オリビア・ニュートン・ジョン あらためて良いです。

2009 年 10 月 31 日 コメントはありません

olivia-newton-john2オリビア・ニュートン・ジョンの旧11アルバムが、紙ジャケ、リマスターで再発されます。

あらためて彼女の魅力に注目しましょう。

オリビア・ニュートン・ジョンは、1971年のデビュー以来ヒットを連発し、当初のカントリー・スタイルから次第にポップスのメイン・ストリームへと大きく成長。ミュージカル「グリース」の大ヒットを経て女優業にも進出します。

キャリアの金字塔は、81年の「フィジカル」。全米10週連続1位という、すさまじい記録です。

これは、デビー・ブーン(「You Light Up My Life」)と並ぶ、ビルボード史上の最高記録で、未だに破られていません。販売枚数でも、過去50年間の歴代第6位となっており、まさに歴史に名を残しました。

世界中のトップ・アイドルとなったオリビア・ニュートン・ジョンですが、その魅力は歌唱力にあります。

天使のようなファルセット・ボイスから力強いアルトまで、広いヴォーカル・レンジを自由自在にあやつるテクニック。素朴なカントリーから、躍動的なダンス・チューンまで。清純派路線から、ちょっとセクシー路線まで。さまざまなスタイルに対応し、変幻してきました。

筆者の選ぶトップ・ソングは「マジック」。オリビアの主演したミュージカル映画「ザナドゥ(1980年)」からのシングルで、これも4週連続1位というメガ・ヒットとなりました。

ここでのオリビア・ニュートン・ジョンは、成熟したプロの歌手として、持てる技術を自在にぶつけ、聴く者を眩惑するのですが、何といっても、転調に転調を続け荘厳な雰囲気をかもしだす楽曲そのものがユニークで、誰も聴いたことのない個性を生んでいました。

john-farrarそれが、オリビア・ニュートン・ジョンのキャリアを全面的に支え続けた、プロデューサーのジョン・ファーラーの仕事です。

彼は、彼女のデビューから30年近くにわたり、18作のアルバムをとぎれなくプロデュースしました。作曲からギター演奏まで、彼の存在抜きにオリビア・ニュートン・ジョンの成功は語れません。

イギリスのシャドウズのメンバーとしてキャリアを築いたジョン・ファーラーは、70年以降、オリビアのプロデュースに人生を捧げたといっても良いほど。鍵は、その独特な曲造りにあります。転調が多いのに、なぜか親しみやすいメロディー。ギターを中心としたシンプルなアレンジなのに、なぜか聴いたことのないような雰囲気で、まさにマジック!。

オリビアは、「ジョンは、楽曲への深い愛情と完璧主義を兼ねそなえた最高のプロデューサー」というコメントを寄せており、二人の長年にわたる深い信頼関係がうかがえます。(ジョン・ファーラーは1980年、唯一のソロアルバムを出します。彼の魅力を凝縮した傑作で、これもぜひ聴いてみて下さい。)

オリビア・ニュートン・ジョンは、一時ガンとの闘病で一線を退きましたが、90年後半から徐々に復帰しており、アルバムもコンスタントに出しています。97年の、故郷シドニーでのコンサートを収録したDVD「ライヴ・ベスト」では、整形でなんとか美貌を保ちつつ(?)、往年の歌声を満喫させてくれました。オリビア・ニュートン・ジョンが還暦なんて、時は残酷すぎる気もしますが、忘れられないポップ・スターとして、これからも愛聴して行こうと思います。

さて、これからオリビアを聴いてみようかという方には、ベスト盤「Gold」がお勧めです。彼女のベスト盤はやたらたくさんあるのですが、迷わずこれ!2005年発売の2枚組で、代表曲はほぼ完璧にカバー。リマスターで音質が向上している上、お値段も手頃です(マニアは、このCDでしか手に入らない「Fool Country」も注目)。

