ドゥービー・ブラザーズ 紙ジャケ・リマスターに異議あり!

182613_1_fドゥービーのほぼ全作品が、紙ジャケ・リマスターSHM-CDで出そろいました。

注目は、1980年発表の「ワン・ステップ・クローサー」。なぜかこれだけ、1991年のCD化以来リマスターされずに来ており、今回「世界初」となります。

で、早速購入しました。

しかし、これが大いに???なのであります。

日本だけで発売されるリマスターに少々疑問を感じていた筆者は、不安感を覚えつつも、「何とかまともであってくれ」と祈るような気持ちでした。

でも、やっぱり今ひとつです・・・。

問題は、不自然な高音部の持ち上げにあります。

ビートルズのリマスターに想うこと」でも書きましたが、「よけいな色づけはやめてくれ」ということです。
しつこいのを承知でもう一度、リマスターとは何たるかを書きます。

それは、「オリジナルを忠実に再現することを重視し、不要な加工を極力排除する」ということにつきます。

リマスターの作業は大きく3つに分解されます:
1. ノイズ除去装置による古い録音時の不要なノイズ等の排除
2. リミッターやコンプレッサーによる音圧の調整
3. イコライザーによる(高音から低音までの)音質の調整

専門のエンジニアがコンピューターを用いて行うのですが、大前提は「原音を大きく損なうことなく、最低限必要な調整を、細心の注意で行う」ということだと思います。

そういう意味では、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」の修復作業のように、綿密な時代考証を行い、原画の上に積み重なったよごれを注意深く除いたり、欠け落ちた絵の具を、可能な限り当時に近い素材で、慎重な色合わせの上補ったりといったことです。作業には大きな困難がともないますので、何年にも及ぶことも珍しくありません。
「ワン・ステップ・クローサー」は、かつての日本のリマスターに比べれば、露骨さが減っていると感じられますが、それでも、ハイ(高音成分)がイコライザーで必要以上に引き上げられていると思います。ドラムのシンバルやパーカッションなど、特に「金モノ系」に顕著です。一聴すると、日本人の好む「切れがイイ」サウンドのような気がするのですが、だんだん不快になってきます。不自然な色づけがなされてしまったことを感じます。大変残念です。

同封のライナー・ノーツには、小さくこう書いてあります:

2009 Digitally Remastered by Isao Kikuchi

このヒトは、一体どこの誰でしょう?

恐らくワーナー・ミュージック・ジャパンの社員か、フリーランスのスタジオ・エンジアでしょう。

今回のビートルズのリマスター作業には、アビイロード・スタジオの専属エンジニアが何年にもわたって、まさに名画の修復作業のように取り組みました。その結果、極めて格調の高い、21世紀の標準CDとも呼べるリマスター盤が生まれたんです。

ビートルズのリマスターに、日本のよく知られていないエンジニアが携わるってあり得ると思いますか?

なんで、ドゥービー・ブラザーズだとそういうことがあるんでしょうか?

そもそも:

1. このリマスターについて、アーティスト側(この場合ドゥービー・ブラザーズ)は、最終作品を聴いているのか?
→ 恐らく、日本市場に限ってのリマスター販売をライセンス供与しているのであって、リマスターの出来自体については日本の会社(この場合ワーナー・ジャパン)に任せて(丸投げして)しまっているのではないか。

2. このリマスターの元になるマスター・テープは何を使っているのか?
→本来、1980年当時のオリジナル2トラック・アナログ・テープから「デジタル・リマスター」を起こすのが妥当な手順だが、恐らく、既に日本に渡されている「デジタル・マスター」にリマスター作業を施してるだけではないか?特に、日本のリマスターはこういうケースが多いのではないか?
「そんなに日本のが嫌なら買わなきゃイイだろ」とみなさんはおっしゃるでしょう。そのとおりです。今後、よほどのことがない限り、日本市場だけを対象にした「紙ジャケ・リマスター」には手を出さないことにします。日本でしかリマスター盤が出ないという場合も、やむを得ません・・・。

それでも「聴いてみようか」という方は、こちらからどうぞ(ワン・ステップ・クローサー)
ご意見がありましたら、ぜひお寄せ下さい。

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