once-around-the-world-527b8762b4c1d1982年、イギリスの4人の若きミュージシャンによってイット・バイツ(It Bites)は結成されました。

1970年代に開花したプログレシブ・ロック(プログレ)のムーブメントがおおむね死に絶え、イエスのフォロワーやジェネシスのフォロワーなど、たくさんの「まがいもの達」が現れては消えて行きました。

そんな中に登場したIt Bitesは、プログレを再び真正面からとらえ直し、ポップで力強いロック感覚も加味した「ホンモノの新世代のプログレ」を提示してくれたんです。

中心となったのはフランシス・ダナリー。

ギターとリード・ヴォーカルを担当し、曲作りにもリーダーシップを発揮した多芸多才なフランシス。彼の存在抜きには、It Bitesは成立し得なかったでしょう。

そして、フランシス・ダナリーを支えたのはジョン・ベック。伝統的なプログレのキーボードのテイストも充分ふまえながら、デジタル時代の感性も取り入れて行ったテクニシャンです。

この二人にベースとドラムを加えたオリジナル・メンバーがヴァージン・レコードに残したのが、3枚のスタジオ・アルバムです。

この内、最高傑作と称されるのが、1988年の『ワンス・アラウンド・ザ・ワールド』。15分に及ぶ表題曲をはじめ、全9曲に彼らのエネルギーの全てが詰め込まれた真のマスター・ピースと言えましょう。

それでは同アルバムより一曲、『オールドマン・アンド・エンジェル』をお聞きください。変拍子をものともせず、複雑なコーラスやキー・チェンジをこなしながら前進する、まさに「新世代のプログレ」がここにあったんだと思います:

もう一曲、ポップでストレートなロック感覚にあふれる『ブラック・ディセンバー』をどうぞ:

1990年の来日時のライブでお届けするのが、彼らの代表曲『キス・ライク・ジューダス』。フランシス・ダナリーは、まさに獅子奮迅のはたらきで、完全にセンターをつとめます:

さて、そんなIt Bitesですが、1990年、フランシス・ダナリーが突然脱退してしまいます。

中心メンバーを失ったバンドは空中分解。解散でジ・エンドとなりました。

残念・・・。

フランシスはその後ソロ活動に入りますが、一転して生ギターを中心とした弾き語りのようなスタイルに変貌して行きます。

一方2006年、残されたメンバーにギターとヴォーカルのジョン・ミッチェルを加え、It Bitesは再結成されました。現在まで複数のアルバムを出し、それなりに頑張って活動してきたとも言えますが、フランシス・ダナリーのいないIt Bitesにかつての輝きを求めるのは酷というものでしょう。

今般ヴァージンレコードより、It Bitesのデビュー以降の3作のスタジオ・アルバムに加え、1991年にリリースされたライブ・アルバム『サンキュー・アンド・グッドナイト』の入ったボックス・セット『ホール・ニュー・ワールド/Whole New World The Virgin Albums 1986-1991』が発売されました。

すべてアビーロード・スタジオによるリマスターが施され、リミックス・バージョンやライブ・バージョンなどのボーナス・トラックも充実した、It Bitesのキャリアの集大成。これからIt Bitesを聞いてみようかという方には、ぜひおすすめです。

さて長いこと、いまいちパッとしない浪人生活(?)を続けていたフランシス・ダナリーですが、ここへ来てなんとなく活動を活発化させているようです。エレクトリック・ギターを抱えたプログレ系のパフォーマンスや、かつてのIt Bitesのナンバーをこだわりなく披露したり、近いうちに何かやってくれそうな予感で、とても楽しみなんですけど・・・。

フランシスのヴォーカルはモロにピーター・ガブリエルを彷彿させるものがあり、実際、ピーターがジェネシスを脱退したあとに後任のヴォーカリスト(とギター)の候補としてオーディションを受けたという説があります。個人的には、なんでそれが実現しなかったのかと悔しくてなりません。フィル・コリンズはともかくレイ・ウィルソンなんかにやらせるんだったら、フランシス・ダナリーの方が絶対良かったのに・・・。ギターだってパーフェクトなんだし・・・。

フランシスは以前、インタビューに応えて、ジェネシスのあの問題作『眩惑のブロードウェイ』を全曲再現するというトリビュート・プロジェクトに、リード・ヴォーカルとギターで参加中と言っていたのに、どうもリリースされる気配がありません。どうなったのかな〜・・・。

頑張れフランシス・ダナリー!

 

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