これでオリビア・ニュートン・ジョンの魅力に目覚めたら、あとはたくさんのアルバムが待っています。

→ オリビア・ニュートン・ジョンのベスト盤「Gold」はこちらから

キング・クリムゾン: 40周年記念エディション また買わされた

2009 年 10 月 29 日 コメントはありません

redいったい、いくら買わされるんでしょうか・・・。ロバート・フリップの錬金術に。。。

キング・クリムゾンのデビュー40周年ということで、「クリムゾン・キングの宮殿」「リザード」「レッド」の3作品が出ます。

今回の特徴は:

・DVD オーディオによる高音質、5.1chマルチ・チャンネル仕様
・2009年リマスター(「レッド」のみ2004年)
・ボーナス・トラック
・一部、特典映像

といったことで、さすがのフリップ翁も、「オマケ」なしではもう錬金術は無理と判断したのでしょう。

話題は、ポーキュパイン・ツリースティーヴン・ウィルソンがマルチのミックスを担当したこと。彼が現代の「プログレ界」で、存在感を増しつつあるのが分かります(ポーキュパイン・ツリーの音楽自体は、どうもピンと来ませんが)。まあ、彼には伝説のクリムゾンに接近するというメリットがあり、フリップには「若い血」を導入するという思惑があって、コラボが成立したのでしょう。

さて、とにかく買わざるを得ないんで、まず先行販売の「レッド」を入手しました。一体何種類の「レッド」持ってるかな・・・。LPまで入れると、とんでもない枚数です。

で、うれしい驚きはボーナス映像。フランスのTV番組の映像で、海賊版では出回っていたようなんですが、私は初めて見ます。何といっても、この時期のクリムゾンのライブが見られるのは素晴らしく、特に、若きビル・ブラッフォードの元気な活躍ぶりに涙しました。変な特殊効果でシラケる部分もありますが、時代なんだからしょうがないでしょう。

一方、DVDオーディオの方はいまひとつで、マルチといっても、基本的に三人編成ですから、なんてことはありません。ボーナス・トラックも初出とはいえ、制作途中というだけで、これまた中途半端なだけです。

ということで、映像を除けばどうしてもという必然性はあまり感じられませんが、私のように買ってしまう人は買ってしまうんでしょうねえ。

「レッド」については「音楽の殿堂」もご覧下さい
「宮殿」への投票(「名盤の殿堂」)はこちらから

尚、この3作に加えて、「クリムゾン・キングの宮殿 デビュー40周年記念エディション完全限定盤 ボックス・セット」というのも出るらしいです。6枚組。全部「宮殿」。。。こうなると、もう「怪物」としか言いようがありません。さすがにお腹いっぱいなので、今回はパス・・・。

ご興味のある方はこちら

監禁被害者が素顔で・・・。

2009 年 10 月 24 日 コメントはありません

jaycee18年間の誘拐監禁の果てに救出された女性の話を書きましたが(→記事はこちら)、なんと当地の週刊誌に、本人が素顔で登場してしまいました。被害者のジョイシーさん。ご覧のとおり堂々と表紙に現れ、特集記事でインタヴューにも応えています。

新生活にも驚くべきスピードで適応しているらしく、本当の家族に囲まれた写真は、どれも笑顔にあふれています。

これには、少々驚きました。

まず、日本ならあり得ないでしょう。

11歳で誘拐されて以来、犯人の自宅裏の小屋に幽閉され、子供を二人も産まされるという、猟奇的とも言える事件です。世間の目を逃れ、ひっそり立ち直りというのが、やむを得ない道だったかも知れません。事件解決から、まだ日も浅いんです。

ここがアメリカ的な感じもします。「世間に対し何もこそこそすることなんかない。一日も早く回復して、新しい人生を取り戻すんだ」という強烈に前向きなスタンスが感じ取れます。

どうせマスコミに追いかけ回されるという家族の判断もあったかもしれません。一緒に救出された二人の子供(15歳と11歳)は一切登場させず、変名も考えているということから、彼女の覚悟も感じます。

彼女のこれからの人生には、世間の好奇の目を集めつつ、傷ついた心のリハビリを進め、何とか社会復帰を果たして行くという、大変なチャレンジが立ちはだかっています。インタビューでも、事件そのものには一切触れず、ひたすら家族に再会できたことの喜びと、新しい毎日への希望が述べられているのが、ある意味痛々しいとも言えます。

でも、ご覧のように美しく元気なお嬢さんです。なんとか幸せを取り戻して行ってくれるでしょう。本当の伴侶にめぐり逢う日も遠くないかもしれません。

ところで、何といっても感動したのは、二人の子供たちの学力が普通の学生とほとんど遜色なかったということ。一切学校に行っていないにも拘らずです。自らも11歳までしか学校に通えなかったジョイシーが、見よう見まねでしっかり子供を育て教育していたということ。なんと驚くべき母性!

