<久我の100曲> 『アナザー・デイ』ポール・マッカートニー

<久我の100曲>ということで、新シリーズをはじめます。

今まで聞いてきた数々の曲の中から、どうしても忘れがたいもの、後世に語り継ぎたいものを、まさに独断と偏見で選ばせていただきます(思いついたものから書いていきますので、特に順番に意味はありません。いつ100曲に到達しますことやら・・・)

ということで、まず初めは、やっぱりこの曲かなと。

ポール・マッカートニーの『アナザー・デイ』。

ビートルズ解散後、4人がそれぞれの道を歩みはじめる中で、1971年2月。ポールが、わりとひっそり、シングル版オンリーで放ったのが『アナザー・デイ』でした。

チャート的には、イギリスで2位、アメリカでは5位どまり。まあ、ヒットなんですけれど、あのビートルズの神通力を考えると、そこまでの破壊力は全然なかったんですね。

リアルタイムで最初に聞いた時も、まず「ふ〜ん」というのが第一印象でした。まあ、良いけど小ぢんまりしてるなみたいな?

しかしこれが、聞けば聞くほど、良かったんだわー:

さりげなくアコースティックに始まって、ポールが軽々と歌って行く。生ギターのほかはベースとドラムだけ。のんきなフォーク調で、本当に軽々と。

そして当然、リンダがハモってくる。

メリー・ホプキンへの一連のプロデュース活動のように、とにかく全体的にはトラッドというかフォークそのものなんでありますね。

ところがそれから、「So sad, so sad・・・」でマイナーへ転調。ここは、まさにポールお得意のメジャーからマイナーへの曲作りで、ビートルズから始まって一体何曲このスタイルなんでしょう。でも、分かっているんだけど、どうしてもハマってしまう。この「胸キュン」をどうにかして〜。

しかも、単なる転調に加え、四拍子から三拍子にチェンジ。これがとっても自然なんだなー。

Ah, Stay・・・」からは、大サビでさらに盛り上がる。ところどころを彩るスライドギター調のオブリガードが、本当にセンスあるなー、と思ってたら、突然、何のこだわりもなく、バスドラ1発でメジャーの四拍子にまた戻る。

このメジャーとマイナーを、ためらいなく行き来するのは、まさにポールの曲造りの特徴で、天才と言ってしまえばそれまで。個人的には、「正式な音楽教育を受けていないことの良い意味での頂点がポール・マッカートニー?」なんて思ったりもします。

さて、ポール・マッカートニーが生み出した、数えきれないほどの名曲の中で、「これがナンバーワンかよ?」とまじめに聞かれたら、そりゃたじろぎますよ。でも、おそらく、70年当時の自分の置かれた状況に、なんとも言えずシンクロするところもあったんでしょうねー。とにかく「切ない、切ない・・・」。この『アナザー・デイ』が、久我にとっての「心の一曲」なんであります(ちなみに、ポールの曲で2番目に好きなのは『ロング・アンド・ワインディング・ロード』・・・)。

そして、続いてリリースされたのが、ポールの第2弾ソロ・アルバム『ラム』。

っていうか、『アナザー・デイ』と『ラム』の製作時期は一緒で、スタッフも同一。なのに、さりげなく『アナザー・デイ』だけはアルバムに入れずに、先行シングル化しちゃうところなんかもポールのセンス?

前年のソロ第一弾『マッカートニー』が評判悪かったのに対し、満を辞した「ラム」も、初めはイマイチな世間の反応でしたけれど、徐々にその音楽性の高さが認められ、今ではすっかりポールの「名盤」としての地位を確立といったところでしょうか。

久我も当然に『ラム』が超大好きでありまして、アルバム・ランキングをやっても間違いなくトップに顔を出すところです。

シングルの『アンクル・アルバート/ハルセイ提督』も当然良いのですが、大名曲はこの二つでしょう。

まず、アルバムの終盤を飾る『ロング・ヘアード・レディLong Haried Lady)』。

ブラスも入って盛り上がるイントロに、リンダがやたらと「はすっぱ」に絡んでくる。リンダ・マッカートニーをここまで覚醒させたご主人、ポールの功績って本当に大きいな。複雑な構成で、ドラマティックに楽曲が組み上げられて行く。なんと言っても「Love Is Long」!ポールが本気になったら、本当にすごいな。

さらに、52秒の『ラム・オンリプライズ)』をはさんで登場するのが、アルバムの最後を飾るこの大作『バック・シートThe Back Seat of My Car)』:

実はイギリスでだけ、シングルカットされたのはあまり知られていませんが、39位どまり。でも、ブラスやストリングスがフィーチャーされ、盛り上がりまくるこの曲のなんと壮大で感動的なこと。「We believe that we can’t be wrong!」と絶叫するポールとリンダ。そう、「僕らが間違ってるなんてことは絶対ないんだ!

ジョージ・マーティンオーケストラ・アレンジで招き、まさに本気を出したポール・マッカトニーの輝くような才気!

ビートルズをぶっ壊した張本人のように言われ、低迷気味だったポールのソロ活動も、『ラム』あたりから見直されてきて、1973年の全米1位『マイ・ラブ』と『レッド・ローズ・スピードウェイ』まで来ると、本格的に王道に返り咲きました。

ということで、ビートルズの中では迷うことなく「ポール派」を自認する久我ですので、当然、点は甘くなってしまいますが、やっぱり、76歳の現在(本稿執筆時点)まで、現役を続けるポール・マッカートニーという驚異の天才の歩んできた道には、ひたすら、こうべを垂れるしかないような気がしております。

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➡️『アナザー・デイ』も入ったポールの『ラム』は、やっぱり2012年のこのリイシュー盤で持っていたいですね:

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