ハービー・ハンコック

HerbieHancock「好きなアルバムは?」と聞かれたパット・メセニーが答えました:「ハービー・ハンコックのプレイしているものなら全部」と。

すべてのプロ・ミュージシャンから尊敬を集めるハービー・ハンコック。

そんなハービーも、今年(2014年)74歳になりました。

その長いキャリアと音楽スタイルの変遷を、彼の代表曲「カメレオン」になぞらえる向きもあります。

そう、まさにカメレオンのように刻々と変貌を遂げ、自己革新を遂げていった彼の生き方そのものと言えるかもしれません。

マイルス・デイヴィスの忠実な僕(しもべ)として、永きにわたり正統派ジャズのキャリアを積み上げていったハービー・ハンコック。

ソロ・デビュー以降の試行錯誤の期間を経て1973年、突然発表したのが「ヘッド・ハンターズ」でした。

それまでのハンコックの音楽から大きく逸脱したファンクでポップな新境地に、世界中のジャズ界が仰天。

ジャズ・チャートのみならず、ビルボード・ポップ・アルバム・チャートでも13位。プラチナ・アルバム(売り上げ100万枚突破)達成と、コマーシャルな面でもジャズの常識を破る特大の成功を収めたんです。

それでは、何はともかく「ヘッド・ハンターズ」から「カメレオン」を聞いていただきましょう。

コミカルな導入部から、複雑な展開を魅せるインプロヴィゼーションへ。名手ハーヴィー・メイソンのドラムとポール・ジャクソンのベースが繰り出す「これぞファンク!」というグルーブに乗って、ハンコックが次から次に繰り出す技の数々!:

そんな「ファンクの王道」を歩んで行ったハンコックが、はたまた突然1976年、マイルス時代の同僚達と「V.S.O.P.」を結成し正統派ジャズの世界にカムバック。その端正で知性派そのもののたたずまいに、日本でも多数のファンをふたたび獲得します。

それでは、V.S.O.P.クインテットを生み出す発端となった1976年の同名アルバムから、ハンコックの代表作「処女航海」を。トニー・ウィリアムス、ロン・カーター、ウェイン・ショーターにマイルスの代わりをつとめるフレディ・ハバードが加わり、豪華そのもののメンバーとなりました:

さらに、1978年の「サンライト」では、全面的にヴォコーダーをフィーチャーし、リード・ボーカルにも挑戦。めちゃめちゃポップな作品に舞い戻ったり、1983年の「フューチャー・ショック」ではラップを大胆に導入。再びプラチナ・アルバムを誕生させました。

「サンライト」より、「I Thought It Was You」をお聴きください:

長いキャリアでスタイルを変えるミュージシャンは珍しくありませんが、ハービー・ハンコックのように、世間の予想を大きく裏切って「あっ」と言わせる革新的アプローチを繰り返し、いずれも非の打ち所のない高いレベルの作品を発表し続け、おまけに超特大のヒットまでかっさらってしまうという例は極めてまれです。

まさにカメレオン!

ということで、ハービー・ハンコックのベスト作品を「ひとつだけ選ぶ」なんてとてもできません。パット・メセニーも言っているように、ハービー・ハンコックのプレイしているものなら全部素晴しいんですもの。

そう、ハンコックのベスト作品は、あえて言えば「全部」です!!!!!!

今まで彼が作ったアルバムすべて!

ところが2013年、そんなハービー・ハンコックの「全部」をまさに全部手中にすることができる画期的なボックス・セットが出ました。

CD35枚組み『コンプリート・コロンビア・コレクション』!

文字どおり、ハービー・ハンコックのコロンビア・レコード時代の全アルバムを収めています。加えて、日本でしか制作されなかったアルバムやピアノ・ソロなども収録されたまさに「完全版」。もちろん「ヘッドハンターズ」や「VSOP」など、彼の全盛期の作品は殆ど網羅されています。しかも、すべて最新リマスター、豪華ブックレットつき。これが15,000円ぐらいで手に入るんだから、有難いというかとんでもない世の中になったもんです・・・。

さあ皆さん、ハービー・ハンコックを聞くにはどれがイイか?なんて野暮な質問はあきらめて、全部聞きましょう。そう、全部です。

ただひたすら、そのキーボードに身をまかせれば、すべて至福なんです!

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【ハービー・ハンコック:コンプリート・コロンビア・コレクション 収録アルバム内訳】
1. Sextant (1973)
2. Head Hunters (1973)
3. Dedication (1974)*
4. Thrust (1974)
5. Death Wish /OST (1974)
6. Flood (1975)*
7. Man-Child (1975)
8. Secrets (1976)
9. V.S.O.P. (1976 – 2CDs )
10. Herbie Hancock Trio (1977)*
11. V.S.O.P.: The Quintet (1977)
12. V.S.O.P.: Tempest In The Colosseum (1977)**
13. An Evening With Herbie Hancock & Chick Corea (1978 – 2 CDs)
14. Sunlight (1978)
15. Feets Don’t Fail Me Now (1978)
16. Direct Step (1978)*
17. The Piano (1978)
18. V.S.O.P.: Live Under The Sky (1979 – 2 CDs)
19. V.S.O.P.: Five Stars (1979)*
20. Butterfly w/ Kimiko Kasai (1979)*
21. Monster (1980)
22. Mr. Hands (1980)
23. Magic Windows (1981)
24. Herbie Hancock Trio w/ Ron Carter + Tony Williams (1981)*
25. Herbie Hancock Quartet (1981)
26. Lite Me Up (1982)
27. Future Shock (1983)
28. Sound-System (1984)
29. Village Life (1984)
30. Round Midnight / OST (1985)
31. Perfect Machine (1988)
*は、これまで日本のみ(もしくは日本のみの選曲で)発売されていたもの
**は、日本のみの選曲で発売されいたもの

 

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