さて、やたらこの事件に関心を持つ自分の俗物性は充分自覚しております。。でも、ほんとにものすごいストーリーだと思うんですけど。。。


「フェルマーの最終定理」ぜひ読んで下さい。

2009 年 10 月 13 日 コメントはありません

fermatおもしろ「理数系シリーズ」。今回は、サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」です(青木薫訳、新潮文庫)。

丸っきり「文科系」の筆者も、「数学の世界にこれほどのドラマがあるのか!」と、思わず手に汗にぎり大興奮して一気に読み進めてしまいました。とにかく面白い。

フェルマーの最終定理は、17世紀にフランスの数学者フェルマーが示したもので、なんと20世紀末まで誰も解けなかったという超難問のことです。なにしろ、世界中の名だたる数学者がこの問題の証明に挑んだのに、みなことごとく敗れ去って行きました。本書は、この超難問に対する挑戦の歴史と、一人の若き数学者にスポットを当てた、人生を掛けた格闘のドラマなんです。

2000年の出版で、知る人ぞ知るベストセラーだったようですが、私はある雑誌で、宇宙物理学者の池内了先生が勧めているので知りました。「人生がもっと楽しくなる傑作・名著(科学30冊)」の一冊ということで、先生曰く、「著者のサイモン・シンは、数学の専門家ではないのに、数学史の要点をわかりやすく押さえ、数学者たちの格闘を描いてしまう勉強ぶりは本当にすごい。一つ一つのシーンがドラマティックに描写され、本と対話しているような気持ちになってくる」とのこと。正に、そのとおりです。

数学に関して特に興味深いのは、ある証明を成し遂げると、その問題については正に「証明済み」ということで、以降一切挑戦にさらされることがない、ということです。この点、例えば物理学の発見などは、長い将来には全く観点の異なる新たな発見によって、その歴史的価値がひっくり返ってしまうようなことがあります。その点、ある数学の証明を成し遂げた者は、未来永劫その栄誉を手にするということで、だからこそ、その栄誉を求める数学者たちの努力は、尋常でないものになる。時には、政治的な判断も求められる、熾烈な競争の世界なんです。

数学というと尻込みしてしまいますが、この本は、可能な限り数式を排除し、むしろストーリーに焦点を当てていますので、ぜったい大丈夫です。とにかくお勧めいたします。

尚、サイモン・シンは、このほか「暗号解読」や「宇宙創造」といったベストセラーを矢継ぎ早に出していますので、これらもぜひ読んで行こうと思っています。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)はアマゾンで!

ジェネシス ライヴ・ボックス・セット(1973-2007) 届いた!

2009 年 10 月 10 日 コメント 2 件

genesis-liveジェネシスの発掘ボックス・セット・シリーズもいよいよ終盤ということで、今回はライヴ音源の集大成です。

下記4作品にボーナス・ディスクがついて、CD8枚、DVD3枚の全11枚セット。

Live(1973年)、Seconds Out(1977年)、Three Sides Live(1982年)、The Way We Walk(1992年)。

ジェネシス・ファンなら問答無用でマストなのですが、さて。

まず、長所は: 

・全作品ともリミックスとリマスターが施され、今まで音質面に問題あるとされた初期作品(特に73年の「Live」)を初め、すべてが高音質でよみがえった。
・5.1マルチ・チャネルのDVDオーディオは臨場感たっぷり。
・ボーナス・ディスクで、73年ピーター・ガブリエル在籍時のレインボウ・シアターでの音源が、ワンステージ分、全9曲出そろった(その内、初出は4曲。ほかは98年の「アーカイヴ」で既出)。アルバム「月影の騎士」発表後、絶頂期の演奏が堪能できる。特に「シネマショウ」には、ひたすら涙。。。
・豪華ブックレットもついて、多数のライヴ写真が楽しめる。インタヴューも載っている。

