パット・メセニー

Pat_metheny_orch2パット・メセニーを聴くと、いつもアメリカのハイウエイが見えてきます。

どこまでもどこまでもまっすぐに、地平線まで続いていく・・・。

パットのギターの腕前は、もちろん超ド級。しかし、彼は決してただのプレイヤーにとどまることなく、その目線は常に全体の音楽創造にありました。志高く、ジャズの領域を拡大し続ける。そんな「開拓魂」にこそ、彼の魅力があるんだと思います。

パット・メセニーの個性は、活動初期からすでに確立していました。

1977年のセカンド・ソロ「ウォーターカラーズ/Water Colors」を経て1978年、自身のバンド『パット・メセニー・グループ』を結成し、発表したアルバムが「想い出のサン・ロレンツォ」です。

グループのメンバーは、パットに加えて、ライル・メイズ(キーボード)、マーク・イーガン(ベース)、ダン・ゴットリーブ(ドラム)。このシンプルなカルテット編成で、若々しく、軽快にひたすら疾走していきました。

それは、まさに「アメリカン」な爽快感!

一曲目のタイトル・ソングがすべての魅力を語ってくれます。限りなく透明に、清らかに、雄大に広がる音風景。極度に繊細なピアニッシッモから、一気に駆け上がる躍動感。パットのギターが、大空をこだましながら飛び立っていきます。

ぜひ、お聴きください:

パット・メセニーのギターは、あくまでクリーンに。ディレイとコーラスを何重にも重ねたスペイシーなサウンドは、一聴しただけで彼と分かるシグネチャー・サウンドとなりました。

パットをしっかり支えるのがライル・メイズ。

多様なキーボードを駆使して、楽曲に幾重にも織りなすな彩りを添えるのがライルの信条。そして、彼のアコースティック・ピアノのソロは、決してテクニックを披瀝するようなものではありませんが、限りなく叙情的に、時に哀感たっぷりに、心にしみじみと染み込んで、聴く者の目頭を熱くさせます・・・。パットの長年の相棒として、ライル・メイズの存在は決して軽視することはできません。

まさにここからパット・メセニーの開拓が開始されたという意味で、ジャズ/フュージョン史に残るアルバムとなったんです。

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その後、パット・メセニーのつくりあげる音楽は、アルバムを発表するたびにスケールを増し、複雑でドラマチックに拡大を遂げていきました。

空間表現はさらに広がりをみせ、変拍子と通常の拍子が渾然一体となる。パーカッションを多用したブラジリアンな多国籍リズム。アコースティックとエレクトリックの融合。管楽器からヴォーカルまで、それぞれのバンド・メンバーの守備範囲もどんどん拡大して行きました。

拡大版パット・メセニーがひとつの頂点を極めるのが1987年の「スティル・ライフ」と1989年の「レター・フロム・ホーム」。どちらのアルバムもブラジリアンなフレイバーに満ちた完璧なアンサンブルで甲乙つけがたく、どちらもゴールド・アルバム認定でグラミー賞受賞。

とにかく聴いていただきましょう。「レター・フロム・ホーム」より、「ハヴ・ユー・ハード」:

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ソロやコラボレーションでも多数のアルバムを出して来たパット・メセニー。ジャズ・ミュージシャンなのに、ポップ・チャートにも何度も顔を出し、グラミー賞も常連。

ただ、実をいうと言うと、最近ややマンネリ気味なのが気になっています。

永年の相棒ライルメイズとは距離を置いて、パット・メセニー・グループも永らく封印。パットは何かを探し求めるかのように、様々なコラボレーションや新バンドでの取り組みを続けています。

あくまでも愚直に道を極めようとする。そんなパット・メセニーの「開拓者魂」に敬意を表すものの、わたくしとしてはやっぱり、ライル・メイズとのコラボレーションが生み出すあの化学反応を心から懐かしく思うものであります・・・。

 

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