アルゼンチンの伝統的な音楽「タンゴ」を、単なるダンス音楽から別次元の芸術にまで高めて行ったのがアストル・ピアソラです。

ピアソラは、1921年アルゼンチンに生まれ、1992年に亡くなりました。

演奏するのは「バンドネオン」。アコーディオンに形が似ているため、「アコーディオンの一種」という説明も見受けられますが、鍵盤は、ピアノのような形ではなく、ボタン型で、これが蛇腹を挟んで両側についているもの。主にタンゴで用いられる楽器です(Wikipediaより)。

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アルゼンチン・タンゴをベースに、ジャズやクラッシックなどを大胆に融合させ、ピアソラは精力的にオリジナル作品を生み続けて行きました。タンゴの境界線を拡大し、埋もれかけていたタンゴを大胆に変革して行ったんです。

その作風はとてつもなく洗練されており、高度な和声やリズムをともなう独自の世界が構築されています。

日本でも1997年、サントリーのコマーシャルで、ヨーヨー・マの演奏するピアソラの「リベルタンゴ」が話題になりましたね。

ぜひ、この機会にもう一度お聞きください:

60年代から90年代に至るまで、精力的に作品を発表して行ったアストル・ピアソラ。その代表作を選ぶのは至難なのですが、1986年に発表された『タンゴ:ゼロ・アワー』こそ、その芸術性が極まったピアソラの最高傑作と言われることが多いです。

同アルバムは「ピアソラ五重奏団」によるスタジオ録音で、本人いわく「これは紛れもなく、私がこれまでの生涯で作り得た最高のレコードだ。我々はこのレコードに魂を捧げた」というシロモノなんです。

それでは、冒頭を飾る『タンゲディア3』をお聞きください:

タンゴ独特の哀愁たっぷりなフレーズから、突然、不協和音の連続による攻撃的なアンサンブルに突入。単純さといったこととは無縁の挑戦的な展開。

南アメリカの果てに、とてつもない洗練さの極致が現れました!

これは、まさにピアソラの頭上に光臨した「天才」のなせる業であり、ほかの誰にも似ていない、屹立した個性と言って良いでしょう。

では、同アルバムからもう一曲、『ミケランジェロ 70』をどうぞ:

ピアソラ五重奏団の編成は、ピアソラ本人のバンド・ネオンに加えてヴァイオリン、ピアノ、ギター、ベースというもの。一糸乱れぬアンサンブルで、緊張感あるパフォーマンスを披露してくれます。

それにしてもこのアルバム、ピアソラが「思う存分やりたいことをやり切った」と言うだけあって、なかなかへヴィーな作品ですね。寝る前にちょっと軽く楽しむというわけにはいかなそうです。

ピアソラと戯れるのには、ちょっと覚悟がいるんです・・・。

本国アルゼンチンでも、「ピアソラは難しすぎる」ということで、キャリアの初期にはぜんぜん受け入れられなかったそうです。

それでも自分の音楽を信じるピアソラは、アメリカに旅立ち、地道に演奏活動を続けながら自らの音楽を磨き上げ、60年代には、本国でもようやく確固たる人気を確立して行きました。

アストル・ピアソラは既にこの世を去ってしまいましたが、その孤高とも言える芸術を、これからも噛み締めて行きましょう。

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