ちょっと不満な点は:

・73年の「Live」は、アメリカのラジオ番組「King Biscuit Flour Hour」向けに収録されたものだが、「サパーズ・レディ」だけ、今まで未公開。今回もなぜか収録されていない。解説書によると、「音源はあったが、レインボウ・シアターの方が良かったので、そっちにした」とある。何を考えとんじゃ!そっちは既出。重なってもいいから、完全版を聴かせてくれ!(ちなみに筆者は、高校生の時この「Live」で初めてジェネシスに出会いました。音質が悪いと言われてますが、むしろ、霞がかかったようなサウンドが何ともミステリアスで、恍惚としてました。今回、リミックスでクリアーになりすぎて、正直ちょっと違和感あります・・・。)
・レインボウの初出4曲の内、「ウォッチャー・オブ・ザ・スカイズ」と「ミュージカル・ボックス」の2曲だけCDに入っておらず、DVDオーディオのバージョンしかない。CD1枚に入り切らなかったからだと思うが、だったら2枚組にせよ。基本的に、正規音盤と言えば、まず「CD」でしょーが!
・75年の「眩惑のブロードウェイ」から5曲がボーナス・トラックとして入っているが、これは上記「アーカイブ」で既出。ありがたくも何ともない。こんな中途半端なの入れるんだったら、別のにして!(例えば72年BBCとか)。
ニック・デイヴィスのリミックスは、前から気になっていたが、多少独特な感じがあり、今ひとつ。特に、ドラムがクリアーになるのは結構だけど、ややバランスが大きすぎるのと、シンバル等金モノが耳につきすぎる傾向あり。これは、大御所フィル・コリンズに気を使ってるのか?
・ジェネシスのメンバーはトニー・バンクスマイク・ラザフォードを中心に、この発掘作業に関与しているらしいが、どうもリミックス等についてはニック・デイヴィスに丸投げしているようで、どうかなと思われる。

ということで、ディープでコアなファンには、ほんの少し「愛」が足りない感じがするのが残念です。まあ、80点ってところですかね。

これは、アーティストによって、「ボックス・セット」というものをどう考えるかに拠る部分が大きいと思います。「恩返し」と考えるか、「さらなる金儲け」と考えるか。ジェネシスほどビジネスとしても成功を収めたバンドの場合、どうしても売り上げのハードルが高くなり過ぎて、単なる「マニアへの恩返し」だけではなり立たないという事情があるのでしょう。そういう意味では、コアの旧ファンの要望にも応えながら、ギリギリのバランスを取ったということで、ある程度やむを得ないのかもしれません。

さて、発掘シリーズの最後はジェネシスの映像作品を集めた「Movie Box 1981−2007」というのが11月に出るらしいです。一瞬、ドキッとしましたが、年代で明らかなとおり、全てフィル・コリンズ時代の過去のDVDの焼き直しのようです。

そんなものに、一切関心ありません。

ピーター・ガブリエル脱退後のジェネシスは、本当のジェネシスとは呼べないと固く信じております!

いつの日か、「眩惑のブロードウェイ」のフル・ステージDVDが観られる日が来ることを夢に描きながら・・・。

ジェネシスについては「音楽の殿堂」もご覧下さい。

ハリウッド版「鉄腕アトム」これって・・・。

2009 年 10 月 6 日 コメント 2 件

こちらでは今月ロードショーです。予告編をどうぞ。
でも、これって・・・。
ちょっと、許されないですよねー。

タランティーノの新作「イングロリアス・バスターズ」見た!

