Bill Bruford Master Strokes2久我の最も敬愛するアーティストはビル・ブラッフォードであります。

あまりにも好きすぎて、冷静さを欠くほどです・・・。

(正確には「ブルーフォード」と発音するらしいですが、いまさら言われても・・・。ということで、この件につきましてはまたあらためて・・・。)

 

なにしろビル・ブラッフォードは最高です。いや、最高を越えています。

ドラマーとしての技量のみならず、彼のプロとしての生き方がとにかくすばらしい。

妥協に甘んじることなく、ワザをみがき続け、自らの音楽を追及する。その生真面目な求道的姿勢こそが、ビル・ブラッフォードの真骨頂だと思います。

 

ビル・ブラッフォードのプレイの特徴をひとことで言えば、「タイトでシャープ」ということにつきます。

最大の特徴はそのスネア・サウンド。

スコーン!

高音でクリスピーに抜けるその音色は、どんな曲でも、彼が叩いていると一発で分かるまさに「シグネチャー・サウンド」。パワー不足を補おうと、スネアのリム・ショットを常に加えているうちにあのサウンドにたどり着いたとか。

初めてビル・ブラッフォードのプレイに触れたのは、イエスの『こわれもの』でした。トップを飾る『ラウンドアバウト』。そのあまりのかっこよさに心からシビレ、一発で激烈なファンになってしまいました。

どんな複雑な変拍子も、スピーディかつ正確に折り目正しくこなす一方、時おり、ぶっきらぼうな、どこかわがまま小僧のようなランダムなショットが顔を出すのも、ビル・ブラッフォードの魅力のひとつ。リック・ウエイクマンのオルガン・ソロとからむ中間部もひたすらカッコいいです。

それでは皆さま、どうかあらためてお聴きください:

プログレシブ・ロック界の「必殺仕事人」とも言われるビル・ブラッフォードの経歴は本当にすごいです。

イエス、キング・クリムゾン、ジェネシス(サポート)、ナショナル・ヘルス、UKなどなど。まさに、トップ・グループを渡り歩いて行きました。

どのバンドも、プログレシブ・ロックを「あるべき姿で」成り立たせるためには、ビル・ブラッフォードのドラミングこそ不可欠と考えたからにほかなりません。

2002年、若手ヘビメタ・プログレの「Gordian Knot」にもかつぎ出され、アルバム「Emergent」にゲスト出演した際、リーダーのショーン・マローンいわく、「最も尊敬されるドラマーの一人であるビル・ブラッフォードによる離れ業に、自分のベース・ラインを紡いでみたかった。イエスやキング・クリムゾンを聴いて育ったから、一緒に演奏できたことは言葉にならないほどの感動だった」と振り返っています。

世代を超越した、ただならぬ尊敬のされ方と言えましょう。

 

既に引退を表明してしまったビル・ブラッフォード。現在は一切のパフォーマンス活動から手を引き、レクチャー等でゆったりとした「リタイアメント生活」を謳歌しています。

ここにも、生真面目な性格が現れています。どこかの誰かとは大違いな潔い身の処し方・・・。

熱烈なファンとしては非常に残念ですし、まだいくらでもプレイできるとは思うのですが、彼のその気持ちを尊重して、ただこう申し上げたいです:

「ありがとう、ビル!」と・・・。

 

さて、そんなビル・ブラッフォードの魅力の一端を味わっていただくために、推薦盤をご紹介しましょう:

『フィールズ・グッド・トゥー・ミー/ビル・ブラッフォード』
1977年のソロ第一弾アルバム。あのアラン・ホールズワースを初め強力なメンバーのサポートを得、ドラマチックかつ躍動感あふれる独特な世界が展開します。一枚選べといわれればこれ。

タイトル曲の『フィールズ・グッド・トゥー・ミー』を是非聞いて下さい。若きビル・ブラッフォードが青年の志に燃え、高らかに胸を張って歩み始める。何度聞いても目頭が・・・。

『ワン・オブ・ア・カインド/ブラッフォード』
1979年、ついに自身の名を冠したバンド『ブラッフォード』を結成。盟友デイブ・スチュワートとジェフ・バーリンが脇を固め、アラン・ホールズワースも弾きまくります。ビル・ブラッフォードの作曲力もさらに開花しました。曲はおなじみ『ヘルズ・ベルズ』

同メンバーによる貴重なライブ映像がこちら。あまりにも有り難くて、全員後光が射しています・・・:

『憂国の騎士 / U.K.』
ビル・ブラッフォード、アラン・ホールズワース、エディ・ジョブソン、ジョン・ウェットンというプログレ界の重鎮たちによるスーパー・グループの1978年のデビュー盤。大英帝国の威信をかけてプログレの再興を図る同アルバムの冒頭を飾る『In The Dead Of The Night』。これぞ「プログレ」と呼ばずしてなんと呼ぶ!:

『セコンズ・アウト/ジェネシス』
プログレ界の渡世人ビル・ブラッフォードはジェネシスにも招かれ、サポート・メンバーとしてライブに同行しました。その時の模様を記録したアルバムが『セコンズ・アウト』。中でも『シネマ・ショウ』におけるフィル・コリンズとのツイン・ドラムはまさに白眉。特に、後半のバトルは両者一歩も引かず、何度聴いても興奮します(それにしても、このビデオは無駄な映像が多いなー):

『フラッグス/パトリック・モラツ & ビル・ブラッフォード』
多くのアーティストとのコラボレーションも深めて行ったビル・ブラッフォード。中でも、元イエスのキーボード・プレイヤー、パトリック・モラツとの一連のデュオ作品は実り多いものでした。モラツの華麗なるプレイにビルのシャープなドラミングがからみ、緊張感のある美しい世界を構築しています。特にこの曲『Everything You’ve Heard Is True』は素晴らしい!:

『サウンド・オブ・サプライズ/アースワークス』
キャリア後半では一転してアコースティック・ジャズを志向して行ったビル・ブラッフォード。ただ、そこは彼のこと、単なる伝統的なフォービート・ジャズなんかではありません。微妙にひねりがあり、奥が深く、聞けば聞くほどはまります。自身のバンド『アースワークス』でリリースされた多数のジャズ・アルバムより、2001年の『サウンド・オブ・サプライズ』。曲は『Revel Without A Pause』(ジェーブズ・ディーンの名画『理由なき反抗(Rebel Without a Cause)』のもじりが素敵!):

 

 

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[補論:ビル・ブラッフォードとアラン・ホワイト]

プログレシブ・ロックのドラマーはこうでなければならない、というのは、両者の違いを見れば分かります。

イエスの「危機」は基本的に三拍子の曲ですが(ワルツなんです)、これを、ビル・ブラッフォードの場合は、ふつう三拍目にスネアのビートを持ってくるところを、時として(無意識に?)、一拍目 (小節のあたま)や二泊目に持ってくることによって、一瞬変拍子のような複雑なビート感をたたき出すことに成功しており、楽曲全体に引き締まった緊張感、文字どおり「危機」をかもし出すことに成功しているのです。

これをアラン・ホワイトがやると、あくまで三拍子の三拍目をただ乱暴に叩いてしまうので、緊張感というものが全く出ず、単純に前に進んでいくだけなんです。たとえば「イエス・ソングス」での「危機」のライブを聴くと、悲しくなります。

これはホワイトの場合、普通のロック系セッション・ドラマー出身で「網目のあらい普通のロック」しかやったことがなかったので、しかたがないと言えます。上手・下手ということでなく、向き不向きの問題です。その素養は、何年たっても変わりません。

「こわれもの」の「ラウンド・アバウト」でも同様です。

ビル・ブラッフォードは、はっきり言ってどう叩いているのか良く分からないんですけれど、とにかく、ものすごい躍動感を生み出しています。鍵は、スネア・ドラムのロールとキックのタイミングにあると思われます。彼のシグネチャー・サウンドとも言える「スネア・サウンド」は、「スコーン、スコーン」とハイ・ピッチで突き抜け、何度聴いても快感!。これを、予測不能なランダムのタイミングで繰り出すんだからたまりません・・・。

一方、アラン・ホワイトの叩く「ラウンド・アバウト」は、ただの8ビート・ロックになってしまいます。ただ力強いだけで、ぜんぜん違うんです。

この根本的違いを無視して、ビル・ブラッフォードの脱退時にアラン・ホワイトを連れて来たジョン・アンダーソンをわたしは恨みます(但し、「錯乱の扉」「オーナー・オブ・ザ・ロンリーハート」の2曲だけは、アラン・ホワイトの健闘を認めてあげてもイイかな・・・)。

プログレシブ・ロックのドラマーに必要なのは、まず、ジャズの素養、アフター・ビートのみでないスイング感覚、繊細なタイム感、音楽を流れる帯でなく、瞬間瞬間のスクエアで捉えられる感じ、そして、時として一本釘をさせるロック魂。こういったものが交じり合わないと無理でしょう。

私の見るところ、そのような要素を満たすプログレ・ドラマーは、ビル・ブラッフォードのほかでは、フィル・コリンズぐらいでしょうか。マイケル・ジャイルスやイアン・ウォーレス、アンディ・マカロックあたりも、十分ではないけれど水準に達しているとは思います。元ドリームシアターのマイク・ポートノイまで行っちゃうと、「心がない」というか、機械としか思えないですけど・・・。論外なのは、ピンク・フロイドのニック・メイソン(プログレ界のチャーリー・ワッツ)、ELPのカール・パーマー(もたったり、走ったり安心できない)。

ビル・ブラッフォードが、プログレ界の渡世人よろしく、そこら中から声が掛かったのも当然でしょう。彼のたたき出すビートこそが、プログレなんですから。今は引退してしまったビル・ブラッフォード。今後は、彼のレコーディングを楽しむしかないんですね・・・。

 

<2012年の来日時の想い出。家宝です・・・。>
bill Bruford Signature2

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