ラッシュの後期アルバムをそろえるならコレ!

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カナダのプログレッシブ・ロック系トリオトして孤高の存在であり続けるラッシュ。彼らのアトランティック・レーベルでのアルバムを揃えるのに最適なボックス・セットが発売されました。

1989年の「プレスト」から2007年の「スネイクス&アロウズ」まで、後期ラッシュのアルバム7枚が一箱に収められています。

特筆すべきなのは、2012年の「Vapor Trails」だけは今回新たに「リミックス」が施されたバージョンが入っていることです。

「Vapor Trails」はラッシュが常々「ミックスが大失敗だった」と語っていたもので、今回、デイヴィッド・ボットリルのエンジニアリングのもと、全く新しいサウンドに生まれ変わりました。違いは明らかで、これまで何かダンゴ状態になって聴こえていたのと、ゲディのヴォーカル処理がひどく乱暴というか、少々歪んで聴こえるようなところもあったのを、このリミックスでは全面的に修正され、クリアーで広大な音像と豊かな低音部、そして、より生き生きしたゲディのヴォーカルが楽しめるようになりました。

ということで、「Vapor Trails」だけでもなかなか魅力的なこのボックスですけれど、加えて、ほかの6枚も今回最新リマスターが施されていうことで、さらに得点が高いでしょう。アトランティック期のラッシュの旧作は、これまでなかなかまともなリマスターが出ておらず、あきらめかけていたところですが、ようやくといった感じ。肝心のリマスター音質は、現在の主流である「あくまでオリジナル・マスターに忠実に、過度な装飾を避ける」という考え方が踏襲されており、好感が持てます。音圧が上がるだけで喜ぶリスナーもいますけれど、そのため過剰なコンプレッサー処理やイコライザー調整などをされたら台無しです。本編は、確実に音質のクリアーさ、音場のひろがり、ボトムの拡張などを達成しつつ、ほど良いバランスで調整されていると思います。今後、決定版として愛聴します。

さて、と言うことでこのボックス・セットは、最近多発されている「CDまとめて2000円」といった「旧作の叩き売りセット販売」とはちょっと異なり、それなりの付加価値が付けられた良心的なものだと思います。さすがRhinoの監修と言ったところでしょうか。欲を言えば、同梱のブックレットには歌詞しか記載されておらず、オリジナル・アルバムのデータや、ましてラッシュの写真といったものは一切ありません。ジャケットも一応紙ジャケですが、日本の「工芸細工」的な紙ジャケと異なり、無骨なCD入れに過ぎないのは致し方ないでしょうか・・・。ただ、これだけの内容とヴォリュームで3000円ちょっとというお値段に収めるには、ある程度やむを得なかいのかもしれません。尚「「Vapor Trails」のリミックス版は単品でも発売されていますが、どうせ買うんなら、このボックス・セットの方がぜったいお得だと思います。

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尚、ラッシュのマーキュリー時代の旧作は、「セクター・シリーズ」ということで3つのボックスに分納される形で2011年に販売されています。こちらは、3つ揃うと箱のデザインが完成したり、豪華カラー写真等が満載されたブックレット付きだったりで、ラッシュへの「愛情」という点でははるかに上だと思います。いずれにしても、このセクター3箱と今回のアトランティックの箱で、ラッシュのリマスターが全て揃うことになります。

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