2009 年 10 月 4 日 コメントはありません

BasterdPitt2Big日本では11月20公開予定のクエンティン・タランティーノの新作。見てきました。

これはぜったいおすすめです。

アメリカでは、既に興行収入100億円を突破しており、絶好調です。2009年度ランキングでも、公開6週間目にして18位につけており、タランティーノとしては、久々の大ヒットです。おなじみRotten Tomatoの評価でも88%と、圧倒的な完熟トマト。

第二次大戦ヒトラー占領下のフランスを舞台に、ブラッド・ピット演じるアメリカ人グループがなぜかパルチザン的に乱入。シリアスな戦争モノかと思いきや、どんどん「ヘンな」展開に突入して行きます。B級のような、マカロニっぽいような、タランティーノ節は随所に全開。2時間半と長いですが、存分に楽しませてくれます。

2007年の「グラインド・ハウス」では、相方のロバート・ロドリゲス監督にお株を奪われちゃって、もう駄目かと思いましたもんね、タランティーノ。ホントに「キル・ビルVol.2」以来、久方ぶりの「全力投球」の手応えです。(でも、イタリア系のタランティーノが、どうしてナチ/ユダヤものにここまで首を突っ込むのか、ちょっと見えない部分もあります・・・。まあ、1976年のイタリア映画「地獄のバスターズ」を、単にリメイクしたかったってことなんでしょうか・・・。)

ところで、なんといっても注目すべきはブラッド・ピット。とにかく、最近冴えまくってます。

2008年のコーエン兄弟の快作「バーン・アフター・リーディング」で、小気味良くぶっ飛ばすと、続けて、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」でアカデミー賞候補へ。売り上げも140億円突破。そして本作です。

最近、明らかに出演作の選択がうますぎます。チンピラ役しかできないと思ってたのに、その「育ちの悪そうな」個性は生かしつつ、どんどん芸域を広げてる。ダイコンだと思ってたのに、演技力もあるような気がしてくる。

いや〜、ひょっとしてホントの大スターになっちゃいますね・・・。

これって、やっぱり奥様のパワーなんでしょうか???


F1 日本グランプリ: もうどうでもいいです。

2009 年 10 月 4 日 コメントはありません

f1jp

祝セバスチャン・ベテル。F1もあと2戦を残すのみ。ジェンソン・バトンとのチャンピオン争いはどうなるでしょうか?

でも、もうどうでもいいです。。。

BMW/Sauberチームの身売りが決定しました。スイスの会社に。エンジンは、フェラーリを使うらしいです。ということは、実質Sauberだけが残るということでしょう。BMWの完全撤退です。

来年のF1には、まったく興味をもてなくなりました。

「モール・コップ」見てやって下さい。。。

2009 年 10 月 4 日 コメントはありません

mallcopモール・コップ」は、日本では公開されなかったんですけど、今回、DVDが発売されますので、ぜひ見てやって下さい。

郊外の大型ショッピング・モールの警備員ポール。メタボで糖尿病気味、彼女もおらず冴えません。そのポールが、モールに侵入するギャング団と戦うっていうコメディです。

そうです。ものすごく地味です。有名な俳優など誰も出ません。主演のケヴィン・ジェームスって知ってます?

ところがこれが驚異的な大ヒット!興行収入は150億円に迫る勢いで、2009年の上半期ランキングでは、堂々の全米3位。年間でも、いまのところ13位につけてます(「GIジョー」の次、「ターミネーター4」の上)。

なんで?

正直言って、筆者にも良く分からないところがありますが、大いに楽しめたのは事実です。「大笑い」というより「苦笑い」に近い微妙さ。どこか哀れを誘うポールの地味な毎日と小さな「ラブ・ストーリー」。それが途中から、突然「ダイ・ハード」もどきのアクションへ。でも、舞台は結局ショッピング・モールで、どこまでも「おまぬけ」な感じ・・・。

笑ったり、ちょっと涙ぐんだり、ハラハラしたり。絶妙なバランスで、とっても「人間味ある」映画と言いましょうか。素直にエンタテインメントした気落ちになれる不思議な映画です。

筆者としては、こういう映画をわざわざ作ってしまうアメリカ、そして、それが異様にヒットしてしまうアメリカってのに、ちょっと好感度が上がったりしているところです。

ぜひレンタルしてみて下さい(プレヴューは下記から)。

→ 買うことはないですけど、念のため(モール☆コップ コレクターズ・エディション [DVD])

(ところで、全米4位は「二日酔い(The Hangover)」って映画です。ラスベガスで酒飲んでたら騒ぎに巻き込まれた、っていうコメディで、250億円を突破してます。理解できません・・・。絶対、日本じゃやらないんだろうなー)。

「渋江抽斎」 近代日本文学の最高峰???

