ということで、本書以降のDNAにかかわる自然科学の最前線の状況をあわててフォローしなくちゃと、取ってつけたように色々バタバタ始めた。「Scientific American」という、アメリカの大衆科学誌と「日経サイエンス」の定期購読をまず開始。本当は「Science」か「Nature」にしたかったんだけど、ちと高いのと、専門的すぎるのは目に見えてるので、まずはこの辺から。

ワトソンは、その経緯から、まさに筋金入りの「無神論者」を自認しているが、最後の章で、「宗教的な人たちはあまりにもしばしば無神論者には道徳のかけらもないと決めつける」と述べているところは心に響く。でも、「道徳律の必要性を感じない人たちは、生まれつきの道徳的直感を頼みにしているのだろう」という結論はやや不満。「科学への挑戦の行き着く先に、動かしがたい客観的真実が必ずある」と結んでほしかったし、きっと本音ベースではそう思っているに違いない。

とにかく、生命の神秘にはまだまだあまりにも未解明の領域が多すぎるのは確かである。

このDNAの「化学反応」だって、一連のプロセスであることは分かるとして、一体、なぜどうやって、このプログラムが書かれ、最初のスイッチが押されたのか、というところは、到底解明できそうに思われない。ひたすら途方に暮れる。

ただ、それが、この分野の最高にエキサイティングなところでもあるんだ!

最後のユニコーン

2005 年 6 月 19 日 コメントはありません
unicorn1982年に公開されたアニメ映画「最後のユニコーン/The Last Unicorn」。ジミー・ウェッブの手掛けたサントラが、ついに手に入りました。廃盤で、まるっきりあきらめてたんですが、こういうことがあるんで、小まめにチェックしないといけないんですね。歌っているのはアメリカ。上品なオーケストラに彩られた好作品です。また、「お宝」が増えちまった!
さて、少しは新しいものも聴かなきゃと思って、TSUTAYAで借りてきました。アヴリル・ラヴィーンコールドプレイ
ホント、いいと思います。どっちも。
でも、なんちゅーか。おじさんの心を特に打ちはしませんね。「そりゃ、てめーがオヤジだからだろー」って、そりゃ、そうです。そうですが、あえて分析するとですね。
音楽業界の競争が余りにも激しいので、「私は何を売り物にしています」というのを強烈に絞り込まないと相手にされなくなっている。マーケティング的に。あれもこれも、と個性がはっきりしないアーティストは、デヴューの機会すらないんでしょう。色々なテイストの音楽を組み合わせて聴くのは、あくまでリスナーであって、アーティストの方で色々やっていただく必要はありません、っていうことでしょうか。
各アーティストは、その限定された個性の中で、強烈に技を研ぎ澄ますことが求められる。だから、レベルは高いんです。猛烈に。だけど、昔のように(出た!)、ひとりのアーティストに「無駄とも思われる多様な音楽性」を期待することもできなくなってきちゃったんではないでしょうか。
その極地はビートルズだと思うんですけど。
じゃあ、「昔はビートルズのような圧倒的スターがいたもんだ」と懐かしがっているだけでいいのか・・・。
最近、進化論の大家スティーヴン・グールドの「フルハウス」って本を読んだんですが、「大リーグ・ベースボールになぜ4割バッターが出なくなったのか」ということを、まじめに分析してるんです。昔はベーブ・ルースのような大打者がいたのに、なぜ最近はいないんだ、ということです。
これは、打者の技術が下がってしまったわけではなくて、むしろその逆。選手のレベルが全体的に上がってしまったため、「例外的に」ものすごい結果を出す選手が生まれにくくなっている、ということを統計学的に証明したんです。
きっと、これとおんなじことが、音楽界でも発生しているんですね。
みなのレベルが上がりすぎて、「例外的に」ものすごいアーティストが出にくくなっている。
例えば、今ビートルズがオーディションにやって来たら、きっとプロデューサーにこう言われちゃうんでしょう。「君たち、イイんだけど、もう少し整理してから出直ししてくれないかな」。
究極の例外、ビートルズは、もはや生まれない構造になっているんですね。きっと。