2009 年 10 月 1 日 コメント 2 件

ogai「古典名作シリーズ」。こんどは、森鴎外の「渋江抽斎」です。

一般には無名な江戸末期の医師「渋江抽斎」という実在の人物にスポットを当て、その生涯をつづるというもので、「伝記」ということになります。

鴎外晩年の傑作という評価が定着しており、例えば丸谷才一は、これを「近代日本文学の最高峰」と讃えています(「プレジデント 50 plus」2009.7.15号別冊)。



だったら、やっぱり読んでみないと。。。。


「う〜ん・・・。あの、これって、それほどのものなのでしょうか????」

「なんとたわけたことを言っておる!鴎外の不朽の名作を!この馬鹿モノ!!!」

「ははっ、お代官さま、お許し下され。。。。。」


どうも、森鴎外絶対不可侵という雰囲気が、日本の旧インテリ層にあって、めったな事を言っては罰が当たりそうです。

丸谷才一曰く、「よく知られていない人物を題材にして、探偵小説のようにすこしずつその人物のことを解き明かして行く。しかも、そのプロセスが鴎外一流の見事な文章で書かれている」。

確かにそうです。

尋常じゃないほどの緻密さで、詳細な事実が積み上げられて行く。抽斎本人の年代史のみならず、その伴侶、子供、親、親戚、恩師、弟子、知り合いの知り合いまで、何世代にも渡る人物の生年月日から、墓碑銘まで。鴎外は、縁ある場所を実際に訪れ、徹底的に調べ尽くします。恐るべき「考証力」と言えましょう。

「無名の人物にも、誰も知り得ない深い人生の断面が存在するし、年代を超えたつながりというものが脈打っている。」

それは、分かります。

ただ、ここにドラマがあると言えるのでしょうか?

ドストエフスキーを、「我を忘れ度の最高峰」といった人がいますが、小説の醍醐味はまさにそこにあるでしょう。「カラマーゾフの兄弟」にひとたび没入してしまうと、その物語世界のめくるめく展開に、濁流にのまれるように翻弄されて行く。登場人物が、実在としてありありと感じ取られ、それぞれの「人生」に、ともに泣き、喜び、怒り・・・。

まさに「我を忘れさせてくれる」のが文学であると。

その点から、この「渋江抽斎」が「近代日本文学の最高峰」であるとすると、正直、ちょっと寂しい気持ちがしてしまいます。

まず、主人公抽斎の人柄というものが、一切伝わりません。ひたすら読書と調べ物が好きな医者ということ。それだけに近いです。そういう意味では、奥さんの「五百」の方が、まだ人間味が感じられます。ご主人の身が危うくなったとき、風呂から飛び出し裸で短刀を忍ばせていく。なかなかのエピソードです。

しかし、主人公そのものがこれだけ存在感の薄い物語って、ありなんでしょうか?

丸谷才一も「鴎外の小説に出てくる人物に魅力がない」と認めています。え?それって致命的でないの??

さらに、「渋江抽斎の続編である「伊沢蘭軒」、「北条霞亭」と読み進めていくこと」を薦めていますが、正直、もう十分という気がいたします。

丸谷先生に質問してみたいです。「例えば、あくまで例えばですが、三島由紀夫の『豊饒の海』と比べても、『渋江抽斎』の方が上でしょうか?」と。

ちなみに、丸谷才一の推薦する「不朽の名作」とは(同上):
・森鴎外「渋江抽斎」「伊沢蘭軒」「北条霞亭」
・「プルタルコス英雄伝」
・ディドロ「ラモーの甥」
・ギボン「ローマ帝国衰亡史」
・デフォー「モル・フランダース」
等々。

誰も先生のような高尚な境地には達しておりません。普通の庶民が、読書の参考にしようという一般雑誌の記事なんですから、どうかもう少し、そういった目線でご推薦願えませんでしょうか?

でないと、みんな読書の入り口のところで立ち止まっちゃいます・・・。

渋江抽斎(岩波文庫)はこちらから